J2昇格、百年構想リーグの躍進――。ピッチ上では確かな結果を積み重ねる一方で、テゲバジャーロ宮崎はクラブの土台となるファン・サポーターとの関係づくりにも力を注いでいる。少数精鋭のフロント、地域とともに育む応援文化、そして「みんなのセカンドクラブ」というビジョン。クラブを育てる、その成長物語の舞台裏を追った。
ピッチ上の躍進と、追いついていないクラブの知名度
2025年J3リーグからJリーグの秋春制移行にともなって開催されたJ2・J3百年構想リーグにかけて、ひときわ存在感を放ったクラブの1つがテゲバジャーロ宮崎だった。2025年J3リーグ戦を4位フィニッシュしてJ2昇格プレーオフに参戦すると、準決勝で5位・鹿児島ユナイテッドFCに2-0、決勝で3位・FC大阪に4-0と圧勝しクラブ史上初のJ2昇格を決める。上昇気流に乗った勢いそのままにJ2・J3百年構想リーグに突入。開幕7連勝でWEST-Bグループ首位に立つと、15勝2PK敗1敗でグループ優勝を果たした。その後のプレーオフ第1戦ではカターレ富山に敗れたものの第2戦ではヴァンフォーレ甲府に勝利し、最終的にリーグを3位で終えている。
百年構想リーグ開幕前には、2025年J3で34試合出場25得点でJ2昇格の原動力となったFW橋本啓吾が右脛骨骨折による長期離脱する不安材料もあったのだが、ツエーゲン金沢から完全移籍で獲得した土信田悠生が19試合出場9得点と、橋本の不在を埋める活躍。オーソドックスな[4-2-3-1]のフォーメーションにおいて、2列目に並ぶ3選手のセンスきらめく立ち回り、左右SBのタイプの異なる攻撃参加、フィニッシュワークに絡むボランチに安定感満点の守備陣と、プレーヤー個々の特長を存分に引き出しながら高強度で戦わせる大熊裕司監督の手腕が光り、シーズン途中には[4-4-2]のオプション増で戦いのバリエーションも広げた。

だが、シーズン終了後に開催されたJリーグオールスターDAZNカップに向けてのファン・サポーター投票の結果は、そんなテゲバジャーロの躍進とは裏腹なものとなった。所属するWEST-Bグループから得票数を多く集めた11人の中に、テゲバジャーロの選手は1人もいない。百年構想リーグで苦戦した大分トリニータから3人が選出されたり、最下位のギラヴァンツ北九州からもファンの間で圧倒的な人気を誇る髙橋大悟が入っていたりするのだが、グループ首位を独走したテゲバジャーロで得票数1位だった土信田さえもイレブン入りしておらず、好調だった戦績とのアンバランスさが非常に目をひいた。結局、地域リーグラウンドベストイレブン選出枠とJリーグ推薦枠で8名が選ばれ、クラブ内得票数1位の土信田と合わせた合計9名がメンバー入りして躍動感あふれるプレーを披露してくれたのだが、やはりこの投票結果から見るに、ファン・サポーターの母数が、まだ他クラブほど多くないのだろう。
その一方、様々なクラブのファンやサポーターが詰めかけたオールスター会場で、テゲバジャーロの選手たちがスタンドにピンク色のユニフォーム姿の観客を見つけて喜ぶというアットホームな雰囲気が垣間見えたことも、特筆しておきたいトピックだ。創成期から成長途上のクラブに多く見られる、ファンやサポーターとクラブとの独特の距離感。ホームスタジアムであるいちご宮崎新富サッカー場も、ピッチとスタンドの距離がわずか約6メートルとコンパクトで、観客と選手が普通にコミュニケーションを取れてしまうという牧歌的な空気感が、時に微笑ましい。

「綾マダム」が支える、テゲバジャーロらしい応援文化
「ファン・サポーター投票については、そういう投票があること自体のクラブからの発信が足りなかったこともあったのかもしれません」
そう振り返るのは、テゲバジャーロの広報担当・松本理穂さんだ。長崎県出身で、V・ファーレン長崎と大分トリニータで勤務した経験も生かし、成長中のクラブの情報発信を最前線で引き受ける。そんな松本さんが、テゲバジャーロならではのサポーター文化について教えてくれた。

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Profile
ひぐらしひなつ
大分県中津市生まれの大分を拠点とするサッカーライター。大分トリニータ公式コンテンツ「トリテン」などに執筆、エルゴラッソ大分担当。著書『大分から世界へ 大分トリニータユースの挑戦』『サッカーで一番大切な「あたりまえ」のこと』『監督の異常な愛情-または私は如何にしてこの稼業を・愛する・ようになったか』『救世主監督 片野坂知宏』『カタノサッカー・クロニクル』。最新刊は2023年3月『サッカー監督の決断と采配-傷だらけの名将たち-』。 note:https://note.com/windegg
