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フリーペーパーでアウェイサポをおもてなし。柏レイソルで、ラボで、繋がる人の輪

2020.06.09

2018年5月に創設されたフットボリスタのオンラインサロンフットボリスタ・ラボ」。国外のプロクラブで指導経験を持つコーチに部活動顧問といった指導者から、サッカーを生業にこそしていないものの人一倍の情熱を注いでいる社会人大学生、現役高校生まで、様々なバックグラウンドを持つメンバーたちが日々、サッカーについて学び合い交流を深めている。この連載では、そんなバラエティに富んだラボメンの素顔とラボ内での活動、“革命”の模様を紹介していく。

今回は、柏レイソルの試合に来るアウェイサポーター向けに柏の街を紹介するフリーペーパー『柏でよりみち アディショナルタイムズ』の運営メンバー、下高原充子(しもたかはらあつこ)さん。ラボでも積極的にイベントに参加している彼女に、サッカーに関わる活動の面白さについて聞いた。

地域コミュニティからフリーペーパー活動へ


──まずは自己紹介からお願いします。

 「出身が千葉県の柏市です。ただ中高は都内で、大学は大阪でした。社会人初期も神奈川県内にいたので、地元に戻るまではあまり柏に縁もなく生きてきました。柏レイソルのサポーターとしては2013年くらいから通して見るようになって、7シーズン目ですかね」


──そもそもサッカーを好きになったきっかけは何だったんですか?

 「最初に好きになったのは中3で、99年にレイソルがナビスコカップ(現ルヴァンカップ)を獲ったのをテレビで見ていて、そこから結果を追うようになりました。あとは高3の時に日韓W杯があったので、代表を見て、女子校だったのでみんなでキャッキャ言ったりしていました。大学ではサッカーから離れていたんですが、地元に帰ってきた2011年にレイソルがJ1で優勝争いをしていたんですね。その翌シーズンの試合を10年ぶりくらいに見に行ったら面白くて、2013シーズンから真面目に見るようになりました。最初はホームを年5、6試合くらい見ていました」

2011シーズン、J2から昇格した柏はJ1の舞台でも優勝争いを牽引。第29節から首位の座を守り続け、史上初となるJ2&J1連続優勝を達成した


──そこから今みたいなアウェイ戦にも行くようなガチサポになったのはなぜなんですか?(笑)

 「やばいサポーターになってしまったきっかけは(笑)、地元との関わりが薄かったこともあって友だちもいないしカフェめぐりでもしてみるかと思って、ある時適当に行ったカフェがコミュニティカフェだったんです。そこで地元の知り合いができ始めて、その中にレイソルサポーターも何人かいて、そこから一緒にアウェイに行ったりするようになりました」


──コミュニティカフェがきっかけだったんですね。

 「そこでの知り合いの中になぜかガンバサポーターがいて、それが今やっているフリーペーパーの編集長なんです。その人がある時に日立台のアウェイがいろいろと不便みたいなことをFacebookに書き込んでいたんですね」


──どういう面でアウェイがいろいろと不便なんですか?

 「過去いろいろありまして、ホーム側とアウェイ側は完全隔離で、再入場禁止なんです。屋根もなくて、雨が降ったら雨を避ける場所はトイレしかないらしいんですよね。しかも立ち見。あとアクセス面でも、駅からスタジアムまで歩いて20分くらいなんですが、住宅街を突っ切るから意外と迷うらしいです。帰りも、アウェイ遠征の醍醐味って地元の食べ物だと思うんですが、何食べたらいいかわからないから結局チェーン店の居酒屋で打ち上げして帰るみたいなパターンが多かったらしくて。編集長は本業がフリーランスのライターで、まちづくり系の冊子にも関わっているので、地元の良いものが知られずにスルーされるのはもったいないと考えて何とかしたい、という構想を聞いたのが2015年夏くらいですね。それで『頑張ってくださいね、応援してます』って雑に答えていたんですが、いつの間にか自分も参加させられていたっていう(笑)」


──「あの時、賛成してくれたじゃん」みたいな感じで(笑)。それがフリーペーパーを始めるきっかけだったんですね。

 「そこからなんとなく参加し始めて、2016年の開幕戦で『柏でよりみち アディショナルタイムズ』として創刊しました」


──最初は何人くらいで始まったんですか?

 「コアメンバーが5人ですね。あとはスポット的に配布に参加してくれる人とか含めたら10人くらいです」


─下高原さんの役割としては?

 「私は広報的な役割と、あとはスケジュール管理ですね。配布日から締め切りや作業開始タイミングを逆算して計画して、あとは記事を書いてくれる人の募集の告知タイミングを管理したりしています。毎日、日程管理を見ています」


──それってみなさんボランティアでやられているんですか?

 「そうですね」


──基本はアウェイの人に配布しているんですか?見ただけだとわからなくないですか?

 「普通の服を着ていても首元からユニが見えていたりするので結構わかります(笑)。あと、アウェイだけでなくホームの人にもバリバリ渡してますね」

『柏でよりみち アディショナルタイムズ』を配る下高原さん。スケジュール管理や広報活動だけでなく配布も行っている


──反応はどうですか?

 「Twitterの告知を見て来ましたって直接言ってくださる方もいらっしゃるし、写真を撮ってネットで感想をつぶやいてくれたりする人もいますね。大体がありがたい反応ですね」


──記事を書かれている人はどうやって選んでいるんですか?

 「『ぼくのかんがえたさいきょうのスタメン!!』というコーナーは、基本アウェイサポーターを編集部のメンバーのツテで探し出すか、見つからなかったらTwitterで公募しますね。あと、その対戦相手のサポーターの次のアウェイのコーナーも毎回載せています。東京ヴェルディ戦のペーパーであれば、ヴェルディの次のアウェイのスタジアムの紹介を載せるっていう」


──すごい。徹底的に相手チームサポーター目線なんですね。

 「あとはフリーコラムのコーナーもあって、対戦相手のサポーターさんに書いてもらったり、他のJクラブサポーターが作っているフリーペーパーとコラボをすることもあります。新潟号では新潟サポさんのフリーペーパーの編集長に書いていただきました」

アルビレックス新潟のサポーターが有志で作成・配布している『AlbiWAY』とのコラボレーションでは、紙面が特別仕様に


──フリーペーパー活動を通して新しい出会いもあったんじゃないですか?

 「柏ホームの日立台にチケットを売りに来たえとみほ(栃木SC取締役の江藤美帆)さんにお会いしました。7月のレイソルが翌週アウェイ栃木というタイミングで、えとみほさんたち栃木SCのスタッフさんが来られて、『アウェイ栃木に来てくださいね』ってチケットを手売りされていたんです。あとは4月の日立台でのホームの栃木SC戦の時にもご挨拶させていただいてフリーペーパーを渡しました。『すごい』って言っていただいて、めっちゃテンション上がりました(笑)」

リアルでの接点が生まれる場所


──下高原さんはJユニ女子会のメンバーでもありますが、Jリーグの女子サポーターって一見するとフットボリスタ・ラボと縁遠いですよね。入ろうと思われたきっかけは何だったんですか?

 「大学が社会学専攻だったんですが、スポーツネタで卒論を書くくらいには好きだったんですよね。大学は空手部だったんですけど、卒論を書いていて、どうもスポーツを実際にやるより、スポーツについて考える方が好きだったっていうのがありました。あとは2018年の夏に出たわっきー(ラボメンバーの脇真一郎)さんの『酷暑サッカーはお金がかかる』っていうWEB記事を見て、『ボリスタってこういうことをやってるんだ』と思ったのが、最初に興味を持ったきっかけですね」


──入った後で印象が変わったりしましたか?

 「元はゴリゴリの戦術を語りたい人たちが集う場所なのかなという印象がありました。確かにそれは間違っていないんですけど、どちらかというと人が繋がる場として機能してるのかなという印象を受けました。ラボのイベントを通じて、ネットで個々に記事を書いていた戦術ブロガー同士がリアルで接点ができたり。あとはそれぞれの好きな分野でやりたいことをやっている人もいれば、いわゆるROM専の人たちも心地よく見ていられる空間だなと思います」


──下高原さんは指導者系のイベントとかにも幅広く来ていただいていて、正直意外な部分もありました。どうして参加されているんですか?

 「そこに行かないと絶対に聞けない話だからですかね。ラボに入ってリアルイベントに行かないと絶対に知らないし知ろうともしない世界があるので、そういうのをいろいろ見てみたいなと」


──実際に参加してみてどうでしたか?

 「平野さんの練習メニューを考えるイベントで、私がプレゼンをやったのは驚きだったんですけど(笑)。でも、参加してみて、周りの指導者の人がメモをしたり反応するポイントとかがあって、それを半分観察する感じで見るのがすごい楽しいです」


──それは面白い視点ですね。ラボの西軍(西日本メンバー)のフットサルにも参加されていましたよね。

 「レノファ山口サポのジェイさんに、オルンガはパワハラだって言われました(笑)。日立台での山口戦でハットトリックを決めたので。西軍はリアルでのイベントを自主的に開催していて、あのパワーはすごいなと思います。普段絶対に会わないような人と会ってワーワーしゃべったりできるのが楽しいなと思いました」

『柏でよりみち アディショナルタイムズ』を机に広げながら語ってくれた下高原さん


──下高原さんがやっているフリーペーパー制作の活動にもそういう面はありますよね。

 「そうですね。私もともとは引きこもり体質なんです。でも大学の時は250ccのバイクに乗って、当時は万博記念競技場の近所を毎日走っていた時期もあったり、あとは急に1カ月くらい旅に出たり、好きなことになるとスイッチが入っちゃうんですよね」


──全然インドアじゃないじゃないですか(笑)。

 「そうですね。サッカーと旅行は例外ですね」


──今のJサポ生活はその2つをばっちり満たしていますね(笑)。最後になりますが、今後ラボでやりたいことはありますか?

 「今はWEBで書いている人が多いですけど、紙に書くとまた違った体験になると思うので、ラボメンで紙の制作物を作れたら面白そうだなと思います」


── 確かに、そうやってアウトプットの形があるのはすごく良いですよね。フットボリスタ・ラボでもぜひ考えてみます。今後も引き続きよろしくお願いします!

フットボリスタ・ラボとは?

フットボリスタ主催のコミュニティ。目的は2つ。1つは編集部、プロの書き手、読者が垣根なく議論できる「サロン空間を作ること」、もう1つはそこで生まれた知見で「新しい発想のコンテンツを作ること」。日常的な意見交換はもちろん、ゲストを招いてのラボメン限定リアルイベント開催などを通して海外と日本、ネット空間と現場、サッカー村と他分野の専門家――断絶している2つを繋ぐ架け橋を目指しています。

フットボリスタ・ラボ20期生 募集決定!

フットボリスタ・ラボ20期生の募集が決定しました。

募集開始日時: 6月8日(月)12:00 ~(定員到達次第、受付終了)

募集人数:若干名

その他、入会手続きやサービス内容など詳細は下記のページをご覧ください。

https://www.footballista.jp/labo

皆様のご応募を心よりお待ち致しております。


Edition: Mirano Yokobori (footballista Lab), Baku Horimoto (footballista Lab)

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フットボリスタ・ラボ文化

Profile

浅野 賀一

1980年、北海道釧路市生まれ。3年半のサラリーマン生活を経て、2005年からフリーランス活動を開始。2006年10月から海外サッカー専門誌『footballista』の創刊メンバーとして加わり、2015年8月から編集長を務める。西部謙司氏との共著に『戦術に関してはこの本が最高峰』(東邦出版)がある。

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