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制約主導型アプローチ実践編:FA発信のガイドライン、4Dと3Rとは?

2022.04.15

近年、欧州各国のコーチングライセンスでも導入され始めている「制約主導型アプローチ」。中でもFA(イングランドサッカー協会)は2017年にさっそくガイドラインを発信するなど、早くから現場への普及を促進している。当時現地でU- 8から大学女子まで幅広いカテゴリーのチームを指導していたマーレー志雄氏に実践事例を紹介してもらおう。

※『フットボリスタ第89号』より掲載。

FA 推奨の「制約主導型アプローチ」

 「制約主導型アプローチ」とは、スキル獲得の理論であるエコロジカル・アプローチを基にした理論である。その研究目的は提唱者の一人であるキース・デイビッズいわく「学習者のスキル獲得に影響を与え、相互作用する制約の性質を明らかにすること」で、「選手」「環境」「タスク」の3つが互いに影響し、学習者の振る舞い(≒スキル)を発現させるとされる。

 まず「選手」とは選手個人の特徴である。技術レベル、身体能力、心理状態、そのグループでの立場などが含まれる。「環境」は天候やピッチ状況(土、天然芝、人工芝、屋内)など、プレーする状況を指す。「タスク」には練習のルール設定やピッチの広さ、人数、道具の使用などが当たる。例えばフットサルでは、5対5、屋内、床、跳ねにくいボール、小さなピッチに小さなゴールと、サッカーとは異なる点が多い。これらの「環境」「タスク」の差が、フットサル出身者が見せる足裏のボールコントロールのように「選手」のスキル発揮に変化をもたらす。こうした相互作用を踏まえ、トレーニングをデザインしていくのが制約主導型アプローチだ。

 ただ、環境面の制約をコントロールするのは難しい。屋内か屋外、土か芝で練習するかの選択もできなくはないが、予算や施設の兼ね合いで完全に思い通りに調整するのは難しいだろう。天候が操れないのは言うまでもない。そのため指導者が最も介入しやすいのは、「タスク」となる。例えば、判断を速くするためにピッチを狭くしたり、タッチ数制限をつけるのは代表的な「タスク」の制約だ。こうして意図して獲得したいスキルを狙って条件を設定することが制約主導型アプローチになる(これが難しい)。

 制約主導型アプローチがイングランドで普及し始めたのは2016年。当時、指導者ライセンスの内容を従来の技術習得に重きを置いた指導から、ゲーム形式を中心に状況判断や攻守の切り替えが多く生じる練習を推奨していく改変を進めていたFA は、その一環として2017年に制約主導型アプローチのガイドラインを発表した。その内容を、筆者が現地で試行錯誤した経験談や導入例を交えて解説していく。

方向性、定義、判断、相違の4Dと制限、関連、報酬の3R

 まずガイドラインには4つの「D」がある。1つ目は「方向性」(Direction)だ。チーム、または選手が得点を取るために攻めるべき方向性を示す。得点はゴールのみならずエンドゾーンやターゲット選手を使ってもいい。方向づけを行うのは、トレーニングにおいて攻撃と守備の原則が必須となるからだ。

 2つ目の原則は「定義」(Definition)。ピッチ上のどの状況を再現するかを定めることで、練習と試合を明確に紐づけられるということだ。例えばゴール前の守備であれば自陣後方、ゴールキックからのビルドアップであれば自陣全体を切り取る必要がある。すべてにおいてフルコートからそのまま抽出すればいいわけではなく、選手の人数に沿った形が適している。

 3つ目は「判断」(Decision)だ。選手に何かしらの認知的負荷があるかどうか。例えば、相手がどこいるのか、シュートを打つのか、ボールキープをするのか、パスを出すのか、誰にパスを出すのかという決断力、問題解決力、洞察力、状況判断に応じて適切なアクションを実行できる状況設定をしなければならない。

 4つ目は「相違」(Difference)だ。トレーニングでは選手に対して同じテーマを違った形式で取り組むこともあれば、同じ形式で違ったテーマを提供することもできる。前者では例えばパス。コートサイズの大小を変えることでショートパスとロングパスの選択肢の有無が変わってくる。後者は5対5のゲームの中で、一人はインターセプト、もう一人は縦パスを入れるという個々人に沿ったテーマを与えられる。この4D は必ずトレーニングに取り入れなければならないわけではないが、部分的にでも参考になるはずだ。

 次に考えなければならないのは、テーマに沿った変数。FA のガイドラインではピッチサイズ、配置、パラメーター、そして制約の4つを考慮する。ピッチサイズは大きくするのか小さくするのか、または広くするのか狭くするのか。選手の配置は普段の戦術に照らし合わせて、テーマとすり合わせていく。パラメーターはピッチを区切ったり、エリアを定めることで選手の動きを誘導したりする。……

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制約主導型アプローチ育成

Profile

マーレー志雄

1993年、滋賀県生まれ。日本で3年間の指導経験を積んだ後、イングランドで指導者ライセンスを取得するためにサウサンプトン・ソレント大学のフットボール学科へ。現地でU-12の男子チームから大学の女子チームまで幅広いカテゴリーを指導し、現在は同大学のスポーツ科学&パフォーマンス指導学科で修士課程に進んでいる。Twitter:@ShionMurray