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基準はプレス強度。相手に応じてアンカーを使い分けるナポリ流

2018.01.30

注目クラブのボランチ活用術:ナポリ


シャビ、シャビ・アロンソといった名手たちが欧州サッカーのトップレベルから去ったここ数年、中盤で華麗にゲームを動かすピッチ上の演出家は明らかに少なくなっている。では実際のところ、各クラブはボランチにどのような選手を起用し、どんな役割を求め、そしてどうチームのプレーモデルに組み込んでいるのか。ケーススタディから最新トレンドを読み解く。

 ナポリは[4-3-3]のアンカーとしてタイプの異なる2人のMFを擁している。ジョルジーニョは典型的な「レジスタ」。ただし体格、運動能力などのフィジカル面は凡庸で、フィジカルコンタクトやボール奪取力などは平均的なMFと比べてもやや見劣りする。一方アフリカ系で強靭なフィジカルを備えるディアワラは、ほとんどすべてのボールをワンタッチ、ツータッチでシンプルにさばくプレーに徹し、守備では強い当たりと高いボール奪取能力を生かして敵の攻撃をブロックするディフェンシブなタイプ。とはいえショートパスの精度と成功率は極めて高いレベルにある。

 [4-3-3]システムの中でアンカーが担うべき基本的なタスクは、どちらがプレーする場合にも原則として変化はない。しかしプレースタイルや特徴の違いによって、チーム全体のメカニズムにおいて担う機能の濃淡は変わってくる。

 基本的なタスクに関して言えば、攻撃の局面で最も重要なのは最終ラインからパスを引き出し、インサイドMFやSBとのパス交換によって中盤でポゼッションを確立、敵中盤ラインの背後(2ライン間)にボールを送り込むこと。ジョルジーニョは、前を向ける状況があれば自ら2ライン間への縦パスを狙おうとする傾向が強く、ボールタッチ数も多めだが、ディアワラはゴールに背を向けている場合はワンタッチでDFラインに戻し、半身で受けられる場合にはSBやインサイドMFとのパス交換でボールを動かし、彼らが局面を前に進めるパスを出せるようサポートする仕事に徹する。

 いったん前線にボールが送り込まれた後は、両者ともボールのラインより後ろにとどまって戻しのパスの受け皿となりつつ、ネガティブトランジションに備えたポジションを取る。ジョルジーニョは大きなサイドチェンジも蹴れるが、ディアワラは無理をせず近くの味方に預けるかCBに戻してサイドチェンジを促すことが多い。

 こうした特徴の違いから、サッリ監督は、引いて守りを固め中盤にスペースと時間を与えてくれる相手に対してはジョルジーニョを、プレッシャーが厳しくシンプルにリズム良くボールを動かし組織でボールを前に運ぶ必要がある場合にはディアワラを、それぞれ起用する傾向がある。


17-18 チームスタイル:ポゼッション

守備の局面で積極的にプレスに出て行くのは3トップとインサイドMF。アンカーはその背後で敵FWへのパスコースを消し危険なスペースをカバーする。攻撃では敵第1プレッシャーラインの前でCBとパス交換してビルドアップを支える。

Photos: Getty Images

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アマドゥ・ディアワラジョルジーニョナポリボランチ

Profile

片野 道郎

1962年仙台市生まれ。95年から北イタリア・アレッサンドリア在住。ジャーナリスト・翻訳家として、ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を広げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えている。主な著書に『チャンピオンズリーグ・クロニクル』、『それでも世界はサッカーとともに回り続ける』『モウリーニョの流儀』。共著に『モダンサッカーの教科書』などがある。