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崇高なボールポゼッションが単純極まりない放り込みに苦戦した、スペイン対ベルギーの予想外

2026.07.12

【特集】北中米W杯深掘り分析スペシャルレビュー #11

4年に1度のW杯は、後世に語り継がれる名勝負の宝庫だ。しかし高度化した現代サッカーの裏側には、徹底した分析と綿密なシミュレーションに基づく極限の戦術的駆け引きが存在する。footballista編集部が選んだ識者たちが、注目国同士による「本気の闘い」を深掘りレビュー。あの90分で何が起きていたのか。勝敗を分けた戦術の妙に迫る。

第11回は、準々決勝のスペイン対ベルギー(2-1)。ラウンド32、ラウンド16とはまったく違う姿を見せたベルギーの戦い方を中心に、またもメリーノの決勝点でスペインが辛勝した一戦を振り返りたい。

最重要人物は左のトロサール、のはずだった

 ポゼッション主義者は大いなる勘違いをしやすい。ボールがなければ攻められないのだから、間違いなくボールを持つだろうスペインは無敵だろう、ベルギーには簡単に勝つだろう、と。大間違いであった。実際にはまたもやミケル・メリーノ、マジックで辛勝。事前の予習がまるで役に立たなかったベルギーの予想外の戦いぶりといい、サッカーの奥深さを知る良い機会になった。セネガル戦、アメリカ戦、スペイン戦とまったく違う戦い方をしてきて、敗退の一歩手前まで行きつつもここまで立て直してきたルディ・ガルシア監督が名将なのかその逆なのかはわからないが、最終的に戦えるチームを作り上げてきたことは間違いない。

7月1日のラウンド32、ベルギー対セネガル(3-2)のハイライト動画
7月6日のラウンド16、アメリカ対ベルギー(1-4)のハイライト動画

 まず、ほぼ役に立たなかったが敗退寸前セネガル戦と大勝アメリカ戦の戦術的予習からわかったことは以下の通り。

●システムはボール保持時[4-2-3-1]。セネガルに2点リードされた緊急事態時[3‐1‐5‐1]。

●ボール非保持時は重心が前から後ろにかかるにつれ[4-4-2]→[4-1-4-1]→[4‐2‐3‐1]→[5‐4‐1]と変化。

●ボール非保持時の[4-4-2]の1列目はCF+誰か。誰かは多くの場合トップ下(デ・ブルイネかティーレマンス)だが、ボールの位置によってサイドの選手になったりする。

●ボール非保持時で押し込まれていてもCF(デ・ケテラーレかルカク)は絶対に下げず前に残しておく。

●プレスの強度とブロックの高さは、敗退寸前のセネガル戦で弱・低、大勝のアメリカ戦で強・高。強・高が良いのは明らかだが、ボールが持てないスペイン戦でも強・高でいけるのか?

●選手の特徴と組み合わせは、フォーメーションが共通するスペインと似ている。ダブルボランチの構成は1人がロドリ的で主なボール出し担当、センターラインを締めるストッパー、もう1人がペドリ、ファビアン・ルイス的で比較的自由に上下左右に動く。2列目のサイドは1人がラミン・ヤマル的なソリストのウインガー(ドクかルケバキオ)、もう1人がバエナ的、攻撃的MF的なトロサールで、サイドに張らず中へ入るし、下がって3番目のボール出し要員となる。

●攻撃の最重要人物はトロサール。ボール出しからアシスト(2)、ゴール(2)まで期待できる万能。加えて、スピードはないが、巧みなタッチとリズムチェンジを交えてウインガー的な1対1突破もできる(これはたぶんバエナもできるはずだが、やっていない)。

●トロサールは逆足(利き足は右)となる左サイドの方が生きる。超攻撃的な左SBデ・カイペルとのコンビは強力。ボールを持つトロサールを外側、内側から追い抜くデ・カイペルへ絶妙のパスを送り込むことで、相手のDFラインは切り裂かれる。デ・カイペルへ出すと見せかけての逆サイドへの正確なシュートもセンタリングもむろんあり。

●トロサールを左サイドで起用すると、ウインガーは右サイドが逆足となる右利きのドクよりも左利きのルケバキオの方が良い。ベルギーにはトロサールとドクの共存問題というのが存在する。どちらにしても左に置いた方が輝き、右に置いた方は輝かない。スペイン戦ではアメリカ戦同様、左トロサール、右ルケバキオでスタートするのではないか?

7月10日の準々決勝、スペイン対ベルギー(2-1)のハイライト動画

 で、実際にフタを開けるとどうだったか?

……

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Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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