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右サイドだけではない。復活したヘンクと左サイドでも躍動する伊東純也

2020.12.06

 現在、ベルギーリーグではヘンクが6連勝中と絶好調だ。開幕5試合でたった1勝とスタートダッシュに失敗し、今季は監督を2度交代しているにもかかわらず、第9節以降は白星を積み重ね、トップ戦線まで復調してきた。紆余曲折を経て復活したヘンクは、2シーズン前の優勝時の実力を取り戻したと言われている。

即戦力を補強も開幕ダッシュ失敗

 昨季は新型コロナウイルス流行に伴うリーグ中断により、UEFAヨーロッパカップ出場を逃したヘンク。今季はオランダのヘラクレスからエールディビジ得点王のナイジェリア人FWシリル・デセルス、メキシコ代表の左SBヘラルド・アルテアガ、コロンビア代表DFダニエル・ムニョスらを獲得して巻き返しを図った。

 しかし、序盤から新戦力が機能せず、得点力不足が顕著に。伊東純也やポール・オヌアチュらも振るわず、開幕4試合ではホームのルミナス・アレナでは未勝利。

 第5節のベールスホット戦では退場者2名を出し、大量5失点の醜態を晒した。開幕ダッシュに失敗したヘンクは、ドイツ人のハンネス・ボルフ監督の解任を発表した。

 ボルフを解任したヘンクは、第7節からイェス・トールップ監督が指揮を執った。昨季、ヘントを2位に導いたデンマーク人指揮官は、就任後2試合を引き分けとし、第9節のシャルルロワ戦からシステムを[3-4-3]に変更した。

 3バックはジョン・ルクミ、カルロス・クエスタ、ダニエル・ムニョスというコロンビア代表の3人を連ね、フィンランド代表左SBイェレ・ウロネン、デンマーク代表右SBヨアキム・メーレはWBに配置した。3トップは昨季からプレーするテオ・ボンゴンダ、ポール・オヌアチュ、伊東の3人が務める。

伊東は左サイドでもプレー

 ボールポゼッションは50%を切ることも多くなったが、新システムは攻守の切り替えの鋭さをもたらした。守備時には5バックを形成するが、ボール奪った後は身長2m超のオヌアチュのキープ力と、ボンゴンダ、伊東の俊足から鋭いカウンターを演出している。

 スタート時には従来どおりに左サイドにボンゴンダ、右サイドに伊東がポジションを取るが、試合展開に応じてボジションチェンジを繰り返し、伊東は左サイドでのプレーも増加した。

 日本代表では右サイドがほとんどでWBでの起用もあったが、ヘンクでの伊東は右サイドだけに留まらないプレーを展開している。これまで近くでプレーすることが少なかったフィンランド代表左SBウロネンとの連係もスムーズで、第14節のセルクル・ブルッヘ戦では、ウロネンのスルーパスから伊東がディフェンスラインを突破しゴールを決めている。

 これまでは果敢な攻撃参加を得意とした右SBメーレとのコンビネーションが光ったが、有効なパスの出し手であるウロネンとも素晴らしい連係を見せている。

 デンマーク人のトールップ監督により、攻撃陣のプレーの幅が広がったヘンクは、難敵シャルルロワ、ヘントに連勝し、チームは一気に勢いに乗ってきた。

2度目の監督交代後もスタイルは継続

 復調の兆しが見えてきたヘンクだったが、トールップ監督が11月2日に突如、母国デンマークのFCコペンハーゲンの監督に就任してベルギーを去った。また、シャルルロワ戦後には新型コロナウイルスの陽性反応により、伊東純也が一時離脱した。

 予期せぬ監督交代と伊東の離脱で不安視されたが、伊東は第12節のシントトロイデン戦でスタメンに復帰。スタートから左サイドでプレーし、ボンゴンダのゴールをアシストした。

 試合後、ボンゴンダは「伊東とは公私ともに仲良し。違う言語を話すが、サッカーがあれば通じ合える」と発言し、強い信頼関係を告白している。

 第13節からは、今季3人目の監督のヨン・ファンデンブロムが指揮を執った。かつてはアンデルレヒトでリーグ優勝を果たし、近年はAZ、ユトレヒトを率いていた56歳のオランダ人監督は、ほとんどのクラブで4バックを採用し、ポゼッションスタイルを採用していることから、再度のシステム変更の可能性がささやかれていた。

 だが、ファンデンブロムは前任者トールップが築いた[3-4-3]を維持。好調のチームに手を加えることなく、鋭いショートカウンターサッカーを展開している。

 指揮官はボンゴンダと伊東がポジションチェンジを繰り返しながら、速攻を繰り広げるスタイルに満足しているようだ。CFのオヌアチュを加えた3人で25得点7アシストを荒稼ぎしており、現在では「ベルギーリーグ最強の3トップ」とも称されている。

 第13節からは、右膝十字靭帯断裂により1年間戦線離脱していたMFブライアン・ヘイネンがスタメンに復帰。攻守ともにハイレベルで「ベルギー代表級」と呼ばれる23歳のセントラルMFの復帰は、ヘンクにとっても朗報だ。欧州カップ戦がないヘンクは日程的にも余裕があり、一躍、優勝候補の呼び声が高まっている。


Photo: Getty Images

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ヘンク伊東純也

Profile

シェフケンゴ

ベルギーサッカーとフランス・リーグ1を20年近く追い続けているライター。贔屓はKAAヘントとAJオセール。名前の由来はシェフチェンコでウクライナも好き。サッカー以外ではカレーを中心に飲食関連のライティングも行っている。富山県在住。

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