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工事は順調も…新カンプノウの建設現場で労働基準法違反疑惑

2023.11.25

 新カンプノウの工事現場の労働条件が、労働基準法を大きく下回っている、という内部告発が話題になっている。

 調査報道を行ったのは地元の『エル・ペリオディコ』紙で、30数人へのインタビューを元にドキュメンタリーを制作した。

月400ユーロのタダ働き

 それによると、ある労働者が週6日間、計56時間働いて支払われている月給は1000ユーロ(約16万3650円)足らず。これは週40時間で換算された最低賃金とほぼ同額なので、週16時間分――単純計算で月額400ユーロ(約6万5460円)――がタダ働きとなっている計算だ。登場した告発者はほぼすべてが外国人だったが、あまりに酷い労働条件でスペイン人にソッポを向かれたせい、とされる。

 バルセロナ側は同紙に「すべての契約は合法」「2000人が働いている中で、ドキュメンタリーに出たのは5人のケースだけ。支払いミスがあったかどうか調査中」としている。告発が事実だったとしても単発のミスであって、組織的な搾取ではない、という立場だ。

 ちなみに、これまで3回の労働基準局の査察では違法行為は発見されておらず、今回の報を受けて、4回目の大規模な査察が予定されているらしい。

 とはいえ、仮に報道のような違法行為が見つかったとしても、バルセロナに法的な責任はない。彼らが契約を結んだのは建設会社『Limak』で、問題が起きているのは『Limak』の下請け会社の労働条件であるからだ。

 唯一ダメージがあるとすれば、「持続可能な建設」をうたっている裏で弱い立場にある移民労働者への搾取があれば、クラブと新スタジアムのイメージが悪化するのは避けられない、ということだろう。

スピード工期のしわ寄せか

 今年6月1日の時点では、新カンプノウは1年後には収容60%で暫定オープンする予定で、その後来季終了までにキャパの90%にまで持っていき、2026年6月に全工事終了、グランドオープンという段取りになっている。

 工事は今のところ順調。遅延1日についてペナルティー100万ユーロ(約1億6365万円)が発生する契約だが、『Limak』は過去に海峡をまたぐ大橋の竣工予定を18カ月間も縮めた実績がある。そのスピードと安価が選出の決め手になったわけだが、現場にそのしわ寄せがいっているのでは……という危惧はある。

 住んでいるとわかるが、スペインの労働現場は非常にブラックだ。

 正規の契約が結ばれるのは極めて稀で、実際は8時間労働でも契約書上は4時間で、残り4時間分は現金手渡しで社会保険料を払わない、なんてのが常態化。それでも仕事がないからほとんどの人が感謝しながらサインする、という悲しい現実がある。

 バルセロナ史上最大のプロジェクトなのだから、最低賃金のクリアなどで満足せず、世の模範になってほしいものだが……。


Photo: Getty Images

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バルセロナ

Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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