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元ベルギー代表WGがシンガポールへ。ACLでは浦和レッズと対戦

2022.02.10

 シンガポール・プレミアリーグのライオン・シティ・セーラーズFC(以下セーラーズ)は2月8日、ベルギーリーグのスタンダール・リエージュから元ベルギー代表FWマクシム・レスティエンヌの獲得を発表した。

代表招集経験のある左WG

 レスティエンヌはエクセルシオール・ムスクロンの下部組織出身で、2008年にわずか16歳でトップチームに昇格し、プロデビューを果たした。デビュー後に主力に定着すると、左WGのポジションに入り、チームの得点源として活躍。極度の財政難により苦しんでいたチームを牽引していたものの、2009年12月にムスクロンは破産消滅した。

 10代でエースとして活躍したレスティエンヌにはマンチェスター・ユナイテッドやPSV、リールなど数多くのクラブが興味を示したが、本人はクルブ・ブルッヘへの加入を決意した。

 クルブ・ブルッヘでは当初は控え選手に過ぎなかったが、ドイツ人のクリストフ・ダウム監督が就任すると、エース格として台頭。コロンビア代表FWカルロス・バッカ(元グラナダ)、イスラエル代表FWリオル・ラファエロフ(現アンデルレヒト)、ベルギー代表DFトマ・ムニエ(現ドルトムント)とともに攻撃陣を牽引し、2012-13シーズンには38試合17ゴールを記録した。

 また、2013年度のゴールデンシューズでは、当時ズルテ・ワレヘムに所属していたトルガン・アザール(現ドルトムント)に次いで2位の得票数を得ていた。そして2013年、ベルギー代表に初選出された。

 2014年にカタールのアル・アラビが保有権を持つと、ジェノアやPSVへの期限付き移籍を繰り返し、PSV時代にはUEFAチャンピオンズリーグに出場。その後、ロシアのルビン・カザン、スペインのマラガへと移籍し、2018年にはスタンダールでベルギーリーグに復帰していた。国外ではうまくいかなかったものの、スタンダール移籍後は復調し、2019年に再びベルギー代表に招集され、EURO2020のメンバー候補の1人とされていた。

 スタンダールでは主力選手として活躍していたものの、2021-22シーズンではケガもあって開幕から出遅れていた。そして昨年10月にムバイエ・レイエ監督が解任され、スロベニア人のルカ・エルスネル監督が就任するとチームの構想外に。今年2月に入ってからスタンダールとの契約を解除し、フリーでセーラーズへ移籍することになった。

野心を見せるセーラーズ

 レスティエンヌが加入するセーラーズは、1946年にシンガポール警察のスポーツ団体によって「シンガポール・ポリス・ホース」として設立された。1995年には「ホーム・ユナイテッド」に改名し、1999年、2003年にリーグ優勝していた。

 2020年2月にシンガポールの億万長者であるフォレスト・リーがクラブを買収し、チーム名を現在の名前に変更。潤沢な資金力を身につけたクラブは、2021年1月にポルトガルのリオ・アベからブラジル人MFディエゴ・ロペスを180万ユーロ(約2億3700万円)というシンガポール史上最高額で獲得。さらに元韓国代表FWキム・シンニクも陣容に加えた。

 そして2021年のシーズンはアルビレックス新潟シンガポールとデッドヒートを繰り広げ、18年ぶり3度目の優勝を飾った。

 リーグ優勝により、今年はAFCチャンピオンズリーグに出場する。同組には天皇杯を制した浦和レッズ、元ベルギー代表MFマルアン・フェライニが所属する中国の山東泰山、そしてプレーオフで戦う韓国の大邱FCとタイのブリーラム・ユナイテッドの勝者と対戦する予定だ。

 セーラーズは、他にもビットーリア・ギマランエスからDFパブロ・エンリケ、国内のホウガン・ユナイテッドからシンガポール代表GKイズワン・マハフドを獲得している。積極的な補強を行っていることもあり、レスティエンヌは「シンガポールという国で素晴らしいフットボール文化を構築していくというセーラーズのビジョンにはとてもワクワクしている」と語り、高いモチベーションとともに新天地でのプレーを決めた。

 レスティエンヌは快足と卓越した足下のテクニックを備えた生粋の左WGで、トルガン・アザールと並び、2010年代前半のベルギーリーグを代表するアタッカーとして活躍していた。今年で30歳に差し掛かるが、左足の切れ味は衰えていない。ACLで対戦する浦和レッズにとっても注意すべき相手となるだろう。


Photo: Getty Images

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PSVジェノアスタンダール・リエージュルビン・カザン移籍

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シェフケンゴ

ベルギーサッカーとフランス・リーグ1を20年近く追い続けているライター。贔屓はKAAヘントとAJオセール。名前の由来はシェフチェンコでウクライナも好き。サッカー以外ではカレーを中心に飲食関連のライティングも行っている。富山県在住。

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