SPECIAL

ドイツ勢がCL・ELで勝てないのはなぜ? 現地メディアの見立て

2017.11.02

ドイツサッカー誌的フィールド

経営面での称賛とは対照的にピッチ上、特に欧州カップ戦での不振が目立つドイツ勢。16-17シーズンは12年ぶりにベスト8までですべてのクラブが敗退を喫するという屈辱を味わった。そして、17-18に至ってはUEFAチャンピオンズリーグのバイエルンを除く全クラブがグループステージ3位以下に沈む有様。長らく2位の座を守り通してきたUEFAカントリーランキングでも4位まで転落してしまった。不振の原因はどこにあるのか、ドイツ国内の反応を論説する。

 スポーツ界がドイツサッカーを賛美していたのは、それほど昔のことではない。12-13シーズンのCL決勝ではブンデスリーガの2チームが魅力的なプレーを見せ、スペインの『ラ・バングアルディア』紙はこう書いていた。

 「バイエルンとドルトムントは、彼らとバルセロナやレアル・マドリーも含む欧州のライバルたちとの間に、どれだけ距離があるのかを証明した」
その1年後には、ドイツ代表がW杯で優勝。ドイツサッカー界は、強者の持つ甘い感情に酔いしれていた。

 しかし2017年春、そんな歓喜を打ち消すような現実が突きつけられた。12年ぶりに、欧州カップ戦の準決勝にブンデス勢が一つも到達できなかったのだ。バイエルンはCL準々決勝でレアル・マドリーに敗れ、試合後カール・ハインツ・ルンメニゲCEOは「審判にやられた」と吐き捨てた。チームバスを襲撃されたドルトムントはラウンド16でモナコに負け、ELではシャルケが準々決勝で延長戦の末アヤックスに屈した。

 これが不運あるいは偶然だと言う人もいるかもしれないが、『シュツットガルター新聞』は「偶然ではない」と断言し、『キッカー』誌も「問題は多層的である」と分析した。何が原因で、解決策はあるのか。

資金力の問題…ではない

 以前から言われていたのが、他国のビッグクラブとの資金力の差である。だがこれについては、『シュツットガルター新聞』の指摘が的を射ている。

 「資金力では説明できない。今では、ブンデスの18チーム中13チームは年間1億ユーロ(約120億円)以上の収入があるのだから」

 原因を自分以外のところに求めたくなる、誘惑に駆られる気持ちはわかる。だが、そうすることで間違った方向へと物事を導いてしまうことはままある。

 真の原因は、ブンデスの構造にある。各クラブの資金力自体は向上していても、リーグ5連覇を果たし一人雲の上の存在であるバイエルンがライバルチームのベストプレーヤーを買い上げる構図にはいっこうに変化の兆しが見られない。この夏も、昨季飛躍を遂げたホッフェンハイムからジューレとルディが引き抜かれた。これでは、数年にわたりコンスタントに結果を残せないのも無理はない。
昨シーズンの1部リーグでは、中位以下の半数以上のクラブに欧州カップ戦出場権獲得と降格、両方の可能性が残る大混戦となり、その中には昨季はCLに出場していたレバークーゼンとボルシアMGも含まれていた。

 『フランクフルター・アルゲマイネ』紙は「EL出場を争ったクラブと残留を争ったクラブとの間に、質的な差がほとんどなかった」という事実に驚くとともに、「欧州カップ戦出場クラブの安定感の欠如は、大会での結果にも影響を与えている」と指摘する。

ELで3戦全敗のケルンは国内でもいまだ勝利なく最下位と、もはや欧州カップ戦どころではない状況だ

CLはともかく、ELで近年王者になったセビージャやポルトと比べて、ドルトムントやシャルケ、レバークーゼン、ボルシアMGがそこまで劣っているということはないはず。にもかかわらず、もう20年もこのタイトルに手が届いていないのは、メンタリティにも原因があるように思えてならない。
ドイツ人は常に良い準備をして、将来の安定を確保することを目指す。それで先述したようにリーグ戦が混戦になった時、目の前の大会での成功より翌シーズンの出場権を優先することに繋がっているのかもしれない。

ドイツに名将はいない?

 『フランクフルター・ルントシャウ』紙は監督について言及。本当の意味で“良い監督”が足りないのではないかと問題提起している。

 近年の傾向を見てみると、野心的なクラブは外国人監督を招へいしてきた。バイエルンのリーグ5連覇のうち4度はスペイン人のグアルディオラとイタリア人のアンチェロッティによって成し遂げられた。昨季2位へと大躍進したRBライプツィヒのハーゼンヒュットルと5位ケルンのシュテーガーはオーストリア人で、6位ヘルタ・ベルリンのダルダイはハンガリー人。昨季のトップ6のクラブを率いたドイツ人監督は、国際舞台での経験がまったくないホッフェンハイムのナーゲルスマンと、エキスパートとしては輝くがクラブ内で実りのある仕事環境を作れず解任の憂き目に遭ったトゥヘルの2人だった。

 おそらく今、クラブで指揮を執っている中で最も優れたドイツ人監督であるクロップはリバプールでの仕事を楽しんでおり、ブンデスに戻って来るつもりがなさそうなのが残念でならない。

Photos: Bongarts/Getty Images

footballista MEMBERSHIP

TAG

ドイツブンデスリーガ

Profile

ダニエル テーベライト

1971年生まれ。大学でドイツ文学とスポーツ報道を学び、10年前からサッカージャーナリストに。『フランクフルター・ルントシャウ』、『ベルリナ・ツァイトゥンク』、『シュピーゲル』などで主に執筆。視点はピッチ内に限らず、サッカーの文化的・社会的・経済的な背景にも及ぶ。サッカー界の影を見ながらも、このスポーツへの情熱は変わらない。

RANKING