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強豪ナシオナル戦で何を魅せる?指揮官&背番号10の言葉に感じた大宮の「リバプール化」の可能性

2020.01.31

さいたまシティカップ2020#2

202029日(日)に開催される「さいたまシティカップ2020」。2017年以来3年ぶりとなる今回、11回目にして初となる南米勢が参戦。ウルグアイのナシオナル・デ・フットボールが来日し、大宮アルディージャとNACK5スタジアム大宮で激突する。

前回のナシオナル紹介に続き、今回は迎え撃つ大宮アルディージャに注目。チームを指揮する高木琢也監督と、背番号10を背負う黒川淳史選手に話を聞いた。

自らの代名詞とも言える3バックを志向するセリエAのアタランタや、強烈なプレッシングが特徴の「ストーミング」の代表格リバプールなどの試合をチェックしているという高木監督が、引き分けが多かった昨季からの変化として掲げるのが「ゲームコントロール」。これは現在、プレミアリーグで独走態勢を築くリバプールの変化と重なる。そして、そのチームで主軸を担うことが期待される黒川選手は「ポゼッションサッカーの経験はたくさんあるので、最大限に生かしたい」と、新スタイルへの適応に自信を見せる。

昨季ウルグアイ国内王者のナシオナル相手に、プレッシングとゲームコントロールの融合を目指す新生アルディージャがどんな戦いぶりを見せてくれるのか、注目したい。

高木監督「強豪相手に、いかにボールを運ぶことができるか見てほしい」

――本日はお忙しい中、お時間いただきありがとうございます。さっそくになりますが、海外、それも南米の強豪と対戦する機会というのは、普段なかなかありません。どのようなモチベーションで、この一戦に臨みたいと思っているか、聞かせてください。

 「まずはやはり勝つこと、勝利するというメンタリティをもって臨みたいというのが一番です。プレシーズンマッチにはなりますので(結果を残すことが)優先ではありませんが、プレシーズンの間にどれだけのことを仕上げてきたのかを測る物差しにもなってくるでしょう。チームとしては、私自身としてはそういうことを考えています」


――対戦するのはウルグアイの国内王者ナシオナル。ウルグアイサッカーと言えば“ガーラ・チャルーア”(闘争心)という言葉に象徴される、心身両面のインテンシティの高さが特徴的です。その圧力を封じることができれば、チームにとって大きな自信になるのではないでしょうか?

「国際ゲーム、外国のチームとのプレーをどれだけの選手が経験したことがあるのかというところを含めちょっとわからない、未知の部分もあります。ただ、プレーのインテンシティに関しては近年、当たり前に(なくてはならないものに)なっていますし、私自身このチームに、選手たちに強く求めているものでもありますので、遺憾なく発揮してほしいなと。

 球際の強さであったりパワー的なスプリントであったりといった要素で、しっかりとついていけるようにしてもらいたいですし、逆に、そういう要素で相手に強い印象を与えられるようにできればと考えています」


――アルディージャがこの試合、そして今シーズン目指していくスタイルについても聞かせてください。昨シーズン志向していた前線からの積極的なプレッシングは今シーズンも継続していくお考えでしょうか?

 「そうですね。それは意識してやりたいと思っています」


――オフの期間にはプレミアリーグの視察に行かれたとうかがいました。インスピレーションを得られる部分はありましたか?

 「今回、私が現地で見たのはトッテナム対チェルシーとリーズの試合でした。前者はスパーズ(トッテナムの愛称)のモウリーニョが[4-3-3]でチェルシーのランパードが[3-4-3]という組み合わせだったんですが、攻撃と守備、それぞれの局面でどんなところを意識してプレーしているのかというのを俯瞰で、全体像を見ることができたのは良かったです」


――プレミアリーグで言えば、プレス戦術志向の代表格がリバプールです。彼らは昨シーズンまで引き分けが多くリーグタイトルを逃していたものの、今シーズンはポゼッションの質を向上させ驚異的なペースで勝ち点を重ねています。新体制発表会で「ゲームコントロール」をチームの課題として挙げられていた高木監督にとって、モデルとなる部分もあるのではないかと感じましたがいかがでしょうか?

 「リバプールの試合は普段から見ることもあるのですが、ボールを繋ぐことで(攻撃の)時間が増えた、という意味合いのものではないと感じます。例えば、テンポ良くボールを動かしていく中で、同サイドがダメだったらサイドを変えてスピードアップしようであったり、(ボールを繋いで)相手のハーフコートに入っていってから狭いスペースを攻略するコンビネーションであったり。そういう決め事の部分というのを(参考として)見ています」


――昨シーズンは3バックをメインに戦っていましたが、今シーズンは4バックにもトライするという報道もありました。

 「そうですね。特にJ2の場合、勝ち点という意味でもそうですが拮抗する試合が増えています。そうした状況の中で、システムを変えることで自然と戦術も変わったり、相手とのマッチアップの噛み合わせが変わったりしてきますので、それ(4バック)にはトライしていきたいと思っています。

 4バックにすることで、バランス良く攻撃もできるし守備もできるという部分はあると思います。(ゲームの中で)3枚に変えることもできますし、立ち位置を少し変えるだけで変化をつけることができます。それぞれのウィークポイントとストロングポイントをしっかりわかっていれば、うまく使い分けることができますからね。

 私たちも(昨季までのリバプール同様)引き分けが多かったので、混戦の状況の中から抜け出すために、少しでも多くの勝ち点を得るためにも、システムを変えるということにも柔軟に取り組んでいかなければいけないなと思っています」


――この試合でファンの方に見せたい、見てもらいたいポイントを教えてください。

 「新しい選手が12人加わりましたので、昨シーズンまで取り組んできたベースの中にその選手たちの個性をうまく組み込んでいきたいと思っています。(新戦力の中には)速い選手もいますが、そうした選手たちをうまく使いながら遅攻もうまく使っていきたいです。

 今までは後ろから(ゲームを)作っていく部分というのが多くありませんでしたが、(守備から攻撃へ)切り替わった局面で、相手(の陣形)が整っているか整っていないか的確に状況を判断したうえで、ボールを運ぶということがいかにできるかというところは見てもらいたいですね。

 一番は、新しい選手が加わって何ができるかというところを見てもらえればいいなと思います。スタイルとまでは言えませんが、今までとは違う感覚の中でゲームをやらなくてはいけません。それをぜひ見てもらいたいです」


――それでは最後にあらためて、さいたまシティカップ2020に向けての意気込みと、来る新シーズンに向けた抱負をお聞かせください。

 「このシーズン開幕前の大事な時期に、こうした海外の強豪と試合ができるせっかくの機会ですから、うまく(チームの強化に)生かしていきたいです。選手たちには単なるプレシーズンマッチの1つではなく、しっかりと共通意識を持ってやってもらいたいですし、チームとして、個人としての成長の一手になるようなゲームにしたいと思っています。

 新シーズンに向けてはもちろん、J2で優勝して昇格することがこのチームの最大の目標でもありますし、私自身としても勝負の年にしたい。クラブとして3年目を迎えるJ2でのシーズンですので、何としてもステップアップしなければならない。そういう意味でも、勝負をかけてやっていきたいと思っています」

黒川選手「ポゼッションサッカーの経験を最大限生かしたい」

――新体制発表会で背番号10をつけることが発表され、シーズン2桁得点を目標として宣言。アカデミー出身者として初めて10番を背負うこともあり、相当な期待を背負って臨むシーズンになるかと思います。2020シーズンに向けた意気込みをまずは聞かせてください。

 「アルディージャではまだ、自分としては結果を残せていないという現状があります。僕がアカデミー(出身選手として)初の10番を背負うということで、今後アカデミーの選手たちがトップチームに上がってきて活躍するための道を切り拓いていかないといけないと思っていますし、アカデミー出身の選手が活躍するということが、強いチームになるためのカギになってくると思うので、その土台を作れるように、結果として示していきたいと思っています」


――10番だと言われた時、率直にどう思われましたか?

 「自分から(10番をつけたいと)言ったんです、10番が好きだったので。ですからうれしかったですね」


――今回のさいたまシティカップ2020では、普段アルディージャの試合を見ていない方もご覧になります。黒川淳史とはどんな選手か、アピールしてもらえますか?

 「僕の特徴はドリブルだったり、ゴール前で相手に差をつけるプレー、逆を取ってスルーパスだったりゴールだったり。ゴールに絡むプレーが得意なので、そこが一番の特徴です。それだけじゃなく、チームへの献身性という部分は常に意識してプレーしています」


――好きな選手はアンドレス・イニエスタ選手だとうかがいました。今日本でプレーしていますが、プレーを見られたり参考にしたりしているんでしょうか?

 「もうずっと、中学性の時から参考にしています。毎日YouTubeで動画を見つけて、ドリブルなどを真似したりしています」


――海外のトッププレーヤーのプレーや試合を参考にすることも多いのでしょうか?

 「そうですね。海外の試合はけっこう見るので、試合で見つけたいいプレーを練習したりして真似しています」


――よく見られるリーグやチームはどこでしょうか?

 「中心的に見ているのはバルセロナです、スペインが好きなので。バルセロナの試合はほぼ見ています。最近はプレミアリーグの試合もよく見るようになっています」


――よく見られているというバルセロナはポゼッションスタイルですが、昨シーズンのアルディージャはプレッシングが特徴のチームでした。ご自身がプレーするイメージはできていますか?

 「去年、水戸(ホーリーホック)では2トップでしたが1.5列目くらいのポジションでやっていました。大宮では2シャドーの位置に当たると思います。そこでの自分のプレーのイメージはたくさんあるので、楽しみです」


――高木監督は今年4バックにもトライしたいと話されていました。その場合にプレーしたいポジションは?

 「僕自身は水戸でサイドもやりましたしFWもやりました。真ん中もアカデミー時代からずっとやっていてどのポジションでもできるので、与えられたポジションで100%の力を出す自信があります」


――また、高木監督は今シーズンの課題として「ゲームコントロール」を挙げています。具体的には、ボールを繋ぐプレーを増やしていきたいと。そうしたプレーに自分を適応させていくイメージはできていますか?

 「そうですね。ハイプレスというのは軸として継続していかなければいけないと思います。リバプール(の試合)を見ていても、プレスがあるからこそ相手陣内でボールを奪って、余裕を持ってボールを動かせていると思うので。僕自身、ユースの時にはポゼッションサッカーをやっていて経験はたくさんあるのでそれを最大限に生かしつつ、周りとのコミュニケーションも大事になってくるので少しでも突き詰めていければと思っています」


――SNSで、ライフキネティックに取り組まれているところを拝見しました。選手の認知・判断を鍛えることの重要性に近年注目が集まっていますが、どういう経緯で取り入れられたのでしょうか?

 「大宮アルディージャJr.ユースの時のチームメイトが去年、ライフキネティックの資格を取ったと聞いたんです。その時はどんなものか知らなかったんですが、いろいろ説明を受けてやってみようかなと」


――効果を実感する部分はありますか?

 「まだまだ改善する部分はたくさんありますが、体がスムーズに動くようになったり、ボールの見え方というのがちょっとずつ変わってきたりしているのかなというのが、感覚的な部分ですがあります。

 日本だと大分トリニータがチームで取り入れていたり、もともと(現リバプールの)クロップ監督がドルトムント時代から取り入れていたりするので、プレーの改善に役立つと思ってこれからも続けていくつもりです」


――今回、昨年ウルグアイ国内王者になったナシオナルと戦います。こういうチームと対戦する機会はなかなかないと思いますが、どのようなモチベーションをもってこの一戦に臨みましょうか?

 「こういう海外の強豪クラブというのは、日本でずっとやっているとなかなか対戦する機会がないですよね。プレシーズンマッチにはなりますが、この経験を無駄にはできません。自分が現状どれくらいやれるのかを対戦して肌で感じてみたいと思います。スタメンの地位をつかめるようにキャンプを通してしっかりアピールして、この試合に出られるようにしていきたいです」


――黒川選手は年代別代表で海外のチームとの試合を経験されています。南米サッカーの印象を聞かせてください。

 「ヨーロッパのチームと比較すると、戦術的な部分よりも個人の1対1が強くて、球際の当たりが激しいイメージです。ボールに対する執着心とか、目の前の相手に負けない気持ちの強さはすごく感じますし、そこが一番大切な部分だと思うので見習いたいです。自分が出た時にそこで負けてはいけないですし、逆に上回ることができれば、圧倒できるんじゃないかと思っています」


――ウルグアイといえばナシオナルのOBであるルイス・スアレスをはじめ、エディンソン・カバーニやディエゴ・フォルランなど強力なFWを輩出しています。同じアタッカーとして、参考にする部分はありますか?

 「スアレスはバルサの試合でよく見ていますけど、やっぱり球際のところとか凄くこだわっていると思います。あとは、常に相手の嫌がることを考えていますよね。ポジション取り一つにしても、サボっているように見えても対戦相手からしたら『嫌なんだろうな』っていう位置取りをしていたりしてすごく参考になっているので、そういうプレーを肌で感じながら、盗めたらいいなと思います」


――ナシオナルの最終ラインには、現ウルグアイ代表で昨年夏には欧州行きが噂された左SBマティアス・ビーニャが所属しています。ポジション的にマッチアップする可能性もあり、そんな選手相手にインパクトを残せたら大きいと思いますが?

 「もちろんどの試合も、1試合1試合が大事ですけど、ある1試合の1つの1対1である意味サッカー人生、自分の人生が変わっていく立場にいるので、どんどんチャレンジしていきたいなと思います」


――今年は五輪イヤーです。五輪代表入りや、アルディージャで活躍して将来的に海外クラブでプレーしたいという想いはありますか?

 「そうですね。五輪代表はチャンスがあれば入りたいです。先ほども話したようにスペインが好きなので、行くならスペインでプレーしたいと思っています」


――最後にあらためて、さいたまシティカップ2020に向けた意気込みと、そして来る新シーズンに向けた抱負を聞かせてください。

 「なかなかできない海外クラブとの対戦ですが、今年1年どういう勢いを持って戦っていくのかを示していくことが大事になっていきますし、流れをつかんでリーグ戦に入っていけば結果もついてくるんじゃないかと思いますので、まずはこの試合に出られるよう、キャンプからしっかりアピールしていきたいです。

 チームとしてはJ2優勝してJ1昇格するというのが絶対条件、成し遂げなければいけないタスクだと思っています。その中で自分が2桁以上得点を取っていくということが、昇格するためにも大事になってくると思うので、自分の結果でチームを変えていけるようなプレーを見せられればと思っています」


■第11回さいたまシティカップ 2020  開催概要

大宮アルディージャ vs クラブ・ナシオナル・デ・フットボール

日時
2020年2月9日(日)13時
会場
NACK5スタジアム大宮

※チケットの販売状況等、詳細は大会特設ページをご確認ください

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さいたまシティカップフットバリスタ大宮アルディージャ

Profile

久保 佑一郎

1986年生まれ。愛媛県出身。友人の勧めで手に取った週刊footballistaに魅せられ、2010年南アフリカW杯後にアルバイトとして編集部の門を叩く。エディタースクールやライター歴はなく、footballistaで一から編集のイロハを学んだ。現在はweb副編集長を担当。