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【Jリーグ月間表彰】スポンサーからパートナーへ。北海道コンサドーレ札幌、クラウドファンディング達成率1870%の要因

2020.10.20

DAZNとパートナーメディアによって立ち上げられた「DAZN Jリーグ推進委員会」の活動の一環として新たにスタートした企画「Jリーグ月間表彰」。2020明治安田生命Jリーグで活躍した選手、チームなどを各メディアが毎月選出。フットボリスタでは「Jリーグ月間MIC」(Most Interesting Club)と題し、ピッチ内外で興味深い取り組みをしていたクラブを紹介する。

今月はクラウドファンディング「#全道一丸で乗り越えよう!コンサドーレパートナー企業 応援プロジェクト!」を実施した北海道コンサドーレ札幌を選出。パートナー事業部副部長・伊藤浩士氏に同プロジェクト実施の経緯やコロナ禍のパートナーシップの在り方などについて話を聞いた。

コンサドーレサポーターの愛を感じた

――クラウドファンディングは今年、複数のJクラブが取り組んでいる施策ですが、コロナ禍による減収を契機としており、集まったお金をクラブの運営費として使うケースが多いです。一方、北海道コンサドーレ札幌が行った「#全道一丸で乗り越えよう!コンサドーレパートナー企業 応援プロジェクト!」はその名の通り、パートナー企業への支援を目的としています。自クラブではなくパートナー支援を選択した理由を教えてもらえますか?

 「我々はまだまだ事業規模が大きなビッグクラブではありません。パートナー企業様を含め多くのサポーター、関係者の皆さまに支えられているクラブです。だからこそ、良い時も苦しい時も支えてくださるパートナー企業様に何ができるのかを最初に考えるのは私たちにとっては自然な流れでした」

――そうした考えがサポーターにも浸透していたのか、支援総額5612万8613円(達成率1870%)という驚異的な結果になりました。

 「始める前は、過去4回の実績(クラウドファンディング)からサポーターの力は確信していましたが、本当にこの状況下の中で実施して良いものか、ご支援いただけるのかの不安が本心でした。目標金額の300万円という設定については、“低かった”という意見もあるかもしれませんが、決してサポーターの力を信じていなかったというわけではありありません。先ずは、(クラウドファンディングに)ご参画いただいたパートナー企業様の現状を知っていただきたかったこと、結果的にサポーター、クラブに関わる方々の力で成功できたことが何よりです。パートナー企業様の方からも『コンサドーレサポ―ターさんの愛を感じた』というお言葉をいただき、クラブ一同、心から感謝しております。」

――クラウドファンディングはリターン設定の必要があることもあり、本プロジェクトに参加されたパートナー企業はB to C企業が中心です。今後、B to B企業パートナーへの支援は何か検討されていますか?

 「そこは課題として認識しています。実際、B to Bのパートナー企業様もいらっしゃるので、既にプランニングを始めております。実施のタイミングについては、情勢を見極め、しっかりとした形で示し、実施していかなければなりません」

――以前、B to B企業の社長の方がJリーグクラブのスポンサーになることで生まれる“横の繋がり”は大きなメリットであるとおっしゃっていました。

 「そうですね。私たち(パートナー事業部)の最も大きな仕事はパートナー企業様同士を繋ぐことだと思っています。スタジアムでの広告露出ももちろん大切ですが、ホームゲームは年間で約20試合程度。試合日以外の日常でいかに、コンサドーレのパートナーになっていただいたメリットを感じてもらうかを重要視している点です。また、その繋がりによって、北海道を豊かに元気にすることもできると考えています」

――北海道コンサドーレ札幌が主導した、パートナー企業同士の繋がりの具体例があれば教えてもらえますか?

 「我々パートナー事業部が主導するのは無論、それとは逆にパートナー企業様が主導することが日常的にあります。私が担当させていただいている、トップパートナーのダイアモンドヘッド社の柴田様(代表取締役)のご紹介で取引企業様へ同行営業した実例ですが、クラブを活用した提供価値やサポーターのロイヤルティの高さなどを、自ら柴田さまが熱く語っていただく、我々が説明するよりも遥かに説得力があります。結果は勿論、相当の高い確度をもってパートナー契約に至ることができました。次に、その新規パートナー企業様に我々の全クラブパートナー企業様をご紹介し、新規取引や事業拡大の可能性があるパートナー企業様へ繋いでいく、そのように良い循環を生み出していきます」

――そういった活動が、右肩上がりのパートナー収入を支えていらっしゃるのですね。

 「これは野々村(社長)の方針でもあります。単純に広告露出を提供するだけではない関係性構築の重要性を、社長就任当初の2013年からずっと発信しています。以前、スタジアムの大型ビジョンでクラブの立ち位置やビジョンを説明するということも行いましたが、同様の話を数年間にわたって北海道内各地の講演活動などで伝え続けてきました。そういう活動が種まきとなって、2016のJ1昇格を機に花開いたのだと思います」

――つまり、パートナー企業はクラブにとって理解者でもあると。

 「はい。数年前までは社内でも“スポンサー”という表現を使っていました。ただ、この部署の仕事に関わらせてもらう中で“パートナー”に変更しようと発案しました。パートナーという言葉には、お金をいただく対価として広告露出を提供するだけの関係だけではない意味合いが含まれていると思っております」

――2016シーズンからはチーム名を「“北海道”コンサドーレ札幌」に変更されています。ホームタウンエリアを北海道全土に拡大した影響については、どのように捉えていらっしゃいますか?

 「チーム名変更前は札幌以外の地域にある企業様から『コンサドーレの名前は知っているけど札幌中心の活動で遠い存在』といった反応もありましたが、チーム名に北海道が付いたことで我々の活動範囲が広がり、親近感を持っていただくようになりました。昨今、北海道内の市町村で相互交流協定を締結し事業連携させていただいている地域もありますが、それもチーム名変更が(締結の)理由の一つでもあります」

――同じ2016年には博報堂DYメディアパートナーズとビジネス戦略パートナー契約も締結しています。この契約がもたらした効果についても教えてもらえますか?

 「ホームゲーム全試合を北海道民の方々へ地上波放送できるようになったことです。コンサドーレに興味を持ってもらうきっかけとして、地上波放送の影響は大きいですし、パートナー事業部としてもパートナー企業様のブランディング、課題解決を提案する上で、地上波放送があることは新規企業へアタックする際のとても大きな営業ツールになっております」

――コロナ禍ではスタジアムの来場者数が制限され、パートナー企業のアクティベートも限定される中で、ますます地上波を含むメディアを通じたアプローチが重要になりますね。

 「スタジアムのお客様が少ない中で協賛金をいただいているので、クラウドファンディングもそうですが、これまでとは違った取り組みを求められています。地上波はもちろんですが、選手・スタッフや社内の広報・プロモーションチームとも連携したSNSの活用など、オンラインの施策は今後ますます重要になってくると思っています」

「#全道一丸で乗り越えよう!コンサドーレパートナー企業 応援プロジェクト!」の支援者数は4905人を記録した

サポーターはクラブの営業マン

――ここからは、今回のクラウドファンディング成功の要因でもある“サポーターのロイヤルティ”について伺わせてください。2019年度のJリーグ観戦者調査で、北海道コンサドーレ札幌サポーターは「チームアイデンティフィケーション」の項目でJ1トップの数字を記録するなど、クラブへの想いが強い傾向が見られます。

 「郷土愛の強さもあると思いますが、多くのパートナー企業様、サポーター、関係者のみなさまの支えで創立し、オーナー企業を持たないクラブでもあり、クラブを支える大きくしていくためには先ず、様々な目に見える形でパートナー企業様へ貢献し、自らクラブを支えていくという実践行動、クラブ創立からその想いをずっと持ち続けている印象があります」

――先ほどもお話が出ましたが、野々村社長が就任当初からあらゆる場所でクラブの現在地について、経営者の目線から情報発信を続けられている効果はいかがでしょうか?

 「私も毎週ラジオ(HBCラジオ「気分上昇ワイド ナルミッツ!!!」、STVラジオ「GO!GO!コンサドーレ」)で何を発信するのか聴いていますからね(笑)。勝負事の世界では、もちろん試合に勝つ事が一番ですが、みんなでクラブをつくる、仲間を増やしていこうというメッセージを発信し続けている効果は間違いなくあると思います。Jリーグクラブは華やかに見えるかもしれませんが裏舞台は四苦八苦の連続です。そういう部分も含めて経営者の視点と、元Jリーガーの視点の両方でリーダーシップを発揮していただいているのはクラブとして、とても大きな存在です」

――クラウドファンディングの成功しかり、サポーターにスタジアム外でも応援してもらえるのはとても心強いですね。クラブを応援することの定義が、スタジアムでの声援だけにとどまらず広がっている印象を受けます。

 「もうサポーターはクラブの営業マンだと思っていますし、サポーターによるSNSでの情報拡散はもちろん、実際にパートナー企業に対する献身性、日々、日常生活の購買行動などは目を見張るものがあります。そして、本当に驚くべき行動は、実際の事例ですが、新規パートナー契約を締結した企業様の店舗にサポーターが出向き、そのスタッフの方々へパートナー締結したことの感謝を直接述べに出た行動です。その一部始終を新規パートナー企業様から報告をいただいたときは、本当にコンサドーレとしての誇りとロイヤルティの高さを感じた瞬間でした」

――北海道コンサドーレ札幌の主要株主に「コンサドーレサポーターズ持株会」がいるという点からも、サポーターのクラブを支える意思を知ることができます。

 「以前は(コンサドーレサポーターズ持株会が)筆頭株主でしたし、サポーターの想いが形になった1つの事例だと思います。我々のサポーターは本当にクラブを支えるという意識が強いです。良い時も苦しい時も日々、クラブを鼓舞するような応援メッセ―ジ(お問合せ)をいただくことが日常的にあります。また、クラブの考えを理解してくれていると感じる行動が多く、最もパートナー契約締結の確度を高くする“ロイヤルティの高さ”を示す提案資料があります」

――では、最後にサポーターのみなさんにメッセージをいただけますか?

 「また、スタジアムであのサポーターのみなさまの大声援を見聞きできることを楽しみにしています。サポーターが作り出すあの雰囲気で選手を鼓舞していただき、それを楽しみにスタジアムに来場される方もいらっしゃるくらいです。私たちはコロナ前よりも良いクラブになろうと努力しております。地域に根ざし、必要とされるクラブになるためには、サポーター、多くの仲間、関係者のみなさまの支えが必要です。この先の未来も北海道コンサドーレ札幌を応援し続けていただけるよう我々も全力で頑張りますので、引き続きもご声援をよろしくお願いします」

Photos: Getty Images

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Profile

玉利 剛一

1984年生まれ、大阪府出身。関西学院大学卒業後、スカパーJSAT株式会社入社。コンテンツプロモーションやJリーグオンデマンドアプリの開発・運用等を担当。その後、筑波大学大学院でスポーツ社会学領域の修士号を取得。2019年よりフットボリスタ編集部所属。ビジネス関連のテーマを中心に取材・執筆を行っている。サポーター目線をコンセプトとしたブログ「ロスタイムは7分です。」も運営。ツイッターID:@7additinaltime

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