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現地エティハド・スタジアムで目撃した白熱の「スキル&ゴールショー」【マンチェスター・シティ 2-2 リバプール】

2022.04.13

マンチェスター・シティとリバプールが熾烈な優勝争いを繰り広げているプレミアリーグ。その両雄が首位の座をかけて激突した第32節は、序盤から互いに一歩も譲らぬ一進一退の展開を繰り広げ、2-2のドローで幕を閉じている。白熱の攻防を現地エティハド・スタジアムで見届けた学生アナリストの白水優樹氏に、その雰囲気をレポートしてもらった。

 マンチェスター・シティの宝、フィル・フォデンが生まれ育ったストックポートの駅を電車で通り過ぎると、右手側の車窓からエティハド・スタジアムが姿を現す。ビルの建ち並ぶ都市部から外れたところにそびえ立つ「非日常的」な建築物は、異質な存在感を放っている。

 そして今日、そこで世界最高のフットボールが繰り広げられるのかと思うと、なんとも言えない高揚感が込み上げてくる。それだけではない。プレミアリーグ優勝をかけた大一番だ。本拠で迎え撃つシティが負ければ首位の座をリバプールに明け渡し、敵地に乗り込むリバプールが負ければ勝ち点差が4に広がるという、タイトルをかけた事実上の決勝戦だ。

 刻一刻とキックオフが迫る中で、両チームを応援するファンやサポーターの間では緊張感が高まるばかり。つきまとう不安をかき消すためだろうか。隣でシティのユニフォームを着たおじさんの席には、ビールの空き缶が2本積まれていた。まだ昼の12時である。

 決戦の舞台、エティハド・スタジアムの収容人数は約5万5000人だが、普段は空席が目立つことで有名だ。完売になることは滅多になく、現地イングランドでは「empty」(空)にかけて「Emptihad Stadium」とも揶揄されている。実際にCL準々決勝の第1レグ、アトレティコ・マドリー戦でも比較的余裕でチケットは買えた。それでも、このリバプール戦は座席が売り切れになるほどの注目を集めていた。

 シティを応援するというよりは、世界で一、二を争う両チームのフットボールを見届けるため、多くのフットボールファンがマンチェスターに集結したのだろう。かくいう私もその一人だ。そんな我われを横目に、中心地では地元の熱狂的なシティサポーターがしきりにチャントを歌ってはスカイブルーの発煙筒を焚き、イギリスではお馴染みの曇り空を深い青に染め上げていた。

互いに守備戦術を無効化する「スキルショー」

 そしてついに、運命の一戦が幕を開ける。私の席は東側スタンドの3階。ピッチを俯瞰で見ることができる特等席だ。両指揮官ペップ・グアルディオラとユルゲン・クロップの「戦術合戦」を嗜むにはうってつけである。[4-3-3]という同じシステムながら、整然とした配置からショートパスを主体に組み立てるシティと、猛烈なハイプレスで追い詰めるリバプールという構図が繰り広げられ、ペップとクロップが手を打ち合う――そんな戦いを楽しもうと思っていたが、その期待は裏切られることになった。

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白水 優樹

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