アフリカネーションズカップ優勝候補、モロッコ代表はどれくらい強い?
新・戦術リストランテ VOL.98
footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!
第98回は、12月21日から始まったアフリカネーションズカップ2025の開催国&優勝候補、モロッコ代表の分析。コモロ代表との開幕戦から見えた戦術的特徴、強みと弱みについて考察してみたい。
実は日本と似ている「技術と組織のチーム」
アフリカネーションズカップが始まっています。開幕戦は開催国のモロッコ対コモロ。優勝候補筆頭のモロッコが2-0で順当に勝利しました。
コモロはアフリカ大陸南東の島国、人口は85万人ほど。国の規模ではモロッコと比べるべくもない小国ですがサッカーは盛んで、2021年のネーションズカップではベスト16入りを果たしています。代表選手の多くはフランス育ち。開幕戦はモロッコが相手ということもあって[5-4-1]のローブロックでひたすら守っていましたが、個々のテクニックはなかなかのものがありました。
カタールW杯ベスト4のモロッコは来年のW杯ではグループC。ブラジル、ハイチ、スコットランドと同組です。グループFの日本が1位か2位で通過した場合、ラウンド32ではグループCの2位または1位と当たります。おそらくブラジルかモロッコでしょう。その意味でも注目度が高いチームではないかと思います。
雨中の開幕戦、前半は0-0。ワンサイドゲームでしたがモロッコはさほど多くの決定機を作れていませんでした。11分のPKもラヒミが真ん中に蹴って止められています。あとはFKのクイックスタートからサイバリが角度の狭いところから狙ったシュートが惜しかったくらいでしょうか。
後半はさすがに実力差を見せつけ、ブライム・ディアスと交代出場のエル・カービィのゴールで2-0と勝負を決めました。エル・カービィのオーバーヘッドキックは、もう開幕戦で大会ベストゴールが決まったのではないかと思えるほど鮮やかさでした。
ただ、この試合だけではモロッコの実力はわかりにくい。本領は[4-1-4-1]のコンパクトで機能的な守備からのカウンターだからです。カタールW杯の時のスタイル。コモロ戦では終盤の88分あたりでようやくそういう形になりましたが、それまではほぼ敵陣に押し込んで攻めている状態だったので。
北アフリカ勢らしくテクニックには定評があります。そこに近年は組織力が加わって、W杯での快挙になったわけですが、タイプとしてはけっこう日本に似ていますね。アフリカ勢というとフィジカルで押してくるイメージかもしれませんが、モロッコは全然そういう感じではない。むしろフィジカル的には平凡。技術と組織のチームです。
豊富な人材だが、専守防衛を崩すのは苦手
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Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。
