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シャルケ出身DFアイハン、実践してわかったサッスオーロ躍進の秘密

2020.11.28

 今季からイタリア・セリアAのサッスオーロに移籍したトルコ代表DFカーン・アイハン。シャルケの地元ゲルゼンキルヒェンで生まれ育ち、デュッセルドルフではブンデスリーガの1部も2部も主力として経験したアイハンが、11月26日付の『キッカー』の中で、北イタリアのプロビンチャとして躍進するサッスオーロについて語った。

 “やりすぎ”にも見えるビルドアップ

 誰が対戦相手でもほぼ必ずと言っていいほどGKから始まるビルドアップは、ロベルト・デ・ゼルビが率いるサッスオーロのトレードマークとなっている。ペップ・グアルディオラもサッスオーロの試合をチェックしていることを公にしており、お互いに個人的な親交もあるという。「監督とペップは個人的な親交があり、リスペクトし合っている」とアイハンも説明する。

 ドイツでプロ選手として定着したアイハンだが、サッスオ―ロで実践することで、このチームのビルドアップの意義をようやく理解したという。

 「対戦相手が、守備ブロックを崩して自分たちの方に食いついてくるように仕向けないといけない。そうして相手のプレッシングのファーストラインを越えられれば、中盤に大きなスペースができる。そうすると、対戦相手の守備ユニットは普段とはまったく違った動きをするんだ。これは、デ・ゼルビの下で初めて学んだ。僕らが何度もトレーニングして狙っているのは、その瞬間を作り出すことなんだ。時には“やり過ぎ”に見えてしまうこともあるけど、それに挑戦するだけのリターンもあるんだ」

デ・ゼルビ流に当初は困惑

 「25歳、26歳にもなれば、サッカーのことはある程度は見てきたと思っていた。でも、サッスオーロに来てから最初の1週間は、何もわからなくて目の前が真っ暗になったよ」とアイハンは笑う。

 ボールや相手の位置、自身のポジションや立ち位置に応じたタスクを、オートマティズムが浸透するまでトレーニングを重ねる。デ・ゼルビの緻密なビルドアップのトレーニングや求められるものがドイツのものとはまったく違い、慣れるまでに時間がかかったという。

緻密なビルドアップをチームに浸透させたデ・ゼルビ監督

 「トレーニングのレベルがまったく違うわけではなくて、やり方や動き方がまったく異なるものだったからね。多くの選手たちは、すでにやるべきことや、自分の移動する行き先を正確に理解していた。監督は非常に明確なプレーのコンセプトを持っていて、トレーニングでもそれが実践されることが求められている」

 「もしかすると、試合だけを見ると、それは“やり過ぎ”にも見えるかもしれない。でも、その背景にはとても多くの理論やトレーニングの積み重ねがあるんだ。これらすべてのことを、ほんの少しでも理解するのに1週間から10日はかかったんだ」

「チームのファンになった」

 コロナ禍の影響もあり、他の選手たちと理解し合う機会は大きく減っている。それでも、ここまでの8試合で試合に絡むことはできている。本職のCB、右SBの他に右SHでも試されるなど、自身も試行錯誤を繰り返しながら、今季リーグ無敗のチームに貢献している。

 「本来なら監督は、新加入選手がチームの戦い方を習得するまでに2カ月ぐらい時間をかけ、その後で起用するんだ。だから、監督がその原則を破ってでも僕を起用していることには誇りを感じているよ」

 アイハンも、サッスオーロのプレーにほれ込んだ1人となった。「チームのプレースタイルは、僕を本当にサッスオーロのファンにした。監督だけでなく、チームのファンになったんだ。時々、自分たちの試合を90分間見返すことがある。僕らのサッカーを本当に気に入っているからね」

 自身も言うように、「シーズンはこれから本格的に始まる」。強豪クラブとの対戦が控える12月、そして1月にチームの真価が問われる。


Photos: Getty Images

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サッスオーロシャルケペップ・グアルディオラロベルト・デ・ゼルビ

Profile

鈴木 達朗

宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。

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