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あのスタジオは良い劇場と同じ空気感だった。平畠啓史が語るスカパー!

2022.09.27

この記事は『スカパー!』の提供でお届けします。

「ドイツ ブンデスリーガ」「JリーグYBCルヴァンカップ」「天皇杯 JFA 全日本サッカー選手権」をはじめとするサッカー中継の他、先月には『ブンデスリーガジャパンツアー2022 powered by スカパーJSAT』の開催を発表し、日本サッカー界で確かな存在感を示し続けるスカパー!

そんな同社のサッカー番組で、独自の角度からサッカーの面白さを伝え続けているのが“Jリーグウォッチャー”として知られる平畠啓史氏だ。「Jリーグアフターゲームショー」を筆頭に、現在も「平畠啓史の2022JリーグYBCルヴァンカップハイライト」に出演するなど、スカパー!のサッカーコンテンツを内外で見守ってきた平畠氏に、過去の思い出やこれからのスカパー!に期待することなど、さまざまな話を伺った。

きっかけは“1枚のTシャツ”だった!

――最初にスカパー!サッカーと平畠さんの接点ができたのはJ SPORTSの『Foot!』だったと思います。そのきっかけを教えていただけますか?

 「まず、『Foot!』という番組が凄く好きだったんです。生放送じゃないのに、ちゃんと放送時間に合わせて家に帰っていたぐらい好きだったので、本当に楽しんで見ていました。当時の『Foot!』はいろいろグッズを作っていた中で、特にTシャツが欲しいなと思っていて、『これは自分で買わな好きちゃうやろ』と自分に問いかけて、ネットか何かで申し込んで買ったんですよね。それでTBSのJリーグ中継の副音声のゲストに呼ばれた時に、そのTシャツを着て行ったんです。ああいう中継って試合の前に15秒ぐらい顔出しがあるんですけど、正直自分の姿が映るのはそこだけなんですよ(笑)。そこに僕が普通に『Foot!』のTシャツを着て出ていたら、それを『Foot!』のスタッフの方が見ていて、『平畠が「Foot!」のTシャツ着てるぞ。番組好きなのか?』という感じで、有楽町の喫茶店で打ち合わせしたんですよね。それがCSのサッカー関係の人と初めて会った時でした」

――僕もその時の有楽町の喫茶店に行った1人です(笑)

 「今は“Jリーグウォッチャー”とか言われていますけど、そこがなかったら、今頃そんな肩書も名乗っていないと思うので、そこから全部繋がっているんです。きっかけは偶然でしたけど、その出会いをありがたいと思う気持ちはずっと続いていますね」

――平畠さんとお会いしてみたら本当にスペインサッカーに詳しくて、僕らも衝撃を受けました。

 「その頃はSNSのように発信をする場も今ほどなかったので、もう“貯める”ばかりですよね。『ベティスいいなあ』『ビルバオのジェステ、上手いなあ』と思っても、それは誰かに言うためではなくて、自分のために見ていただけだったので、『Foot!』のスタッフが来てくれた時に、『ああ、この人たちはこれを話してもわかる人たちなんや。日本にこんな人らがおるんやな』という喜びがありましたね(笑)。スカパー!やJ SPORTSは、その温度で仕事ができる場なんです」

――「こんな場所が日本にもあるんだ」と。

 「自分が20歳ぐらいの頃、こんなに海外サッカーは見られなかったですけど、もし見ていたとしたら『将来はスカパー!で仕事したいな』とか『あそこの世界に行ってみたいな』と思っていたかなって。それこそ初めて『Foot!』に出た時も、『おお!倉敷保雄やんけ!意外とデカいな!』ってなりましたし(笑)、スカパー!に来るようになってからも『あ、控え室に“西岡”って書いてあるぞ』『“八塚”がこの部屋におるんや』みたいな」

――テレビの中の人たちですよね。

 「そうそう。倉敷さんは見たことがありましたけど、西岡(明彦)さんや八塚(浩)さんはそんなに見たことがなかったので、隣の控え室から八塚さんの高い声が聞こえてきたら、『おお、“八塚”が喋ってんで。ホンマに生きてるんや』って。それが楽しかったですね」

スタジアムで感じた「スカパー!の人」という認識

――2006年にはスカパー!でドイツW杯のハイライト番組を担当されています。あの番組にはどういう思い出がありますか?

 「まずスカパー!で仕事することがそれまでなかったので、単純に嬉しかったです。『ああ、スカパー!に行けんねや』と。ハイライト番組もやりたかったですしね。W杯って1日に3試合あったら、だいたい1時間ぐらい間が空くんです。だから、1試合目を見てから家を出て、その1時間の間にスタジオに着いて、2試合目を見て、ゴハンを食べて、3試合目を見てから本番に行くような感じにしていましたね。その頃はまだネット経由で見るようなツールもなかったので、試合を録画して、DVDに焼いて、出先にDVDプレーヤーを持って行って試合を見ると、録画できていないことが結構あるんです。そのショックたるやね(笑)。それからは家を出る前に1回再生して確認してとか、そんなことばかりやっていましたね」

――あのW杯のハイライト番組が『Jリーグアフターゲームショー』に繋がっていったのだと思いますが、最初の頃はどういう想いであの番組に臨まれていましたか?

 「そんなにJリーグのことも知らなかったですし、『ここで中途半端なことをしたら、見ている人にバレるな』という想いは強かったです。だから、まず空いている時はスタジアムに行って、平日は試合を見ると。結局は今もそれをやっているんですけど、その始まりですね。そもそも自分も好きで見ていたチャンネルなので、『この人、あまりサッカー見てないな』ってわかるんですよ。ということは、自分のこともわかってしまうということなので、そこに対するプレッシャーは凄くありました。だからこそ、まずはサッカーを覚えようと思いましたし、『スタジアムに行こう』って。

 最初に行ったスタジアムは山形でした。シーズンも始まったばかりの頃で、雪も降っていて寒かったんですよ。つま先も痛いんですけど、『これは行かなアカン』と思って、それからスタジアムに行き始めたんですよね。残念ながら亡くなられた久慈さんという凄く人付き合いの良い方がスタッフにいらっしゃって、久慈さんが『平畠さんが行くのでお願いします』と取材先に言ってくれたので、みんな良くしてくれたんですよ。あの人を見ていて、『関係者の人とはこういうふうに関わりを作ったらいいんやな』と教えてもらった感じはあります。それは勉強になりましたね」

――今はスタジアムに行くと『ひらちゃん!ひらちゃん!』と大人気ですけど、そうなっていったのはいつ頃からでしたか?

 「番組が始まって半年か1年ぐらい経ったら、もうスカパー!の苦情もいっぱい言われましたね(笑)」

――ああ、もうサポーターからすれば“スカパー!の人”って感じなんですね(笑)

 「『なんであのチャンネルでこの試合やってくれないんですか』とか、『この時間の組み方だと、この試合が見られないじゃないですか』とか、そういうのを全部言われるんです。その時に『そうか、オレを“スカパー!の人”って認識してくれてんねや』と思えたのは凄く嬉しかったです。自分にとってはサポーターの人たちと話すことに凄く意味があって、『ああ、この人はこういうところでサッカーを面白いと思ってんねや』とか、『こんなことに喜んだり、腹が立ってんのか』みたいなことを知れて、サッカーの見方の幅が凄く広がりましたね。やっぱりスカパー!みたいにちゃんとお金を取っているからこそ、求められるものも高い反面、ちゃんと提供しているものを認めてくれれば受け入れてくれるので、『スカパー!のお客さんは良いお客さんやな』と思ったことは何度もありますね」

川淵三郎・元Jリーグチェアマンからもらった言葉の意味

――平畠さんの色がよく出ていたのは、『Jリーグアフターゲームショー』の中の“今日イチ”というコーナーですよね。

 「僕はたまにサッカーを見ながら1人でケタケタ笑ってしまうことがあるんです。それを聞いたスタッフが『アイツ、サッカー見てないぞ。何してんねん?』と楽屋を見に行ったら、テレビの画面にサッカーが映っていて、『え?何してんすか?』と(笑)。それで『いや、ここでこういうシーンがあって、それがオモロかってん』みたいな話をして、そういうところからのスタートですね。でも、いわゆる『珍プレー好プレー』みたいなものをやりたかったわけではないので、誰かが空振りしたり、ずっこけたりというのは一切やらなかったですし、面白いけれどもそのチームが0-3で負けていたら、『メッチャオモロイねんけど、今日はやめとこう』とか、ただ単に面白いからだけでやっていたコーナーではないですね。

 僕はJリーグに『珍プレー好プレー』がないのは、川淵(三郎・元Jリーグチェアマン)さんが『サッカー選手を笑いものにするような番組はやめてくれ』と言ったという話を聞いていたんです。だから、川淵さんにお会いした時に、絶対に怒られると思っていたんですよ。もちろん選手をバカにはしていないですけど、面白おかしく伝えているわけじゃないですか。それで『初めまして。平畠です』と挨拶したら、川淵さんが『見てるよ。アレ、面白いね』と言ってくれたんです。『ああ、良かったな』って。川淵さんがある意味で認めてくれたことは、本当に嬉しかったですね」

――番組が10年間続いた中で、Jリーグファンの中に“ひらちゃん”という立ち位置が浸透したことと、それこそ全国中にサッカーを通した知り合いができたことは、今の平畠さんにとってどういう意味がありますか?

 「基本的に僕はどんどん人と出会って、友達が増えていくタイプではないんですよ。だけど、サッカーの仕事をするようになって、『ああ、意外とそういうのも嫌いじゃないんやな』っていう自分に気付いた所はあるかもしれないです。群馬の試合を見に行ったら『ひらちゃん、これ食べてって』ってスタジアムグルメの人がいろいろ出してくれたりとか、熊本に行く時には『ひらちゃん、空港まで迎えに行くね』って来てくれる人がいたりとか、凄く不思議です。もしあの番組をやっていなくて、今の歳になっていたら、ああいう人たちとは絶対に知り合えていないですからね。仙台で地震があったら電話して『大丈夫ですか?』と言えるような人たちが自分の周りにいるのは、やっぱり凄く不思議ですよね」

Jリーグの仕事は多くの出会いをもたらしてくれたと平畠氏は語る

「僕たちからすれば『スカパー!と言えばサッカーやろ』みたいなところはある」

――今シーズンはスカパー!でルヴァンカップのハイライト番組「平畠啓史の2022JリーグYBCルヴァンカップハイライト」を担当されています。あの番組はどういう楽しみを持ってやられていますか?

 「凄く良い機会を与えてもらっていますね。ルヴァンカップってリーグ戦で出ないような選手が出たり、ルヴァンきっかけでリーグ戦の出番が増える選手もいて、それを見られると凄くラッキー感もあるので、『ああ、見といてよかったな』とか『ここからああなって行くんやな』というのもわかりますし、シーズンを追いかけていく上でもかなり重要かなとは思います」

――それまでプレーの特徴がわからなかった選手を1試合見られるようなお得感もありますよね。

 「『ああ、こういう選手なんや』とかね。監督さんもルヴァンカップという場を使って選手を試すこともあると思いますし、選手もプレーで試すことがあるんじゃないかなって。リーグ戦では他の選手に迷惑がかかるからあまりやらないけど、『ちょっとここで試してみよう』みたいなことがあるんじゃないかなと。そういうのも見つけたいので、それは気にするように見ています」

――今シーズンの終了後には、フランクフルトに浦和レッズとガンバ大阪が挑む『ブンデスリーガジャパンツアー2022 powered by スカパーJSAT』が開催されます。そこに向けての期待はいかがですか?

 「面白いと思いますね。フランクフルトというのが“ええ温度”かなって。たとえばPSGを見ても、フランスリーグまでは見えてこないし、バルセロナが来ても、スペイン全体の温度感まではわからないわけで、むしろビルバオとかベティス、ソシエダとかが来てくれた方が、『オレらが知らんチームにも、こんな上手い選手がおんのか』って感じるはずで、そういう意味ではフランクフルトってリアルですよね。ブンデスの今がわかるということと、そこにいる長谷部選手と鎌田選手の立ち位置を見れば、『ブンデスで本当に必要な選手は日本人でもこういう選手なんだな』というのがわかるかなって。それが凄く意味がありますし、スカパー!らしいなと思います。もちろんスーパープレーも見たいですけど、『デカいヤツおるなあ』とか『ヘディング強いんやなあ』とか、そういうのが見られたらいいですよね」

2021-22のELを制したアイントラハト・フランクフルト

―平畠さんとスカパー!サッカーとの関わりも15年近くになりますが、ここからスカパー!とサッカーとの向き合い方のような部分に対しては、どういう想いがありますか?

 「たとえば良い劇場って『そこに行ったらオモロイ情報があるぞ』とか『あの芸人さんと話すのがオモロイぞ』とか、出番じゃない芸人さんも来たりするんです。そういう劇場って活気があるんですよね。スカパー!の良いところって、スタジオで中継も何試合かやっているので、そこで実況や解説の人と交流が生まれるじゃないですか。僕がスカパー!に来るのが好きだったのは、自分の仕事で来ている解説者の人とも喋りますけど、横のブースにはセリエAとかの中継をやる人が来ているので、別に用事もないのに顔を出すわけですよ。そこでちょっと喋ったりすることが凄く大きかったんです。

 もちろんスカパー!を見ている人に喜んでもらえるコンテンツをもっと作っていかないといけないとは思うんですけど、そういうサッカーコンテンツを作ってくれたら、演者側もその交流で楽しめるというか、そこもスカパー!の1つの良いところかなって。今は他にもサッカーを伝えるところは出てきていますけど、僕たちからすれば『スカパー!と言えばサッカーやろ』というところはあるので、ずっとやり続けていってほしいですよね」

Photos: Ryo Kubota , Getty Images

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スカパー!平畠啓史

Profile

土屋 雅史

1979年8月18日生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社。学生時代からヘビーな視聴者だった「Foot!」ではAD、ディレクター、プロデューサーとすべてを経験。2021年からフリーランスとして活動中。昔は現場、TV中継含めて年間1000試合ぐらい見ていたこともありました。サッカー大好き!

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