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アリソン・ベッカー、8失点をゼロに変える男。世界最高のGKがリバプールへ

2018.09.27


昨季のCL決勝で苦い経験をしたリバプールが、ブッフォン超えの7250万ユーロ(2年前のローマ移籍時は800万ユーロ)を躊躇なく投じ獲得した新守護神アリソン。04-05以来のCL優勝、そして89-90以来のリーグ制覇へ、本気で燃えるレッズのキーマンとなる。

ALISSON Becker
アリソン・ベッカー
リバプール GK
1992.10.2(25歳)191cm/91kg BRAZIL

 本当に必要な選手なら、交渉相手の「言い値」を呑むことも辞さない。近年のリバプールが見せるストロングスタイルの買い物術を象徴するような補強だった。ローマに支払った移籍金は約95億円。GKの歴代2番目の額だ。それでもクロップは言う。

 「確かに大金だが、クレイジーな額ってわけじゃないだろう? 獲得できる中で最高の選手を獲るのが我われの仕事だ」

 教え子思いの指揮官は「CL決勝で起こったこととは無関係」と言い張るし、カリウスが決して悪いGKだとも思わない。だが、重圧に屈した彼はプレシーズンマッチでもミスを犯すなどすっかり自信を失ってしまった。そんな中で「世界最高のGKの1人」とサインするチャンスが訪れたのだから、ボスが迷いなくこれに飛びついたのも必然だ。

 ここ数年、レッズを愛するクラブOBの解説者キャラガーが、ミニョレやカリウスの失点シーンを見てよくこんなことを言っていた。「ミスとは言えないが、優勝を狙うチームのGKなら止めるべきだった」と。失点を「0→1」にするようなミスが少ないことも大事だが、強いチームの守護神はビッグプレーで「1」を「0」に変えられる存在であるべき。そういう主張だ。

 この点で、アリソンほど適任者はいない。『Opta』によれば、昨季のセリエAで彼が直面した枠内シュートの数から算出すると、平均的なGKなら「36.3」失点を喫しているはずだという。だが、実際の失点数は「28」。この8ゴールの差は、紙一重の優勝争いで十分にモノを言う数字である。

 また、昨季のセーブ率はセリエA最高値の「79.3%」。欧州5大リーグで見ても、アトレティコ・マドリーのオブラク(82.7%)、マンチェスター・ユナイテッドのデ・ヘア(80.3%)に次ぐ3位だった(ちなみにカリウスは68.9%)。こうしたセービング能力の高さに加えて、マンチェスター・シティの同胞エデルソンに負けず劣らずロングキックやパスの配給も申し分ない。ボックスを飛び出してプレーする勇気や自信たっぷりのボールコントロールもたびたび披露し、それでいて向こう見ずな印象を与えない。そんなプレーぶりを、ローマのディ・フランチェスコ監督は「未来のGK」と表現し、ローマのコーチは「GK界のメッシ」と呼び、そしてブラジル時代のコーチは「完璧なGK」と評する。

 ゴールマウスの番人をブラボからエデルソンに代えたシティが大きく進化したように、リバプールもまた、最後尾のアップグレードを飛躍のきっかけとするかもしれない。世界最高額のGKを手に入れて“ミッシング・ピース”は埋まった。もう弱点だなんて言わせない。新シーズンのリバプールにとって、GKは紛れもない強みになる。


Photo: Getty Images

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大谷 駿