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日本代表に明確な目標を与えた遠藤航の功績。そして再起へ「リバプールのために全力で頑張ります」

2026.07.05

Good Times Bad Times 〜フットボール春秋〜 #30

プレミアリーグから下部の下部まで、老いも若きも、人間も犬もひっくるめて。フットボールが身近な「母国」イングランドらしい風景を、在住も25年を超えた西ロンドンから山中忍が綴る。

footballista誌から続くWEB月刊連載の第30回(通算264回)は、現地ダラスで観戦したスウェーデン戦、そしてENDO 6」のいない日本代表の2026W杯を見届けて。

キャプテン就任とともに掲げた「W杯優勝」という目的地

 日本代表にとっての2026年W杯は、決勝トーナメント1回戦で幕を閉じた。出場チーム数が48カ国に増えた今大会では、32強の段階。2002年以来の鬼門である16強の手前で敗退となった。

 だが個人的には、PK戦でクロアチアとの16強対決に敗れた前回大会よりも、ポジティブな後味を残してくれたと感じている。惜敗(2-1)の相手が、より格上のブラジルだったからというわけではない。ブラジルにすれば使命なのだろうが、日本も、目標としては「優勝」を堂々と掲げられると確信できたからだ。5度の優勝歴を誇るブラジルのような「格」を身につけるには、まだまだ時間を要する。それでも、優勝の可能性を訴えるだけの「質」は、個と集団の両レベルで示すことができた。

 その大目標を、代表チームと代表ファンに与えたのが、まさかの負傷離脱を余儀なくされ、代表引退を決めることになってしまった遠藤航だった。もちろん、3年前の正キャプテン指名を受けて、「優勝」の2文字を口にすることができた背景には、90年代に日本もW杯出場を狙えるのだと思わせてくれたFW三浦知良から、キャプテンマークをつけるCBとして代表史上初の8強進出に迫った日本を支えた吉田麻也まで、過去の主軸たちによる活躍がある。

 しかしながら、それこそ中学時代から、担当顧問と並ぶ「引率者」のような役割も担う部活でキャプテンシーの基礎を身につけていた遠藤が、明確な“目的地”を示していなければ、日本は過去24年間の流れに添い、漠然と「16強の壁」を意識して今大会に臨んでいたかもしれない。

 大それた目標だとする意見は、日本国内からも聞こえてきた。しかし、具体的なターゲットを得た代表の取り組みに、「W杯で優勝するためには」というテーマが加わったことは間違いない。しかも、現実味を増すことになるテーマだ。

 日本は今夏のW杯で優勝を目指していると伝えると、「いいんじゃないか?」と反応したのは、イングランド代表番記者の第一人者であるヘンリー・ウインターだった。3月末のテストマッチで、日本がイングランドを下した(0-1)直後の会話だったのだが、「イングランド人は毎回そう言っているが(苦笑)、信じることは大切だ」と言っていた。

 旧知の英国人記者だけではない。5月上旬、ブライトンの練習場で、マキシム・デ・カイペルを取材した時のこと。ベルギー代表DFの彼に、「日本は8度目のW杯に優勝を目標として臨むのだけど、出場15回目のベルギーから見て、少なくともダークホースだとは思える?」と訊ねると、「“イエス”と答えてほしい?」と切り出して笑いながら、こう言っていた。

……

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Profile

山中 忍

1966年生まれ。青山学院大学卒。90年代からの西ロンドンが人生で最も長い定住の地。地元クラブのチェルシーをはじめ、イングランドのサッカー界を舞台に執筆・翻訳・通訳に勤しむ。著書に『勝ち続ける男 モウリーニョ』、訳書に『夢と失望のスリー・ライオンズ』『ペップ・シティ』『バルサ・コンプレックス』など。英国「スポーツ記者協会」及び「フットボールライター協会」会員。

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