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マルチタスク型が台頭するU-20W杯。全試合観戦中の記者が選ぶGSベストイレブン+特別賞

2023.05.30

5月20日に開幕したU-20W杯アルゼンチン大会は、28日で4チームずつ6組に分かれたグループステージの計36戦が終了。見事突破した16カ国が世界の頂点を目指すノックアウトステージを前に、日本で全試合観戦中のサッカー記者・竹内達也氏がここまでのベストイレブンと特別賞を選出する。

 コロナ禍による前回大会中止を経て、4年ぶりに開催されているU-20W杯。本大会を1カ月半後に控えた段階でホスト国のインドネシアが開催権を返上するという異例のトラブルにも見舞われながらも、代替立候補地として手を挙げたカタールW杯優勝国・アルゼンチンで連日、戦いが繰り広げられている。

 大会の主役を担っているのは2003年1月1日以降に生まれた20歳以下の選手たちだ。すでに欧州トップクラブで名声を高めているジャマル・ムシアラ(バイエルン)、ジュード・ベリンガム(ドルトムント)、ガビ(バルセロナ)らと同じ世代にあたる。

 欧州シーズンの佳境という大会スケジュールかつ、各所属クラブが招集に応じる義務はないことから、上に名前を挙げたようなスター選手とはなかなか縁のない大会ではある。かといって第一線級ではない選手だけの舞台かといえば、それも違う。最後に開かれた2019年大会では、ノルウェー代表の無名のエースが1試合9ゴールという衝撃的な活躍を見せたことが記憶に新しいが、いまではアーリング・ホーランド(マンチェスター・シティ)という名を誰もが知ることとなった。

 また実はこの大会のノルウェー代表は、ダルウィン・ヌニェス(リバプール)やDFロナルド・アラウホ(バルセロナ)を擁するウルグアイ代表ともグループステージで対戦していた。この試合には3人ともが先発出場し、ヌニェスの先制ゴールを皮切りに得点を重ねたウルグアイが3-1で勝利していたが、各国のメガクラブで中心を担うようになった若きスター同士が早くも世界舞台で対峙していたのだ。

 また別の組ではアルゼンチンをW杯制覇に導いたフリアン・アルバレス(マンチェスター・シティ)が出場し、得点も記録。グループステージではポルトガルのラファエル・レオン(ミラン)との次世代アタッカー対決も実現した。すなわち、今大会においても数年後のスター選手が隠れている可能性は大いにあると言えるだろう。

 大会はすでに中2日で各国3試合という(見る側にとっても)過酷なグループステージを終え、ベスト16が出そろった。日本時間5月31日未明からはノックアウトステージが始まろうとしているが、このタイミングでグループステージのベストイレブンを選んでみたい。なお、各国21人ずつの登録メンバーから11人のみを絞り込むのは難しかったため、別枠として各『特別賞』も設けてみた。

FW

アダマ・ボジャン(ガンビア)
2004.05.28(19歳)スティーブ・ビコFC

 フランス、韓国、ホンジュラスとのF組を首位で突破し、ダークホースとして注目されるガンビア代表の絶対的エース。大会初戦では開始20秒で豪快なロングシュートを叩き込み、衝撃的な世界デビューを果たした。

 今大会のストライカーはポストプレーに長けた大型系、0トップ気味に振る舞う技巧派系がそれぞれ多い中、スピードとパンチ力で勝負するタイプは異質。よりシュート能力に特化したマルコス・レオナルド(ブラジル)、アレホ・ベリス(アルゼンチン)も魅力的だが、ポテンシャルでは抜きん出ている。

 アフリカ予選でもゴールを量産したため、すでにチェルシーやトッテナムなど欧州有数のクラブからも関心が集まっている模様。だが、現状で世に出ている情報は少なく、U-20代表監督のアブドゥリー・ボジャンとの関係性も「親族」ということしか分からない。一部記事では「祖父」と記されているが、指揮官は45歳。真偽は不明だ。

ケイド・コーウェル(アメリカ)
2003.10.14(19歳)サンホセ・アースクエイクス

 183cmの高さと背後に抜け出すスピード、目の前の相手をかわす技術を兼ね備えたアメリカ代表の左ウインガー。大会初戦ではベンチメンバーから外れていたが、第2節のフィジー戦で1ゴール1アシストを記録すると、第3節のスロバキア戦ではほぼ独力での突破から先制ゴールを決めた。

 今大会は注目のウインガーだけで11人挙げられるのではないかというほど各国の人材が豊富だが、[3-4-2-1]布陣のアメリカは1トップのディエゴ・ルナ(レアル・ソルトレイク)がやや引いた立ち位置を取ってアンカー潰しとビルドアップのタスクを担うため、よりストライカー的なプレーが多い。シュートチャンスでは周りがフリーでも基本的にゴールを狙うものの、パスを選択した時の精度も高い。

 現在は自国リーグでプレーしているが、MLSでの出場試合はすでに91を数えており、バイエルン、ニューカッスル、ミラン、ユベントスなどからの関心が伝えられている。アメリカのA代表で3試合の出場経験を持つが、公式大会ではないため、ルーツの一つであるメキシコ代表の選択権も持っていた。

オスカル・コルテス(コロンビア)
2003.12.03(19歳)ミリオナリオスFC

 日本と同組だったコロンビア代表の右ウインガー。相手のゴールキックやビルドアップの枚数に応じて、プレッシングの位置や役割が変わるチームの中において、流動的なタスクを担っている。

 そうした適応力は攻撃時にも生かされ、初戦のイスラエル戦では右サイドでスタートしたが、試合途中からトップ下に移り、ビルドアップへの関与とペナルティエリアへの侵入を兼務。こうした可変性は右サイドだけかと思いきや、第2節の日本戦では後半から左サイドに持ち場を移し、逆転劇の引き金を引いた。

 コロンビアのウイングではワトフォード所属のヤセル・アスプリージャの名がすでに知られているが、コルテスも大会後にヨーロッパ移籍、それもCL出場クラスのチームへの加入が噂されている。

MF

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Profile

竹内 達也

元地方紙のゲキサカ記者。大分県豊後高田市出身。主に日本代表、Jリーグ、育成年代の大会を取材しています。関心分野はVARを中心とした競技規則と日向坂46。欧州サッカーではFulham FC推し。かつて書いていた仏教アイドルについての記事を超えられるようなインパクトのある成果を出すべく精進いたします。『2050年W杯 日本代表優勝プラン』編集。Twitter:@thetheteatea

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