名古屋グランパスから育成型期限付き移籍でファジアーノ岡山に加入した19歳のDF森壮一朗。豊富な運動量と推進力を武器に、ウイングバックとして攻撃面での貢献を思い描いていたが、木山隆之監督から求められたのは3バックの右を担うCBとしての役割だった。慣れないポジション、新しい守備戦術への適応に苦しみながらも、出場機会を重ねる中で少しずつ手応えをつかんでいる。岡山での4カ月間は、19歳の若武者にどんな変化をもたらしたのか。
置かれた場所で咲きなさい。
与えられた環境や境遇を嘆くのではなく、その状況で自分にできるベストを尽くし、自らの可能性を最大限に発揮する。人生の教訓として語られることが多い言葉である。広く知れ渡ったのは故・渡辺和子氏の著書がきっかけだろうか。生前は岡山県のノートルダム清心学園で理事長を務めていた。その言葉を体現しようとしている若武者が今、岡山の地にいる。2026年夏、名古屋グランパスからファジアーノ岡山へ育成型期限付き移籍で加入したDF森壮一朗だ。
ファジレッドのユニフォームに袖を通してから約4カ月。19歳のDFは、この短期間の中で自分の置かれた環境、そしてピッチ上で求められる役割とどこまでひたむきに向き合い続けている。
佐藤龍之介、小倉幸成の活躍が後押し。森壮一朗が岡山を選んだ背景
名古屋U-18在籍時にプロ契約を結んだ森が高卒1年目の夏、岡山にやってきた背景には同世代の仲間の存在があった。
現在スペイン1部のバレンシアに所属する佐藤龍之介は、2025シーズンにFC東京から育成型期限付き移籍で岡山に加わると、リーグ戦28試合出場6得点2アシストを記録。その年にA代表デビューを飾り、J1リーグの優秀選手賞とベストヤングプレーヤー賞に選出された。2027-28シーズン(2028年1月)から岡山への加入が内定している法政大学の小倉幸成は、大学2年生から3年生に進級するタイミングで特別指定選手として百年構想リーグに出場。開幕スタメンを勝ち取ると、16試合出場2アシストを記録し、チームの中心選手として躍動した。
岡山からの獲得オファーを耳にした森は、同世代の彼らから事前にクラブの雰囲気や練習場の空気感について話を聞き、「自分もあの環境で勝負したい」という強い思いが芽生えた。
「龍之介だったりオグ(小倉)だったりが活躍しているのを目の当たりにしていたので。少し話を聞いた中で、『本当にファジアーノ岡山でサッカーをしたい』という熱意や、『ここだったら成長できるな』という確信を持ったので決断をしました」
推進力をどう生かすか。木山監督が見出したCBとしての可能性
しかし、実際に岡山の地に足を踏み入れ、チームのトレーニングに合流してからの日々は、決して順風満帆だったわけではなかった。
森自身がストロングポイントを最大限に発揮できるポジションとして強くイメージしていたのは、豊富な運動量を活かしてサイドを駆け上がるウイングバック(WB)だった。攻撃時に相手の背後に抜け出し、時にはゴール前に進入する。逆サイドからのクロスには、高さを生かして飛び込んでいく。ダイナミックにゴールへアプローチするプレーが、「一番のアピールポイント」と自負するものだった。
だが、木山隆之監督から求められたのはWBだけでなく、3バックの右に入るCBとしてのタスクでもあった。そして、時間が経つにつれて、その比重は増していく。
佐藤龍之介や小倉ら若手を抜擢してきた指揮官は、コンバートの狙いをこう説明する。
……
Profile
難波 拓未
2000年4月14日生まれ。岡山県岡山市出身。8歳の時に当時JFLのファジアーノ岡山に憧れて応援するようになり、高校3年生からサッカーメディアの仕事を志すなか、大学在学中の2022年にファジアーノ岡山の取材と撮影を開始。2024年からは同クラブのマッチデープログラムを担当し、現在は様々な媒体にも取材記事を寄稿している。東京のスポーツメディア会社に約2年勤務し、2026年からは地元の岡山でフリーランスとして活動。モットーは、「魂を込めて、クラブや選手の魅力を伝える」こと。
