
V・ファーレン長崎は下平隆宏監督との契約を解除し、高木琢也代表取締役兼C.R.Oが新監督に就任することを発表した。「8位」での監督交代の背景、そして高木新監督が秘めてきた強い決意を、クラブを追い続ける藤原記者が伝える。
「8位」で解任されるまでの経緯とは?
6月16日、長崎の監督交代が発表された。
下平隆宏前監督の今季の戦績は、リーグ折り返しの19試合を終えて7勝7分5敗の8位。即解任の戦績かと言われると微妙だが、スタジアムシティが完成し、J2が2027年夏からのシーズン移行のために来年は昇降格がなく、今季の昇格を逃すことはできない。
水戸戦後に開催されたクラブとチームのトップによる話し合いで、「正念場」と位置づけられた大宮戦で勝ちきれず(3-3の引き分け)、大宮戦も含めてこれまで守備改善のあらゆる手段を講じながら3失点し、前期折り返しで、自動昇格圏となる2位と勝ち点差が2ケタと開いてしまう。その後の、チーム内から「起用の基準が見えない」と声が挙がったこともあり、大宮戦当日の夜に監督交代の方向性が固まり、翌16日の午前中に下平前監督、新監督となる高木琢也C.R.O両方に伝えられた。
監督解任は原則として「成績が悪く、改善の見込みない」、「求心力を失った」のどちらかが理由となるものだが、今回の監督交代は片方の理由が決定打になったというより、2つの合わせ技的なものだろう。内容的に評価すべき点もあり、別のシーズン、もしくは他のチームであれば続投もあり得ただろうが、長崎の置かれた環境と状況を考えればやむを得ない。
🔷下平隆宏監督 契約解除のお知らせ🔶
このたび #下平隆宏 との契約を解除することが決定しましたのでお知らせします。https://t.co/8Esr4SppjN
※なお、新監督につきましてはJリーグ登録手続き完了次第、高木琢也 代表取締役 兼 C.R.O が就任いたします。#vvaren pic.twitter.com/ofdCR5nPw4
— V・ファーレン長崎【公式】 (@v_varenstaff) June 16, 2025
クラブは4月末頃からチーム状況に危機感を持っていたが、それでも下平監督続投をベースとしていた。A契約選手がすでに27名と限度数一杯だったために、選手補強ができないため守備のできるコーチを招へいしようとするが、一度は決まりかけた話が6月にその話も流れている。この時点で最悪の場合に備えて後任人事も検討されたようだが、クラブ事情を理解し、今すぐ指揮に入れる監督候補は少ない。
そのため、かつて長崎をJ1昇格させ、その後は大宮や相模原を指揮して、2023年からフロントとしてクラブに復帰し取締役兼クラブリレーションオフィサー(C.R.O)となっていた高木琢也氏の3年ぶりの現場復帰、長崎の監督としては7年ぶりの復帰が決定した。2018年に契約満了を理由に監督を交代した長崎は、巡り巡って元に戻ったとも言える。
しかし、この間にクラブも高木新監督も成長した。
「たぶん、クラブの運営や経営のことを知った今の方が、監督としてクラブの力になれると思うよ。当時は、フロントのことなんて知らなかったからね」
高木新監督自身はフロント入り後、ことあるごとにこう語っている。そういう意味では7年をかけて元に戻ったというよりも、互いに高まったからこそ再びともに戦えるようになったと言えるだろう。決して「後退」や「リセット」ではないのだ。

3バックは継続濃厚、求められるのは「起用の基準」
高木新監督就任で変わらないものとなると、やはり3バックだろう。
高木監督は以前から「3バックは中盤の枚数を変えることで守備的にも攻撃的にできる」と語っており、「使いこなせば、いろんな戦い方ができる」という。現在、チームが3バックを採用していることに関して「たまたまなんだけど、そこのやりやすさはあるよね」と語っている。もちろん、同じ3バックでも前監督と違う面はあるが、3バックは選手の役割が[4-4-2]よりも明確な分、短期間で落とし込みやすく、ある程度の対応は可能だろう。

一方で、選手起用については試合を重ねるごとに変わっていくだろう。決して前監督が不公平だったわけではないが、以下のような状況だったのは事実だ。以下は6月4日、ある選手とやりとりした際のコメントである。
――今年のチームは話もするし仲も良い。なのに、どこか一つになりきれていない感じがあるですが、そこはどう感じますか。
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Profile
藤原 裕久
カテゴリーや年代を問わず、長崎県のサッカーを中心に取材、執筆し、各専門誌へ寄稿中。特に地元クラブのV・ファーレン長崎については、発足時から現在に至るまで全てのシーズンを知る唯一のライターとして、2012年にはJ2昇格記念誌を発行し、2015年にはクラブ創設10周年メモリアルOB戦の企画を務めた。