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新生・ジェフ千葉が目指すのはレアル・マドリー?成長を促す「全方位型サッカー」への期待

2023.03.09

ユン・ジョンファン前監督から小林慶行新監督がバトンを引き継いだジェフユナイテッド千葉。果たして、どんなチームに変貌しているのだろうか? このクラブを追い続ける西部謙司氏によるとタイプとしてはレアル・マドリー、つまりは「全方位型のサッカー」だという。そのメリットとデメリットについて解説してもらおう。

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開幕3戦でほのかに感じた「希望の匂い」

 1勝1分1敗、3試合を終えてのジェフユナイテッド千葉の戦績は良くも悪くもないわけだが、今季のチームには「希望の匂い」がする。

 3戦連発のルーキー、小森飛絢の奮闘。ユース昇格組の矢口駿太郎が2試合に先発出場と、若手の活躍は希望の1つだ。ただ、それ以上にチーム全体のプレーぶりに成長を期待させる匂いがほんのりと感じ取れるのだ。まだ成長したとは言い切れないが、成長するのではないかという予感。まだ芽を出したに過ぎないけれども、やがて大きく実ってくれるのではないか、そのための土壌があるのではないかという期待感だ。

 華やかに見えるが、プロ選手の日常は究極の肉体労働である。毎日、同じようなトレーニングで肉体を酷使する。基本的にサッカーは「遊び」なので、単純労働の単調さは和らぐとはいえ、それが仕事である以上、義務感や厳しさはつきまとう。楽しさを苦しさが上回っても不思議ではない。なので、日常のトレーニングに見られる雰囲気は、選手たちが成長していけるかどうかのバロメーターになる。

 土に養分が足りなければ、選手は搾取されるだけになってしまう。勝つために必死に努力はするけれども、やがてエネルギーが枯渇して日常は味気ない肉体労働となる。一方、土にたっぷり養分があれば、日々そこから活力を得て成長を続けることができる。

 小林慶行監督に代わり、トレーニングの雰囲気が変わった。簡単に言うと、選手たちが楽しそうにトレーニングしている。短期的に大きな成長は表れないかもしれないが、使役されて疲労していくような環境ではないように感じる。

 プロは短期的に結果を出さなければならないので、完成形を提示するのは監督の重要な仕事なのだが、その勝つための形に選手が使役されることになりがちで、完成すればそこで成長も止まってしまう。新監督になった千葉はまだ完成などしていない。だからこそ選手たちが意欲的に取り組めているという面もあるかもしれないが、良くも悪くも上限が見えていない。リミットがないので限りなく成長していけるかわりに、永遠に完成もしないのではないかとも思われる。

 どういうことかと言うと、小林新監督の率いる千葉の方向性は極めて「普通」なのだ。

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J2ジェフユナイテッド市原・千葉

Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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