スタッド・ランス時代の伊東純也を取材してきた小川由紀子さんのベルギー出張レポート。2月に続く2025-26シーズン2度目の今回は、ゲンクのプレーオフ2最終節(第10節)を見届けるべく敵地ルーベンを訪れた。前編では、横山歩夢とのアベック弾でチームに0-2の勝利と欧州行きの“ラストチャンス”をもたらした試合後の談話とともに、背番号10の古巣復帰1年目を振り返ろう。
「ああいうのはだいたいファーに適当に打っとけば入る…」?
5月23日に行われたジュピラー・プロ・リーグ(ベルギー1部リーグ)、プレーオフ2最終節。
プレーオフ2(レギュラーシーズンの7位〜12位が進出)では、1位になれば、プレーオフ1(同1位〜6位が進出)の下位チームと、来シーズンのUEFAカンファレンスリーグ(予選2回戦)参戦を懸けた一発勝負に挑む権利を得る。ゆえにプレーオフ2の6チームが目指すのは、欧州カップ戦に出場できる最後のチャンスを手に入れるための首位の座だ。
ゲンクはその最終節に、1位のスタンダール・リエージュと勝ち点2差の2位で臨んだ。首位に立つには勝利が必須。その上で、スタンダールが引き分け以下、という他会場の結果も必要だった。
アウェイで必勝のルーベン戦、ゲンクに先制点をもたらしたのは、もちろんこの男、伊東純也。
15分、相手のパスをキャプテンのMFブライアン・ヘイネンがインターセプトしたところから、攻撃アクションは始まった。ヘイネンからFWアーロン・ビブへ向けたパスのこぼれ球を、左サイドで横山歩夢がキャッチ。
前節に続いて先発出場となった横山が中に切り込むと、足下のボールは相手にカットされたが、これをヘイネンが回収。すぐさまサイドを上がってきた左SBヤイマル・メディナにさばき、メディナがゴール前めがけてランニングパス。ゴールを背にして左足でボールを受けた伊東は、くるりと体を反転させて右足でファーサイド側の右隅に流し込んだ。
見るからに華麗な振り向きざまシュート!であったが、
「まあ、ああいうのはだいたいファーに適当に打っとけば入る時はあります……」
この余裕はさすがの10番である……。
メディナが自分にクロスを出してくれるであろう確信はなく、引っかかってこぼれたボールに飛びつこうと思っていたら「うまく入ってきた」ので、その時点でターンしてファー狙い、というイメージを描いていたそうだ。
先制点の勢いをキープして前半のうちにリードを広げておきたいゲンクは、32分に待望の追加点。
決めたのは横山、そして起点となったのは伊東だった。
相手を背負ってボールを受けた伊東からFWダーン・ヘイマンスへ。そこから右SBザカリア・エル・ウアディへとつながり、エル・ウアディからの横パスを受けた横山が、ダイレクトでファーに叩き込んだ。
ゲンクでのプロ初ゴールに横山は笑顔でガッツポーズ。
ゲンクの2点リードで折り返した後半はルーベンが優勢に転じるも、試合終了が近づくにつれ、気になるのは同時に行われているスタンダール対シャルルロワの結果。71分にベンチに下がった伊東も仲間と一緒にスマホで試合経過を凝視していたが、シャルルロワがスタンダールを0-2で下し、晴れてゲンクのプレーオフ2単独首位が決定した。
と同時に、来季のカンファレンスリーグ出場を懸けたプレーオフに挑む権利も手に入れた。
ドヤ顔の2人…「(歩夢は)俺の言った通りにさしてます(笑)」
試合後、晴れやかな様子でそろって取材エリアに登場した伊東と横山。開口一番、伊東は、
「コイツのはイージーでしたね」と後輩イジリ。
「いや、あれ意外とむずいっすよ。意外とむずい。ふかすから、いつも」という横山の反論もさえぎり、
「あれも起点が俺っす」と大先輩はドヤ顔。
……
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Profile
小川 由紀子
ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。
