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【独占インタビュー前編】プレミアリーグで感じたドイツのイングランドの違いとは? ドイツ気鋭の指導者ヤン・ジーベルトが語る

2022.06.11

育成の名門であるボーフムやドルトムントの下部組織で指導をしたヤン・ジーベルトは、2019年には驚きの抜擢を受けてハダーズフィールドの監督に就任しプレミアリーグの舞台で指揮を経験。現在はマインツの育成責任者を務めている。ユルゲン・クロップ、トーマス・トゥヘル、ユリアン・ナーゲルスマンら優秀な指揮官が次々と輩出されているドイツのトップレベルを知る39歳の指導者に、指導者養成コースで同期だった中野吉之伴さんが現在の育成事情やイングランドとドイツサッカーの違いについて話を聞いた前編。

――まずヤンのマインツにおける役割を教えてもらってもいい? 育成アカデミーの指導者チーフという肩書だよね。

 「1つ目は、マインツのプレーフィロソフィをチェックし、プレー面での指針と育成チーム全体の成長に寄り添うこと。2つ目は指導者のサポート。定期的にフィードバックをして、マインツのプレーアイディアをどのように解釈し、どのように取り組んでいるかを話し合う。

 3つ目は選手の成長過程をチェックすること。それぞれの選手がどのように成長しているか、成長曲線はどうなのか、どこに長所があって、どこにまだ課題があって、どこに成長が見られるのか。

 4つ目はU-17、U-19、U-23のチーム編成。

 5つ目はトレーニング。U-17からU-23までのトップレベルの選手を僕が指導している。そうすることで、トップチームへの確かな橋渡しができるようにするのが僕の役割だ。だからトップチームの監督とSDとは頻繁に意見交換を交わしているよ」

――そのトップチームの監督ボー・スベンソンとの関係性はどう?

 「いいよ、すごくいいね。僕とボーはとてもうまく関わり合えていると思う。お互いにマインツにはどんな選手が必要なのかをしっかりとわかっている。僕もボーもブンデスリーガをはじめ、トップレベルのリーグで監督をしたことがある。僕にはプレミアリーグやドイツサッカー連盟での経験があるし、ボーにはブンデスリーガやオーストリアでの経験があるのは大きいと思う。僕らはトッププレーヤーに必要なことをわかっている」

――2021-22シーズン、マインツはブンデスリーガで素晴らしいパフォーマンスを見せている(編注:取材時はシーズン中)けど、ヤンにとって驚きだった?

 「いや、そんなことはないよ。 僕らは“マインツらしさ”が戻ってくるプロセスを見てきているからね。マインツらしさとは何だろう?というところからスタートして、確かな基盤を作り上げてきた。確かなマネージメントがされ、慌てることなく落ち着いた環境で取り組めて、選手を信頼するクラブとしてね。マインツにとって、プロのトップチームと育成アカデミーは別の組織ではない。僕らはどちらも、同じマインツのDNAを持つ同志なんだ 」

トップチームは最終的にリーグ8位でシーズンを終えている

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インタビューヤン・ジーベルト

Profile

中野 吉之伴

1977年生まれ。滞独19年。09年7月にドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを取得(UEFA-Aレベル)後、SCフライブルクU-15チームで研修を受ける。現在は元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU-13監督を務める。15年より帰国時に全国各地でサッカー講習会を開催し、グラスルーツに寄り添った活動を行っている。 17年10月よりWEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」(https://www.targma.jp/kichi-maga/)の配信をスタート。

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