REGULAR

イングランドでも長寿が認識されているキング・カズ。鈴鹿で生で観た58歳現役のいろいろな意味での“凄さ”

2025.12.06

Good Times Bad Times 〜フットボール春秋〜 #23

プレミアリーグから下部の下部まで、老いも若きも、人間も犬もひっくるめて。フットボールが身近な「母国」イングランドらしい風景を、在住も25年を超えた西ロンドンから山中忍が綴る。

footballista誌から続くWEB月刊連載の第23回(通算257回)は、一時帰国中にピッチ上での姿を生で拝むことができた現役最年長選手、三浦知良が教えてくれたこと。

「ガッザの日本代表版」として、歴史の中の選手として

 “キング・カズ”こと三浦知良の名は、ここ「サッカーの母国」でも知られている。年配者の間では、「ガッザの日本代表版」として。カズが日本随一のビッグネームだった1998年、イングランド代表きっての人気者だったポール・ガスコインがそうであったように、土壇場で最終メンバーから漏れ、強化合宿先で自身のW杯フランス大会が閉幕した悲運に由来している。

 より若い世代の間では、母国が誇る往年の名選手の世界記録を抜いた、歴史の中の選手として。言わずと知れた、現役最年長記録だ。前記録保持者は、サー・スタンリー・マシューズ(故人)。50歳までプレーした“マジシャン”は、映えある初のバロンドール賞のみならず、“サー”の称号まで現役時代に授かっている偉人だ。

 2017年3月、カズが、まずは最年長のプロ選手として、続いて最年長得点者としてマシューズを抜くと、未来永劫に破られることはないと思われていた記録を塗り替えた「もの凄い」偉業は、『ガーディアン』のような高級紙から、『サン』を代表格とする大衆紙まで、全国紙上でイングランド国民に伝えられた。

 そして、カズの現役時代は続いている。残念ながら、もう遠くはないはずの引退までに今一度、ピッチ上での姿を生で拝みたい。その願いが叶ったのは、去る11月16日。日本に一時帰国中、アトレチコ鈴鹿クラブのホームゲームを観戦することができた。

……

残り:2,235文字/全文:3,058文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

Profile

山中 忍

1966年生まれ。青山学院大学卒。90年代からの西ロンドンが人生で最も長い定住の地。地元クラブのチェルシーをはじめ、イングランドのサッカー界を舞台に執筆・翻訳・通訳に勤しむ。著書に『勝ち続ける男 モウリーニョ』、訳書に『夢と失望のスリー・ライオンズ』『ペップ・シティ』『バルサ・コンプレックス』など。英国「スポーツ記者協会」及び「フットボールライター協会」会員。

RANKING