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エスパニョール、12年ぶり欧州へ。予備予選は「罰ゲーム」じゃない!

2019.05.21

エスパニョール、12年ぶりに欧州カップ戦へ

 試合終了のホイッスルと同時にファンが次々と侵入。芝生の上の選手たちはファンの波にあっという間に呑み込まれた。

 昨今の警備が厳戒なスタジアムでこれほどの大量侵入は見たことがない。警備員たちは警備を諦めてさっさと退場。選手たちは逃げもせず、ファンと抱き合って勝利を祝った。エスパニョールの、あの2006-07シーズンのUEFAカップ決勝進出以来、12年ぶりのヨーロッパ参戦が決定した瞬間だった。

 エスパニョールがレアル・ソシエダに2-0で勝ったのと同じ頃、セビージャでは6位の座を確保して選手もファンも胸を撫でおろしていた。彼らにとってはシーズン61試合目、長い、長いシーズンが幕を下ろした。

 思えば不思議な縁である。12年前、UEFAカップ決勝でエスパニョールを破った同じセビージャが、今季の最終節ではアスレティック・ビルバオを破ってエスパニョールに7位の座をプレゼントした。もしこの試合に敗れセビージャが7位に終わっていたら、あんな歓喜には絶対にならなかった。7季連続のヨーロッパ参戦は祝われるどころか複雑な気持ちで受け止められ、フロントも選手も顔をしかめていたに違いない。

「7位でEL参戦」の辛さを知るセビージャ

7月のEL予備予選スタートから、セビージャは今季公式戦61試合を戦い抜いた

 今季、7位でのヨーロッパリーグ行きを経験したセビージャはその辛さを知っている。7月中旬、リーガ開幕の1カ月も前にスタートした計6試合もの予備予選。バケーションは切り上げられ、初練習が行われたのはロシア・ワールドカップ開催中の7月5日だった。ドル箱として予定していたアメリカツアーは当然キャンセルで、その代わりにアンダルシアの40度近い猛暑の下、夏休み中のがらがらのスタジアムで試合をする羽目になった。

 今季のセビージャが後半戦に息切れしたのは、この1カ月前のシーズン開幕でピークを前倒ししたことが原因だと言われている。目標だったチャンピオンズリーグ出場権を最後に逃し、クラブ内外には「7位出場ならELに出場しない方がいい」とさえ真顔で言われていた。2年連続の“罰ゲーム”を避けるために、最終戦でセビージャは必死に戦ったのだ。

 セビージャ対アスレティック・ビルバオの後半ロスタイム、空のゴールへのシュートが枠に嫌われ、そのリバウンドからのカウンターで決定的なセビージャの2点目が入った。その瞬間、アスレティック・ビルバオの選手たちはグラウンド上に突っ伏してしまった。あのシュートが入っていれば同点で、引き分けならアスレティック・ビルバオが7位だった。彼らもまた本気でヨーロッパを目指していたのだ。

 7位でのEL参戦権が歓迎されるクラブの手に渡って本当に良かった。セビージャでしかめっ面で受け取られたのでは、ELの権威に関わっていた。

Photos: Getty Images

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Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。