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戦術は人を動かせるか。10人の浦和が示した「希望」という羅針盤

2026.08.10

戦術とは配置や仕組みの話だけではない。選手が何を信じ、どこへ走るべきかを示す「希望」でもある。数的不利となった浦和レッズは、後半開始からの大胆なシステム変更によって試合の主導権を取り戻し、一度は逆転に成功した。秋春制となったJリーグの開幕戦を現地取材した西部謙司が、壮絶な撃ち合いとなったG大阪対浦和から考える、戦術が持つもう一つの力とは——。

[4-4-1]で耐えるだけの限界

 前半を終えて2-1、ホームのガンバ大阪がリードしていた。浦和レッズは21分にマテウス・サヴィオがイエロー2枚目で退場となって10人。

 10人になる前に先制していた浦和は、1人少なくても攻め込める力はありそうだったが、G大阪のキープするボールをなかなか奪えない。G大阪はスペイン風のパス回しで浦和を自陣に釘付けにすると、イッサム・ジェバリのボールタッチが増え、それにともなってチャンスも増えていく。ジェバリとデニス・ヒュメットのゴールで逆転していた。

 [4-4-1]の布陣で耐えていた浦和だが、追う立場となった以上は何かを変える必要があった。

 「シュートが外れてくれるのを待つような展開」(曺貴裁監督/浦和)

 このままというわけにはいかない。まずはボールを奪うこと。

 後半から浦和はシステムを変えた。すると78分に渡邊凌磨のクロスボールを金子拓郎が決めて2-2、2分後には渡邊の突破から南野遥海がゲットして2-3。電光石火の逆転に成功する。

 急に勢いを増した要因ついて聞かれた曺監督は「戦術です」と答えた。

 軽視しているとは言わないものの、あまり「戦術」を前面に出す印象はない。ただ、この試合に関しては曺監督の一手が流れを一変させていた。戦術が選手の力を引き出すものだとすれば、まさに技術も気持ちも前向きにさせていたのだ。

希望を与えた「リスクある変更」

 G大阪は[4-2-3-1]、浦和は[3-4-2-1]でスタート(下図)。

 どちらも激しくハイプレスを仕掛けていく。17分に金子の精度の高いクロスボールを小森飛絢がヘディングで決めて浦和が先制。暑い中でのハイテンポの展開がいつまで続くかと思っていたが、サヴィオの退場があってゲームの形がいったん落ち着く(下図)。

「幅を使って慌てずに攻めろ」(明神智和監督/G大阪)

 少し窮屈そうだったジェバリがボールを受け始める。懐が深くてタメが作れる、そこから決定的なパスを出せて、自らもゴール前へ入っていく。37分に落ち着き払った胸トラップからコースを狙った同点弾を決める。

 前半ロスタイムには、外回しのパスワークの最中に一瞬フリーになったデニス・ヒュメットがいきなりのダイレクトシュート。意表をつく一発が決まって2-1。

 そして浦和は後半からシステムを変えた(下図)。

……

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Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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