SPECIAL

いざ、6年ぶりのJ1へ!アルビレックス新潟に充満する確かな覚悟と自信

2023.02.12

アルビレックス新潟が6年ぶりにJ1へと帰ってくる。アルベルが耕し、松橋力蔵が収穫した“攻撃的スタイル”は、自信を持ってトップカテゴリーに殴り込みをかけられる代物だ。そして、チームには改めて実力を示したいベテランと、新たなステージへの期待に胸躍らせる若手が、高いモチベーションで日々のトレーニングと向き合っている。今回もチームのストーリーテラー・野本桂子に、2023年への展望を綴ってもらう。

クラブが自信を持ってそろえた30名の精鋭たち

 アルビレックス新潟にとって、6年ぶりのJ1での戦いが始まる。

 昨季終了時点から3名が移籍したものの、それ以外の26名は契約を更新。ベースをしっかり持ちつつ、新戦力4名を補強した。「昨季対戦して一番嫌だった2人」(中野幸夫社長)と言わしめた新井直人と太田修介は、それぞれ守備と攻撃の複数ポジションでプレーできるため、多くの選手の競争意識を活性化できる存在だ。2月6日に来日したダニーロ・ゴメスとグスタボ・ネスカウは、個で違いを生み出せるブラジリアンアタッカーだという。

 数字的な動きだけを見れば地味に映るかもしれないが、新潟にとっては「狙い通りの残留、狙い通りの補強」(松橋力蔵監督)がかなった形だ。

 昨季は選手の一挙手一投足を見守る指揮官の采配も光り、試合に出た選手が次々と結果を出した。それがチーム内競争を活性化させ、個々が成長しながらチームも成長していく好循環を生んだ。強化部が最も力を入れたのは、既存の選手をしっかり残すこと。寺川能人強化部長は「多くの選手が残ってくれたことが一番の補強」と力強く語った。だからこそ、ブラジリアンの合流が遅れることに関しても「土台があるのでそんなに焦る必要はない」(寺川強化部長)という。クラブが自信を持ってそろえた30名の選手と共に、今季に挑む。

 昨季終了時点で、松橋監督は「自分たちを見失ってしまうような “J1仕様”というものは必要ない。新潟のスタイルをさらに磨き上げていくことが大事だと思う。それに、J1という場が選手の能力を引き出してくれる舞台だと思っている」と語っている。過去に横浜F・マリノスで、下のカテゴリーから加わった選手が伸びていく姿を見てきたからこその言葉でもある。

 「例えば日本代表とマッチアップしたとき、びびったらそれまで。一歩引くのではなく、立ち向かっていくことで『俺、こんなこともできるんだ』という能力が引き出される。その環境にいるからこそ成長できますし、もっともっと成長したいという気持ちにもなれると思います」

松橋監督を中心にピッチ上でミーティングを行う新潟(Photo: ©ALBIREX NIIGATA)

「ゴールを奪う、ゴールを守ることが本質」

 当然、選手たちの意識も高まっている。「J1昇格」という重たい蓋を開けたことで、視界が大きく開けた。昨季終了後に開催されたW杯カタール大会に刺激を受けた選手も多い。「日本代表に選ばれたい」「J1でタイトルを取りたい」「ACLに行きたい」と、彼らが口にする夢も広がった。

 選手はシーズンオフに入る前、安野努フィジカルコーチからジムトレーニングとランニングのメニューを渡された。誰もが真面目に取り組んできたことは、キャンプ序盤から軽快に動けている姿からも明らかだった。

 安野フィジカルコーチによれば「体脂肪など身体組成的に、シーズン中のベスト状態で入ってきた選手もいますし、キャンプ2日目のスピードテストで90〜95%まで出せていた選手が多くいます」と、数字にも彼らの意識の高さが表れているという。

 キャンプは1年間戦えるベースをつくる期間だからこそ、フィジカル的に負荷のかかるメニューが多いが、当初設定していた走行距離や加速・減速の目標値は、あっという間に超えたという。そのため選手がバテないように配慮しながら、上方修正を図っているところだ。

 昨季、アルベル前監督から松橋監督が受け継いだ、組織的で攻撃的なサッカーのスタイルは、これまで3年かけてチームに浸透した。その上で、今季の目標として指揮官が掲げたのは、「自分たちのスタイルを、どこまで“究極”に持っていけるか」。そこに導くためのアプローチとして、指揮官がキャンプ序盤に伝えたのは、まず「個人の色を出す」ことだった。「意識の高い個人が集まってチームになるので、まずは自分のことをしっかりやることが大事。組織が先行しすぎて自分のやるべきプレーや特徴が出ないのは、その選手本来のプレーではないので、どんどんトライしてほしい」と、本来の自分の感覚を出すことを促した。

 またキャンプ最初の練習試合となった1月25日のFC今治戦の前には「サッカーとは、ゴールを奪う、ゴールを守ることが本質。ビルドアップやポゼッションといった戦術はもちろん大事だが、それが本質を超えてはならない」と伝えた。

 果たして、試合は6-0で勝利。鈴木孝司の冷静な1対1を制した先制点にはじまり、田上大地や長谷川巧らDFも豪快なボレーシュートでゴール。失点も0に抑えた。選手を入れ替えながら行われた30分×3本の試合を通し、各自が以前よりも積極的に「個人の色」を出しつつ、「本質」が表現できた試合となった。スタイルや戦術という型にはまっていくのではなく、まずは思い切り自分を出すこと。そこから新たな可能性も課題も見えてくる。

今治戦で大量得点の口火を切る先制ゴールを挙げた鈴木(Photo: ©ALBIREX NIIGATA)

鈴木孝司の決意。千葉和彦の覚悟

 目に止まるのは、ベテランの覚悟の強さだ。……

残り:2,314文字/全文:4,597文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

TAG

アルビレックス新潟

Profile

野本 桂子

新潟生まれ新潟育ち。新潟の魅力を発信する仕事を志し、広告代理店の企画営業、地元情報誌の編集長などを経て、2011年からフリーランス編集者・ライターに。同年からアルビレックス新潟の取材を開始。16年から「エル・ゴラッソ」新潟担当記者、サポーターズマガジン「ラランジャ・アズール」編集を務める。

RANKING