イタリアを代表する大都市ミラノを二分するインテルとミランは、ともに中国資本から米国資本へオーナーシップの交代を経験し再建の道を歩んでいる。しかし、ピッチ上の結果では、インテルがミランを圧倒しつつある。その背景には経営陣の構成で両者に相違点があることが少なからず影響しているのかもしれない。サッカークラブの経営ウオッチャーであるschumpeter氏にミラニスタの視点から考察してもらった。
中国から米国へ。オーナーシップ交代の経緯はそっくり
両クラブとも、中国資本による経営の行き詰まりを経て、米国の投資ファンドの手に渡ったという点では足並みを揃えている。
インテルは2024年5月に中国の家電販売大手である蘇寧からオークツリー・キャピタル・マネージメント(以下、オークツリー)へ、ミランは2018年7月に李勇鴻(ヨンホン・リー)からエリオット・マネジメント(以下、エリオット)へとオーナーシップが移行した(次いで2022年8月にエリオットは米国のレッドバード・キャピタル・パートナーズ(以下、レッドバード)にミランを売却している)。いずれも旧オーナーが新オーナーから借り入れていた融資を期日に返済できなかったこと(債務不履行)が引き金となったものであり、新オーナーは就任当初から財務の健全化と持続可能な成長モデルの構築を掲げた。さらに両者とも、既存パートナーとの再交渉、新規パートナーの開拓を通じたコマーシャル収益の改善や国際市場への展開を重視する姿勢を明確にしてきた。
Elliott’s Letter of Gratitude to AC Milan 💌
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— AC Milan (@acmilan) June 1, 2022
こうした経緯だけを見れば、インテルとミランはまるで鏡写しのような道を歩んでいるかのように見える(オーナーシップ交代の時期が違うので、厳密には前者が後者の跡をたどっている)。
専門家を放出し、未経験者ばかりの合議制が招いた大惨事
しかし、オン・ザ・ピッチのパフォーマンスではミランは隣人に大きく水をあけられている。
米国資本の傘下に入ったタイミングの違いを考慮して、初めて両クラブとも米系のオーナーのもとで戦った24-25シーズンの結果を見ても、インテルは優勝こそ果たせなかったもののセリエA、スーパーカップ、チャンピオンズリーグ(以下、CL)で2位に入るという競争力の高さを国内外に示した。一方、ミランはスーパーカップでインテルとの決勝を制したものの、CLノックアウトフェーズプレーオフでフェイエノールトに敗退し、国内リーグでは8位に沈み、25-26シーズンに開催される欧州の大会の出場権を逃すという惨憺たる結果に終わった。
この差を単一の要因に帰することはできないが、経営陣の構成の違いがその一因であったと筆者は考えている。
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Profile
schumpeter
2004年、サッカー雑誌で見つけたミランのカカを入口にミラニスタへ。その後、2016年に当時の風間八宏監督率いる川崎フロンターレに魅了されてからはフロンターレも応援。大学時代に身につけたイタリア語も活かしながら、サッカーを会計・ファイナンス・法律の視点から掘り下げることに関心あり。一方、乃木坂46と日向坂46のファンでもある。
