“二人の翔太”が躍動している。大木武監督率いる愛媛に今季加入した日野翔太と田村翔太が、さっそくチームの攻撃を牽引し、J2復帰の旗印となっている。順風満帆とは言えなかったキャリアを歩んできた二人が、愛媛で輝くまでの軌跡を振り返る。
無名選手からJ3の主役に
新天地の愛媛で眩いばかりに輝きを放つ二人の“翔太”。J3リーグ第7節を終えて自動昇格圏の2位につけ、クラブ最大の目標であるJ2昇格へ好発進を決めたチームで日野翔太、田村翔太の躍動が止まらない。
一人は優れた足元の技術と機動力をともなった運動量を有し、ピッチを所狭しと駆け巡るチャンスメイカーの日野翔太。もう一人は、相手ディフェンスラインと駆け引きし、ラインブレイクから虎視眈々とゴールを狙うストライカー、田村翔太。
彼らはほんの少しまではこのJリーグ界隈で名を轟かすことのなかったいわゆる無名選手だったが、先の百年構想リーグで一気に芽を伸ばし、一躍J3の舞台で主役の座へ名乗りを上げようとしている。
二人でリーグ最多18得点の半分を記録
彼ら二人が所属する愛媛はJ2を戦った2025シーズンで最下位に沈んでJ3へ降格。クラブはチームの再建をJ屈指の豊富な指揮経験を持つ大木武監督へ託し、選手ラインナップも刷新しながら新たなチームスタイル構築を模索している。そんな中で攻撃のキーマンとしてチームを牽引するのが日野と田村である。
大木監督率いる愛媛で目を引くのは攻撃力だ。頑なにポゼッションスタイルを貫くパスサッカーに強みを持つ指揮官のもと、チームは狭いエリアでテンポよくショートパスを繋ぎながら前進しながら貪欲にフィニッシュシーンを作り上げる。今季ここまで7節終了時点でリーグ最多の18得点。日野と田村の二人だけでその半分を奪っており、言うまでもなくチームの好調を支えている。
大木監督はこれら好成績について「彼ら二人だけでやっているわけではない」と、あくまでもチームとして得たものであることを強調しながらも、二人の活躍ぶりには「それは素晴らしい。彼らがいなかったらこんなに勝っていないでしょうね。これだけ点を取っているんだから。いくら押し込んでいたって点を取らないとチームは勝てない」と賞賛の言葉を惜しまない。
愛媛が今季採用するベースのシステムは[3-5-1-1]で、3ボランチの前に陣取る1トップが田村で、日野がトップ下を務める形をとる。
それぞれの役割は明確だ。
日野はチームが最終ラインから丁寧にビルドアップする中、トップ下というポジションにはこだわることなく、ボールが動く場面へ精力的に顔を出し、パスを受けては自慢のドリブルで一気にボールを前進させて好機へと繋げていく。一方、田村はファーストディフェンダーとして最前線で献身的な守備をこなしつつ、チームのポゼッション時には相手ディフェンスラインと常に緊張感のある駆け引きを繰り返し、味方からのラストパスを呼び込んでゴールへ直結するアクションで魅せる。
二人の間に特別なホットラインがあるというわけではないが、チームに明確な二つの攻撃の武器があることによる対戦相手が感じる脅威は決して小さなものではないだろう。
大木監督も日野に驚愕「こんなにやれるとは」
日野は2023シーズンに特別指定選手として鳥栖でJデビュー。2025シーズンからの鳥栖加入内定を前倒しして、2024年にプロ契約を結び、J1の舞台で8試合の先発を含む14試合に出場するなどその将来を嘱望された。だが、翌シーズンはチームがカテゴリーを落とした中でプレー時間を増やせず。J初得点こそ挙げたものの、思うように結果を残せないままシーズン終了後に愛媛を新天地に選んだ。
日野には愛媛の水が合った。大木監督のもと、日野は能動的なプレースタイルで再構築されるチームの中で早々に頭角を表し、百年構想リーグが開幕すると攻撃の中軸としての地位をすでに固めていた。
誰よりもそのプレーぶりに驚いていたのは大木監督だ。
「正直言うよ。(チームの中心選手になれるか)はじめはわからなかった。なんでかって言うと、熊本にいたときに鳥栖と(練習試合を)やってきたから。アイツはBチームだったけど、あの風貌だから印象には残っていた」
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Profile
松本 隆志
出版社勤務を経て2007年にフリーへ転身。2009年より愛媛FCを中心としたプロサッカークラブの取材活動を始める。サッカー専門紙エルゴラッソ、サッカーダイジェスト等へ寄稿。ライター業とともにフォトグラファーとしても活動する。
