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ジョーダン・ヘンダーソン。黙々と黒子を演じるリバプールの“6番”

2018.02.02

注目クラブのボランチ活用術:リバプール


シャビ、シャビ・アロンソといった名手たちが欧州サッカーのトップレベルから去ったここ数年、中盤で華麗にゲームを動かすピッチ上の演出家は明らかに少なくなっている。では実際のところ、各クラブはボランチにどのような選手を起用し、どんな役割を求め、そしてどうチームのプレーモデルに組み込んでいるのか。ケーススタディから最新トレンドを読み解く。


 どこからでも点が取れるチームを理想とするクロップの[4-3-3]において、中盤3枚のうちインサイドMFの2人にはボールを追い越して飛び出し、シュートシーンに絡んで行く動きが求められる。よって、現チームの中盤でボールよりも後ろでのタスクをメインとするのはアンカーのヘンダーソンだけになる。

 彼はセンターサークル付近で味方の最終ラインからパスを引き出し、持ち前の基本技術の高さを生かして、ボールを左右前後に散らしていく。ヘンダーソンをハブ役としたパス回しで、チームは攻撃の糸口を探るのだ。インサイドMFやSB、“偽9番”のフィルミーノらが敵のDFとMFのライン間に顔を出すと、ヘンダーソンから彼らへのパスを合図に、マネやサラーが裏抜けを狙って走り出す、または中央突破を狙ったコンビネーションが発動するという形が、リバプール攻撃陣の基本アプローチである。

 ビルドアップから局面を前に進めた後は、ボールより後方に構えてサイドチェンジや再ビルドアップの起点となる。その際、攻勢でチーム全体の意識が前がかりになっても、ヘンダーソンは「攻→守」のトランジションの事前予測を怠らない。常にアタッキングポジションを意識し、ゲーゲンプレス発動時もチーム全体の配置バランスが崩れないように自らが動き、また周囲を動かすのが彼の役目だ。もちろん自身もプレッシングやボールハントに参加するが、どちらかと言えば即時奪回プレスで“一の矢”となる仲間たちに続き、“二の矢”としてこぼれ球奪取からの一撃スルーパスを狙ったり、スペースに注意してカウンター抑止に目を光らせたりという側面が強い。

 もともとは“8番”から“6番”にコンバートされた選手。ミドルシュートも撃てるし、ゴール前に飛び出すセンスも悪くない。もしかしたら本心では、英雄ジェラードのようにもっと得点力を示したいと望んでいるかもしれない。だが、ヘンダーソンは中盤の最後尾でビルドアップ、カバーリング、タックル、プレッシングのバランサー役といった目立たない仕事を一手に引き受けている。キャプテンとしての責任感をフォア・ザ・チームの精神に置き換え、彼は黙々と黒子役を演じているのだ。


17-18 チームスタイル:プレッシング&カウンター

運動量は豊富だが、広域をカバーするというよりは中央エリアに絞って短距離スプリントを繰り返し、攻守両面でボールの近くに多く顔を出すというのがヘンダーソンの印象。基本的にロングカウンター以外でゴール前まで上がって行く場面は少ない。


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Photo: Getty Images

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川崎 薫