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サッカー選手は聖人君子であるべきか? フラデツキーが描く選手像

2021.06.21

 プロのサッカー選手は模範的な存在であるべきだ。とりわけ富と名声を手にした一流のプレーヤーは、憧れを抱く子供たちのためにも正しくあるべきだ。彼らはマスコミの目、SNSの目、スポンサーの目を気にして、私生活でも気を抜けない。それが当たり前だと考えられてきた。

 しかし、それに異議を唱える者もいる。レバークーゼンに所属するフィンランド代表GKルーカス・フラデツキー(31歳)だ。

 英紙『The Guardian』に寄稿されたフィンランド人記者の記事によると、フラデツキーはこう語ったことがあるという。「なぜサッカー選手だけ、他の人よりも聖人であるべきなんだい?」

ビールを飲み、ビールを贈呈

 フラデツキーはビール好きで有名だ。欧州を代表する名GKでありながら、彼はビールを飲むことを公言しており、実際に公の場でビールを飲んだことがある。フランクフルト時代、ポカールを制した後にTV番組に呼ばれると、そこでビールを飲んで優勝を祝った。

 「ビールはタブーとされているが、ビールは飲むためにあるものだ。別に、毎日のように酔うまで飲むわけじゃない。私はプロフェッショナルだ。Netflixをつけ、料理をして、ビールを1本だけ楽しんでから休むんだ」

 「汚い言葉についてだってそうだ。99.9%の人は使っているのに、なぜサッカー選手は使っちゃいけないんだ? なぜサッカー選手だけ聖人君子であることを求められるのか」

 ビールに関しては他にも興味深いエピソードがある。2018年6月、親善試合のベラルーシ戦に2-0で勝利した後、フラデツキーはスタンドのファンの元に行くと、サポーターからビールを奪って飲み干したのだ。

 数週間後、フラデツキーはある青年との写真を自身のツイッターに載せた。スタンドでビールを持っていた青年である。フラデツキーは彼に缶ビール1ケース(24本)を手渡して「借りは返した」と書き込んだのだ。

人生を楽しむ“陽キャラ”

 こういったやり取りからも分かる通り、フラデツキーはユーモアに満ちた“陽キャラ”としてサポーターから愛されている。今回のEURO 2020でも、会見の場で面白いやり取りがあった。開幕前にケガがあったFWヨエル・ポーヤンパロが調子を聞かれて「私の調子はフラデツキーに聞いてくれ。彼は練習中、あまりシュートを止めることができていないからね」と冗談を述べると、フラデツキーも負けていなかった。

 「記者の皆さんはお気づきか分からないが、今回の代表チームには初めて世話役が2名もいるんだ。シュートがフェンスを越えて飛んでいくので、それを探すのに2人も必要なんだ!」と返したのだ。

 それだけではない。フラデツキーは2019年11月のEURO2020予選で同国史上初の本大会出場が決まった際、代表チームの愛称である「ワシミミズク」のマスクを取り出しかぶってみせた。今大会もマスクを持参しているかと聞かれると「荷造りをした際に、真っ先に詰め込んだのがマスクさ!」と答えたのだ。

 別に彼は現代社会のあり方に一石を投じたいわけではない。ただ人生を楽しみ、そして人を楽しませたいだけなのだ。

 ちなみに、彼がサポーターに渡した缶ビールはチェコのビールだったという。フラデツキーはチェコスロバキアで生まれ、バレーボール選手だった父の仕事の影響で幼少期にフィンランドへ移り住んだ。そしてフラデツキーはフィンランドでサッカー選手になり、弟2人も兄の背中を追いかけてプロ選手の道に進んだ。弟2人は現在フィンランドリーグでプレーしている。

 三男のマテイは、兄のEURO2020での活躍をフィンランド紙『Ilta Sanomat』で喜んだ。そして、自身もビールが好きかと聞かれると「兄とまったく同じさ。その点は父親にしっかり育てられたんだ」と笑ってみせた。

 どうやら、ビールもユーモアもすべて父親譲りのようだ。


Photo: Getty Images

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フランクフルトヨエル・ポーヤンパロルーカス・フラデツキーレバークーゼン

Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。