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子供の成長と練習量は比例しない。「勝つために休む」イタリアの流儀

2018.08.15

フランチェスコ・マリーノ(エンポリFC理学療法士)インタビュー

イタリアの古都フィレンツェで14歳のサッカー少年の“息子”を育てながら、新刊『カルチョの休日 イタリアの少年サッカーは蹴球3日でグングン伸びる』(内外出版社)を発表したジャーナリスト宮崎隆司氏が、育成で名高いエンポリのU-17専属フィジオセラピスト(理学療法士)を務めるフランチェスコ・マリーノに、「育成年代に必要な負荷と休息、コンディショニングの基本」を聞いたインタビューをお届けする。イタリアのフィジオセラピストの仕事の流儀は、日本の育成指導者に新鮮な視点を与えてくれるかもしれない。
※このインタビューは2018年4月17日、エンポリの練習場モンテボーロで行われた。


休息こそ最高の練習である

 休息こそ最高の練習である――

 これはイタリアの育成年代を取材する際によく聞かれる言葉である。「休日返上」や「朝練」が推奨されがちな日本のスポーツ指導とは真逆の考え方を採るイタリアでは、1回90分の平日練習が2日、週末にホーム&アウェイの方式のリーグ戦が1日、つまり“蹴球3日”が一般的な街クラブの活動の基本だ。“蹴球6日”で“朝練”も“居残り特訓”もいとわない多くの日本の部活チームと比較すれば、イタリアの育成の活動ペースは異なる時間軸を持つ別世界の現象に見えるかもしれない。

 そして、休みの多さは一般の街クラブに限ったことではない。アントニオ・ディ・ナターレ(元イタリア代表)やビンチェンツォ・モンテッラ(元イタリア代表)、ダニエレ・ルガーニ(現ユベントス/イタリア代表)、ロレンツォ・トネッリ(現ナポリ)、リッカルド・サポナーラ(現フィオレンティーナ)らを輩出した育成の名門エンポリでは、例えばU-17チームの活動ペースは“蹴球4日”。今年5月に行われたU-17欧州選手権決勝・オランダ戦で同点ゴールを挙げたサムエレ・リッチ(現U-18イタリア代表)もここエンポリのU-17チームに所属し、今季プリマベーラ(U-19)への昇格が決まった選手だ。

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「お願い、あと5分!」と子どもがせがむエンポリの“楽しい練習”


――まずは、フィジオセラピスト(理学療法士)の役割について、簡単に教えてください。

 「トレーニングで選手たちに負荷をかける“アクセル役”がフィジカルトレーナーなら、そのトレーニングが行き過ぎないよう制限をかける“ブレーキ役”を担うのが我われフィジオセラピストです。例えば、『プラス10%の負荷』をかけることを目的としたトレーニングを行う場合、それがプラス10%を超えようとした瞬間にストップをかけ、選手たちを故障やその他のトラブルから守ります。これがフィジオセラピストの最も大きな役割の一つと言えます」


――イタリアの育成年代では、とりわけ「休息」が重要視されます。しかし、ここエンポリの隣町にあるフィオレンティーナのU-14(日本の中学2、3年)では、子どもたちが週休1日でサッカーに打ち込んでいます。これはイタリアの育成年代の中ではかなり多い方ですよね。ただ、エンポリの育成哲学は明らかにそれとは一線を画しています。まずは両者の考え方の違いについて教えてください。

 「フィレンツェとエンポリの街の規模を単純に比較しても10対1ほどです。比較対象がミラノやローマともなれば、その差はさらに拡大します。街の規模の違いは、直接的ではないものの、つまりクラブ規模の違いとほぼ同義と言えます。規模の違いは下部組織に分配される予算とも密接に関わってきますから、私たちのように豊かではないクラブに生きる者には、初めから自ずと一つの明確な義務が課せられます。それは言うまでもなく『一つひとつの仕事にできる限りの工夫を凝らす』ということです。かつてエンポリのトップチームを率いたマウリツィオ・サッリ(現チェルシー監督)の言葉を借りるなら、「カネがないなら頭を使え」。常に“工夫の仕方”を検証・更新しながら積み重ねてきた歴史こそが、エンポリの育成哲学そのものです」


――フィオレンティーナの入団テストで落選した子どもたちが、ここエンポリにやって来るというケースも少なくありませんよね。つまり、チーム作りの時点ですでにライバルに後れを取らざるを得ないエンポリは、フィオレンティーナだけでなく、ユベントスとも同じリーグで戦わなければなりません。

 「言うまでもなく、技術レベルの差を埋めるというのは決して簡単なことではありません。それに、彼らと同じことをやっていても、差は開いていくばかりですからね。だからこそ私たちは工夫しなければならないのです。とはいえ、どれほど努力を重ねても埋めがたい差があることはまぎれもない事実です。もちろんフィオレンティーナやユベントスの指導者たちも絶えず工夫と努力を重ねているのですから。私が携わっているU-17は今季(2017-2018)も難しい戦いを余儀なくされていますよ」


――とはいえ、ホームで行われたユベントス戦では1-4と力の差を見せつけられたものの、同じくホームでのフィオレンティーナ戦は1-1。プレーの質ではむしろエンポリが上回っていました。さらに、U-16はシーズン終盤でフィオレンティーナと同率で5位につけています。エンポリU-17では、とりわけどのようなポイントに重点を置いてトレーニングを行っているのでしょうか?

 「私は一人のフィジオセラピストですから、技術や戦術について語る資格を有しません。ただ、監督やコーチ、そして選手たちを近くで見ていて常に思うのは、ここエンポリでは日々のトレーニングが最高に楽しい時間だということです。選手たちを楽しませるための工夫を監督たちがさまざまなメニューに盛り込んでいることは当然ですが、その実、指導者の側も選手と同じくらい、心の底から楽しんでいます。もちろんこの私もそうです。例えば、DF4枚と3枚のトレーニングをするにしても、ビルドアップやシュート練習をするにしても、そこには常に一定の緊張感や激しさがある一方で、必ずジョークや笑顔があります。トレーニングの締めに行われるミニゲームが終われば、選手たちは決まって監督の下へ走り寄り『お願い、あと5分!』と懇願する。それはまるで楽しい時間がずっと終わってほしくないと泣く、幼い子どものように純粋な願いです。やや抽象的な表現ですが、エンポリの下部組織は『思いっきりサッカーを楽しむ』というところに最大限の重きを置いている。私はそう思います」

エンポリU-17のスタッフ


いかに休ませるかがフィジオセラピストの技量の見せどころ


――イタリアでは、育成カテゴリーであっても練習を非公開にするクラブが少なくありません。しかし、エンポリは“完全開放”。ここでは誰もが自由に練習を見ることができますね。

 「そうですね。例えば、ある選手をこの練習場まで連れて来る役割を担うのが、その子のお爺ちゃんだとしましょう。せっかく片道1時間以上かけて来たというのに、かわいい孫がボールを追う姿を見られないことほど、気の毒なことはありません。クラブと指導者、指導者と選手、そしてクラブ全体と外部、これらすべての関係において距離が非常に近いこともまたエンポリの特徴の一つ。『クラブとは一つのファミリーである』というのが、このクラブの長く一貫した考え方ですから」


――成長期にある育成年代の子どもたちの身体をケアする上で、フィジオセラピストはどのような点に気を配っていますか?

 「先ほど 『お願い、あと5分!』と懇願する選手たちの話をしましたが、とにかくあの子たちは死ぬほどサッカーが好きで、グラウンドへ来るのが楽しみで仕方がない。だからこそ何があっても絶対に休もうとしません。その点こそが私たちフィジオセラピストが最も注意を払うべき点であり、同時に難しい点でもあります」


――要するに、いかにして“見抜く”か?

 「その通りです。多少の痛みがあっても、なかなかそれを言おうとしない子は必ずいます。むしろ彼らは痛みを必死で隠そうとさえします。こちらはすべてお見通しだというのに!(笑)。選手が抱えている違和感を見抜けないようでは、この仕事のプロとは言えません。調べればどこにどの程度の痛みがあるかも正確に把握することができますよ。ですから、一度故障があるとわかれば、あとはどうやって選手たちを説得するか。もちろんあの子たちも休むことの大切さは十分に理解しているのですが、それでもやはり『ボールを蹴りたい!』という思いが圧倒的なものですから、休ませることは割と簡単ではないんです。『わかりました。でもちょっとだけ蹴って状態を確かめてみます』などと言ってグラウンドへ行こうとするのが3、4人、いえ4、5人はいますからね(笑)」


13歳から15歳までの練習は週3日。一度の練習は90分


――エンポリでは育成年代の選手たちにとって最も適切なトレーニング時間と負荷はどの程度だと考えていますか?

 「13歳から15歳までの練習は週に3日。一度の練習は90分。最長でも100分です。そして、U-16、U-17になれば、練習は週に4日。一度の練習は同じく90分、こちらも最長で100分。トレーニング量はこれがリミットです。もちろんここに週末の試合が入りますから、これ以上の負荷は絶対に避けなければなりません。

 加えて大切なことは、適切な食事と十分な睡眠ですね。エンポリでは、必ず8時間以上の睡眠時間を確保するよう選手たちに義務付けています。そして、学校での授業を終えた時点で選手たちは監督と私たちメディカルスタッフに、その日の体調をSNSで伝えなければなりません。このやり取りを行うことによって、その日にそろう選手の数を把握できますから、監督とコーチはより無駄のないトレーニングメニューを組むことができます。

もちろんプリマベーラ(U-19)になれば練習量は少しばかり増えます。それでも、1回のトレーニングが120分を超えることは絶対にありません」


――試合と試合の間隔は?

 「基本的に中6日です。週末のリーグ戦を軸にスケジュールが組まれる以上、必然的にこの間隔になります。いずれにしても、量より質。監督はじめスタッフは、その質の中身を向上させるための努力を常に続けなくてはならないと考えています。もっとも、こうした考え方は何もエンポリに限ったことではなく、どのクラブにも共通しています。それはトレーニングの量(時間)も同じです」

【2018年4月17日(火)に行われたエンポリU-17のトレーニング】

14:45-15:00 集合・準備
15:00-15:30 ストレッチ〜自由時間(テデスカ(浮き球でのパス回しからシュートしゴールを狙うゲーム)やクロスバーゲーム、ロンドやリフティングなど、選手たちは思い思いに遊びながらウォーミングアップ。監督やコーチ陣も一緒に)
15:30-15:55 ポジション別メニュー1
15:55-16:20 ポジション・グループ別メニュー2
16:25-16:50 次節対戦相手の布陣を想定した戦術確認(4-3-3 vs 4-2-3-1 / 4-4-2 vs 3-5-2 / 3-4-3 vs 4-2-3-1など)
16:55-17:15/20 ミニゲーム(リーグ戦方式)


例:ビルドアップ GK+ DF3+MF4 vs. [4-2-3-1]の[2-3-1]


成長期の「走り込み」や「筋トレ」は害でしかない

※以下の質問は、日本の育成年代で行われている走り込み、朝練、夜遅くまでの練習、指導者によるハラスメント問題などについてあらかじめ説明した上で、適宜映像を確認してもらいながら行った。


――ところで、エンポリでは「走り込み」を行いますか?

 「私には、その『走り込む』という考え方がよくわからないのですが、とにかく長い距離をただ走るだけというようなトレーニングは、こちらでは一切ないですね。シーズン開幕前(8月下旬)などに個々のコンディションをデータとして収集する際やシーズン中の健診の一環として、20分ほどの時間を使って短い距離のダッシュを何本かさせる程度です」


――「筋トレ」についてはいかがでしょうか?

 「もちろん『筋トレ』もしません。正確に言えば、可動域や柔軟性、瞬発力や俊敏性を高めるためのトレーニングは適度に行います。ただ、いわゆる筋トレについて言えば、オフの状態からオンにするために適度な負荷をかけることはあっても、それは要するに眠っている状態の筋肉を目覚めさせることが目的になります。筋肉の量を増加させることが目的とされることはあり得ません。なぜなら、成長期の子どもたちにとって、そのような過度の負荷は“害”でしかないからです。大切なことは成長を促すことであり、無理を強いることではありません」


――それでは、子どもたちはどのようにして筋力や走力を身につけているのでしょうか。

 「サッカーに必要な筋力や走力とは、サッカーをプレーすることによって、技術や戦術眼と一緒に培われていきます。そのため私たちは、より多くプレーする、すなわち“遊ぶ”ことで必要な耐久性が培われていくと考えています。中身が濃く、質の高いトレーニングをすれば、それだけで選手たちは相当に疲労します。その疲れた筋肉や関節をさらに酷使するなど絶対にあってはならないのです。壊すだけのトレーニングを繰り返すことの意味が、残念ながら私にはわかりません。もちろん、重度のケガを負った後のリハビリのプロセスでは、落ちた筋肉を取り戻すためのトレーニングもあります。ただ、そこでも量は必要最小限でなければならない。当然、どの部位の筋肉を取り戻すかによってもトレーニングのあり方は変わってくるのです。試合で最高のパフォーマンスを発揮するという目的から逆算してメニューを組めば、答えは必然的に導き出されると思うのですが……」


「いったいどうやって睡眠時間を確保しているんですか?」


――過剰なトレーニングの弊害とは、端的にどういったことでしょう?

 「私は逆に、過剰なトレーニングを行う理由と根拠を問いたいですね。1日に10kmも走る、試合の後にペナルティとして走らせる。そのようなことが弊害とならない論理的な裏付けがあるなら、ぜひとも教えてもらいたいと思います。

 いったい何をどのように考えれば、成長期の子どもたちの身体をそこまで痛めつけることができるのか……。1日に10kmも走らせて選手の身体が壊れたとして、それを課した監督やトレーナーは責任を取るのでしょうか。取れるはずがないですよね。朝練や夜遅くまでの練習もそうです。そのようなことをしなければならない理由が私にはまったくわからないのです。日本の子どもたちはいったいどうやって睡眠時間を確保しているんですか? どうやって疲労を回復させているのでしょうか。不思議で仕方ありません」


――子どもたちにとって、休息や睡眠はどれくらい大切なことなのでしょうか?

 「成長ホルモンは睡眠の間に最も多く分泌されるという常識にのっとって考えるまでもなく、疲れた身体を休ませるのは当たり前の話ですから、身体と心を休ませてあげる大切さはあらためて言うまでもないと思います。疲労を残し、運動機能を低下させたままの状態で次のトレーニングを行えば、当然故障のリスクは格段に高まります。先ほどの話と同様、過剰なトレーニングを肯定する科学的なデータがあるなら、是非とも知りたいと思います。

 成長期の子どもたちの身体がもろく壊れやすいという事実。サッカーの“厳しさ”とは指導者ではなく、試合のピッチが教えてくれるということ。その厳しさも、技術や戦術のスキルも、子どもたちはサッカーをプレーしながら自然と学んでいくのです。こうした当たり前の事実を、もう少し大切にすべきではないでしょうか」


文化の違いを認めても、理解できない不合理


――過度な負荷のトレーニングの問題もさることながら、指導者や教育熱心な親による度を超えた干渉の下でプレーを強いられた結果、成長期の子どもたちが「燃え尽き症」に至ってしまうケースが日本では少なくありません。

 「国ごとに文化も違えば、考え方、個々のトレーニング手法も異なります。ましてや私は日本の指導現場を目にしたことがない者ですから、そのサッカー環境について正確な意見を述べることはできません。ただ、こうして日本のトレーニング環境を説明してもらいながら私が思うのは、『それほどの量のトレーニングを毎日こなしている子どもたちは、果たして幸せなのだろうか……』という疑問です。彼らはそれを自分の意思でやっているのでしょうか。それともやらされているのでしょうか。試合に出られない子どもたちは、いったい何をモチベーションにそれほどの距離を走っているのでしょうか。

 『燃え尽きる』ということは、つまりサッカーへの情熱さえも失ってしまうということなのでしょう。もし、そんな現実があるとすれば、やはり一日も早くあらためられるべきなのだろうと思わずにはいられません。私のような立場の者が口を出すべきではないのかもしれませんが」


――では、エンポリの下部組織での競争とはどのようなものでしょうか?

 「ここエンポリでも、カテゴリーが1つ上がれば、当然厳しさも増していきます。そのような中、一度は競争に敗れてクラブを去って行った子どもたちをこれまで少なからず見てきました。しかし、サッカーへの情熱そのものを失ってしまうような子を私は一人として知りません。プロクラブで続けていくことが難しいのなら、地元の街クラブへ戻ればいい。例えば、13歳で一度エンポリやフィオレンティーナを去った子が2、3年後に再びプロクラブの下部組織に戻って来たというケースもあります。成長のスピードは一人ひとり異なります。もしも今が伸び悩む時期だとすれば、一度ゆっくりと休んでみればいいのです。

 だから私は調子を落としている選手にこそ積極的に声をかけるようにしています。身体の状態を確かめてあげながら、必ずこう言います。『たくさん食べて、好きな映画でも観て、そしてゆっくり休みなさい』。今を焦って無理をするほど馬鹿げたことはないのですから」


――こうして話をしている私たちの隣では、U-17の子どもたちがすごく楽しそうにミニゲームをやっていますね。ただ、徹底したコンディション管理が行われているからでしょうか。確かにテーピングをしている子は一人としていません。そもそもテーピングしなければならないような状態であればこのピッチには立てないということなのですね。

 「その通りです。でも、実は見えないところに、例えばソックスで覆われている足首にテーピングを巻いている子は少なからずいます。それはすべて、あくまでも予防のために私が巻いてあげたものです。

 あのビブスを着ているチームのFWの子の動きに、多少ぎこちなさがあるのはわかりますか? 今季中盤戦の試合で相手DFと接触した時に負傷し、3か月のリハビリを終えた彼は、まさしく今日が本格的な練習復帰の日なんです。ですから、監督も私も細心の注意を払いながらあの子の動きを見ています。もちろん、今日が再開初日ですから、あの子に課されるトレーニング強度は通常の10%に留めています」


“実況”へのリアクションでトラブルを予測する


――それにしても、このミニゲームの“実況”は面白いですね。監督の声に煽られてプレーが激しくなるにしたがって、子どもたちの笑顔はむしろ増えていきます。声も大きくなってきました。見ている僕らが一緒にやりたくなるくらい、本当に楽しそうにプレーしますね。

 「監督(アントニオ・ブシェ。元セリエA選手/MF)は実況でムードを盛り上げながら、その声に対する子どもたちのリアクションを見ているんです。反応のスピードが鈍くなれば、それは疲労がリミットを超えたサインであったり、もしかすると故障のサインかもしれません。ですから私たちは、その部分を見逃さないように注意を払い続けています」


――トレーニングの間に適度な休憩が入るとはいえ、これだけ密度の濃いトレーニングをやれば子どもたちは相当に消耗するはずです。休養する前には十分な栄養補給も大切になってきますね。エンポリでは、子どもたちにどのような食事のメニューを与えていますか?

 「まずはトレーニング終了後1時間以内、できれば30分から45分以内に炭水化物を摂り、もちろんミネラルをふんだんに補給しながら、タンパク質を摂取してもらいます。肉でも魚でもかまいません。いたって当たり前の食事ですね。ちなみに、試合当日のメニューはおおむねこんな感じです」


■朝食:午前8時半(昼食の3時間前)

ブリオッシュ、プロシュット(非加熱または加熱したハム)、フルーツ(または果汁100%ジュース)

■昼食:正午頃(試合の3時間半前)

パスタ(パルメザンチーズをかけただけの「パスタ・イン・ビアンカ」またはトマトソースなど)、プロシュット(非加熱または加熱したハム)またはブレサオラ(牛肉の生ハム)、パン2枚、パルメザンチーズ、クルミなどのナッツ類、デザート(クロスタータ=ジャムタルト)

■試合:午後3または4時キックオフ

■試合後(1時間以内)

生ハムなどを挟んだパニーノ、十分な水分補給、デザート

■夕食

前菜、リーゾ・ア・フォルマッジョ(パルメザンチーズをかけたリゾット)またはパスタ、鶏肉/豚肉/牛肉、サラダ(味付けはオリーブオイル、塩と胡椒)、ポテトロースト、デザートなど

食事例:

フィジオセラピスタ例:

 この若いフィジオセラピストの言葉から、読者のみなさんは何を感じたでしょうか。

 インタビュー中、何度も車のサイドブレーキを引くジェスチャーを繰り返しながら、「ブレーキ役になること」の大切さを伝えようとしてくれたマリーノ。「それができなければフィジオセラピストの存在意義はない」という彼の強い言葉に、私は成長期の子どもたちの身体を預かることの責任の重さを思い知らされた気がします。

 今年の日本の夏は数年に一度の酷暑。日本の子どもたちの身体が危険にさらされず、彼らが純粋にサッカーというスポーツを楽しめる日が来ることを、遠いイタリアから私は切に願っています。

<プロフィール>
Francesco MARINO
フランチェスコ・マリーノ

エンポリFCフィジオセラピスト(理学療法士)

1986年6月26日生まれ。カステル・フィオレンティーノ=エンポリ出身。フィレンツェ大学医学部卒業後、運動理学療法士マスター資格取得。野球のイタリアユース代表、カヌーのイタリア代表スタッフを経て、2014年からエンポリFC専属理学療法士。2018-2019シーズンからエンポリFCプリマベーラ(U-19)の専属フィジオセラピストを務める。


『カルチョの休日 イタリアの少年サッカーは蹴球3日でグングン伸びる』

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イタリアエンポリ育成

Profile

宮崎 隆司

イタリア国立ジャーナリスト協会会員。イタリア代表、セリアAから育成年代まで現地で取材を続ける記者兼スカウト。元イタリア代表のロベルト・バッジョに惚れ込み、1998年単身イタリアに移住。バッジョの全試合を追い続け、引退後もフィレンツェに居住。バッジョ二世の発掘をライフワークに、育成分野での精力的なフィールドワークを展開する。圧倒的な人脈を駆使して、現地の最新情報を日本に発信。サッカー少年を息子に持つ父親でもある。