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リヨン復帰でひと騒動。「物言うフットボーラー」ロブレンの10年越しの復讐劇が始まる

2023.01.13

メディアや自身のSNS上での過激な発言で知られるクロアチア代表CBデヤン・ロブレン。3位と大躍進したカタールW杯後もお馴染みの姿は変わることはなく、10年ぶりの復帰が決まった新天地リヨンでも、さっそく物議を醸している。長束恭行氏にその背景を解説してもらおう。

10年前、初の国外移籍のリヨンで受けた「戦犯扱い」

 2013年8月20日、CL予選プレーオフ第1レグで古巣のリヨンがソシエダに本拠地で敗れるや、デヤン・ロブレンは自分のtwitterを通して辛辣(しんらつ)な皮肉をぶちまけた。

 「今回も敗北の罪を俺に被せるがいい」

 3年半を過ごしたフランスは、若きクロアチア代表DFにとって苦い思い出ばかりが残っている。2010年1月に移籍金800万ユーロでディナモ・ザグレブから移籍。だが、抜群のフィジカル能力で相手エースを完全に封じ込めても、翌節には退場処分や敗戦に繋がる凡ミスを繰り返した。そんな彼を、フランスメディアは高額投資に見合わぬ戦犯として何度も吊るし上げた。

 「20歳の選手が『なぜ彼を獲得したんだ?』と書かれた記事を読む光景を想像してくれ。その疑いが本当だと思い始めてしまう。リヨンで僕は全力を出し切った。しかし、批判は収まらず、不幸な時期にはあっさりケガをしてしまうもの。『ケガしてくれて神に感謝する』なんて言葉は聞くに耐えられなかった。だから、今回の移籍は最良のタイミングだったんだ」

 冒頭の文章は、『月刊フットボリスタ 2013年11月号』の特集「フィットする法則」で取り上げたロブレンの項の書き出しだ。今から10年前、悪夢のような日々をフランスで過ごしていたクロアチア代表CBは、ドーバー海峡を越えてサウサンプトンに移籍。新たな環境に溶け込むべく、集合日よりもずいぶん早く現地に渡るほどの意気込みだった。マウリシノ・ポチェッティーノ監督の下、心身ともに充実した13-14シーズンを送ったことが彼のキャリアを好転させる。

 ロブレンの市場価値は1年間のうちに跳ね上がり、翌シーズンには2000万ポンドの移籍金でリバプールにステップアップ。6シーズンの在籍中にCL優勝やプレミアリーグ優勝を経験した彼は、ファンの間でも“ネタキャラ”として愛される存在だった。ロシアW杯準決勝でイングランドを倒した直後に「俺のことを世界最高のCBの1人として認識すべきだ思う」と自画自賛しても笑って許されたのは、「ロブレンがどこから来たのか?ロブレンは何者か?」をみんなが知っていたからだ。

デリケートな政治問題にも自身の思いのままに振る舞う

 しかし、「ロブレンはどこへ行くのか?」は本人のみぞ知る。2020年7月、ゼニト・サンクトペテルブルクに移籍。ロシアW杯ではクロアチア代表がサンクトペテルブルク近郊を拠点にしたこともあり、彼にとっては特別な思い入れがある街だ。ウクライナ侵攻に対する制裁としてロシアが欧州サッカー界から締め出された際は、ゼニトのキャプテンとして恐れることなく声を上げた。

 「俺にはその決定が理解できない。スポーツと政治は分離されるべきだ。ロシアの地を去るようにと多くの人々からプレッシャーを受けているが、今起きていることは俺の罪でもなければゼニトの罪でもない。ロシアに対する反感は何も持っていない。ここで俺はガッチリと受け入れられ、新たな友人も生まれたんだ」

 ロブレンは戦争難民としてボスニアの故郷を3歳で追われた“過去”があり、クロアチアが積極的にウクライナを支援している“現在”を踏まえれば、ウクライナ戦争の終わりが見えないことでロブレンの“未来”は不確実で不透明な状態だった。

 そんな中、33歳で迎えるカタールW杯は控えに甘んじると思いきや、開幕前の会見でクロアチア人記者に「代表チームでファーストプランにない君は今大会が最後になるのか?」と聞かれたことで猛然と奮起し、キャンプ中にレギュラーを奪回する。

 正真正銘の「世界最高のCB」に迫るヨシュコ・グバルディオルとコンビを組み、得意のエアバトルでは高い勝率を誇った。ラウンド16の日本戦では同点ゴールをアシストするなど、大会全体を通して存在感を発揮した。

 モロッコとの3位決定戦は疲労のせいで出場を回避したが、試合後のミックスゾーンではクロアチア人記者と再び“デュエル”に挑む。祝福をせずにコメントだけを要求したメディアの姿勢にムカッときてスルーすると、笑い声が聞こえたとして激昂。踵(きびす)を返したロブレンは「何を笑っているんだ? 恥を知れ!」と暴言を吐いた。それによりクロアチアサッカー協会の広報は謝罪に追い込まれている。……

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クロアチア代表デヤン・ロブレンリヨン

Profile

長束 恭行

1973年生まれ。1997年、現地観戦したディナモ・ザグレブの試合に感銘を受けて銀行を退職。2001年からは10年間のザグレブ生活を通して旧ユーゴ諸国のサッカーを追った。2011年から4年間はリトアニアを拠点に東欧諸国を取材。取材レポートを一冊にまとめた『東欧サッカークロニクル』(カンゼン)では2018年度ミズノスポーツライター優秀賞を受賞した。

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