6月以降のリーグ戦6試合で4ゴール。小学4年生からロアッソ熊本に在籍し、高校1年生の2023年12月にプロ契約、昨年3月にはJ2最年少得点記録を更新した2007年生まれのストライカーが今、その大器の片鱗を存分に見せつけている。本人が語る昨季との違い、得点を生む「イメージ」の源泉とは?
中断期間に入ったJ2で、6月度の「2025明治安田Jリーグ月間ヤングプレーヤー賞」を受賞したのに続き、7月20日からウズベキスタン遠征を行うU-22日本代表に選出された神代慶人。今季は中断前までで9試合出場の4得点と、数字そのものが突出しているわけではない。だが、そのプレーぶりを振り返れば納得の選出と言える(21日、ケガのために離脱することが発表された)。
プロ2年目を迎えた今季は、昨年9月に負った右膝外側半月板損傷というケガの影響もあって1月のチーム始動に間に合わず、調整からスタートした。神代本人はおそらく1日でも早く、思い切り走ってボールを蹴りたい思いを募らせていたはずだが、いささか気持ちが逸りすぎていることを察してか、大木武監督も慎重に経過を見ている様子だった。加えて、足の回復後には右手を痛め、完全合流するまでに時間を要した。しかし、リーグ後半に入って交代出場から徐々にプレー時間を伸ばしていくにつれ、神代はまるで、それまで溜め込んだエネルギーを一気に放出するかのように、イキイキとしたプレーを見せている。
初ゴールの伏線、2点目のPKは「蹴らせろ蹴らせろと言うもんだから」
今季初ゴールは、第18節いわきFC戦。チームは神代の得点後にも1点を失って1-5で敗れたのだが、相手GKの処理ミスを逃さず自らボールを奪って押し込んだ後半アディショナルタイムのゴールには、「何が何でも点を取る」という、ストライカーらしい強い気持ちが表れていた。というのも、この初得点には実は伏線があった。それは、スペースへのランニングからボールを引き出して古長谷千博にパスを通し、PK獲得を演出した80分のことである。榎本一慶主審がホイッスルを吹いてPKの判定とわかるなり、神代はいち早く駆け寄り、自ら蹴る意思を見せたのだ。
決まれば2点差に追い上げるチャンスであり、なおかつ自身にとって今シーズンの初得点になる可能性があるとなれば、蹴りたいと思うのは当然。ただ、いくら自分が出したパスがきっかけとはいえ、10番をつけた先輩が近くに立っていれば話は別で、普通の17歳なら、そうそう強い意思表示はできまい。
結果的に、GKジュ・ヒョンジンに倒された形となった古長谷がキッカーを務めたが、踏み込んだ足を滑らせてボールは枠を外れ、その後チームは86分に失点。0-4とリードを広げられた中、ボールを奪いに前へ出ていく守備から、前述した初ゴールにつなげたのだった。
【6/1いわき戦】
本日のアウェイ・いわきFC戦は1-5敗戦となりました。
スタジアムで、熊本から、各地から応援してくださった皆さま、誠にありがとうございました。#ロアッソ熊本 のゴールは後半45+4分、後半から出場した #神代慶人 選手がGKから奪い決めた得点です⚽️… pic.twitter.com/3t0hI0TnZc— ロアッソ熊本(official) (@roassoofficial) June 1, 2025
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Profile
井芹 貴志
1971年、熊本県生まれ。大学卒業後、地元タウン誌の編集に携わったのち、2005年よりフリーとなり、同年発足したロアッソ熊本(当時はロッソ熊本)の取材を開始。以降、継続的にチームを取材し、専門誌・紙およびwebメディアに寄稿。2017年、母校でもある熊本県立大津高校サッカー部の歴史や総監督を務める平岡和徳氏の指導哲学をまとめた『凡事徹底〜九州の小さな町の公立高校からJリーガーが生まれ続ける理由』(内外出版社)を出版。
