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ティム・ケイヒル。豪州の英雄は代表去ってもサッカー小僧のまま

2019.01.08

名優たちの“セカンドライフ”

欧州のトップリーグで輝かしい実績を残した名優たちが、新たな挑戦の場として欧州以外の地域へと旅立つケースが増えている。しかし、そのチャレンジの様子はなかなか伝わってこない。そんな彼らの、新天地での近況にスポットライトを当てる。

from INDIA
TIM CAHILL
ティム・ケイヒル

 昨年11月20日、一人のレジェンドが代表ラストマッチに臨んだ。サッカールーズが誇る永遠のエース、ティム・ケイヒルである。ロシアでの自身4度目となるW杯出場を最後に、長かった代表生活に区切りをつけた。引退試合と銘打たれたこの日、ラスト数分間のみだがピッチに立ってファンに直接「ありがとうオーストラリア」と想いを伝え、涙ながらに別れを告げたのだ。

 W杯で通算5得点を決め、アジアカップでは優勝も経験。クラブレベルではエバートンの英雄としてプレミアリーグで活躍し、その後はMLSや中国スーパーリーグ、そしていろいろと揉めごともあったが母国のAリーグでもプレーし、昨年1月から半年間はプロデビューを果たした思い出深いクラブであるミルウォール(イングランド2部)への“凱旋復帰”も果たした。もう思い残すことはないのでは? 普通ならそう考えるほど、盛りだくさんのキャリアを歩んだ。ところが、永遠のサッカー小僧であるこの男、心から愛したグリーンとゴールドの代表ユニフォームを脱いでも、まだ心に灯った情熱の火が消えていないようなのである。昨年9月、ケイヒルはインド・スーパーリーグ(ISL)のジャムシェードプルに加入。新天地でまだまだ現役を続けるつもりなのだ。

新興クラブにビッグネームが来た!

 「クラブと話して、そのプロフェッショナリズムや、達成しようとしている目標に感銘を受けた。自分のリーダーシップと経験を生かして、ピッチ内外でチームを助けられると思う。チームを成長させ、若い選手たちのプレーに自信を与えていきたい」

 契約に際して地元メディアにそうコメントした新たなヒーローを、鉄鉱業が盛んな街を本拠とすることから「メン・オブ・スティール」(鉄の男たち)と呼ばれるクラブの熱狂的なサポーターは大歓迎。昨季からISLに新規参入したクラブは初年度5位で上位4チームによる優勝プレーオフ進出を惜しくも逃したが、今季はケイヒル効果もあってか、開幕9試合でわずか1敗と好スタートを切った。

 彼自身もデビューから4戦目、第5節ケーララ・ブラスターズ戦で初ゴールをゲットしている。CKの場面で、マークについた相手を巧みに外してタイミング良く飛び込み点で合わせたダイビングヘッドは、神出鬼没にして大胆不敵な彼の真骨頂。ゴールネットを揺らした後はもちろん、コーナーフラッグに駆け寄ってのシャドーボクシング・スタイルだ。“ケイヒル印”のゴール&セレブレーションには、ホームスタジアムに集まった2万人を超えるファンも大興奮だったようだ。

記念すべきISL初ゴールの動画

 このように、サポーターの熱狂度は非常に高い。とはいえ、ジャムシェードプルはまだリーグ参入2年目の新興クラブである。何人かスペイン人選手が在籍しているが、いわゆる大物選手はケイヒルが初めて。プレーによる貢献はもちろん、オフ・ザ・ピッチでの発信力も含めて懸かる期待は想像以上に大きい。それでも、ケイヒルはそれを受け入れ「ISLにもっと注目を集めたいし、僕はインドの選手たちの良いお手本になりたいんだ」と熱く語る。

 12月6日で39歳になったオーストラリアの英雄は、キャリアにおける最後の大仕事をインドの地でやり遂げようと、意欲と使命感にあふれた日々を過ごしている。

Photos: Getty Images

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オーストラリア代表ジャムシェードプルティム・ケイヒル

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大谷 駿