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オーナー資産凍結でチェルシーはどうなるのか?制裁の大ダメージと、それでも「諦めない」トゥヘル一行にファンが見習うべきもの

2022.03.14

ロシアのウクライナ侵攻と並行して進む、英国政府による対“ロマン帝国”制裁。大きな違いは正当な理由の有無だ。前者の行為はまったくもって無分別だが、後者には前回のコラムでも述べた通り、ロマン・アブラモビッチ政権下の19年間でメガクラブと化したチェルシーのファンでさえ、その大半が人道的には理解できるはずの理由が存在する。3月10日に決まったロシア人オーナーの英国内資産凍結も、西ロンドンの“ブルーズ”が見舞われた青天の霹靂などではない、正しい成り行きだ。

アブラモビッチの“所有物”として被る損失

 制裁発表の翌日、『デイリー・ミラー』紙の第1面には、破壊されたウクライナの街を背景に、ロシアのウラジミール・プーチン大統領とチェルシーを所有するロシア人オリガルヒの写真。そして、「ブラッド・ブラザーズ(血の誓いを交わした義兄弟)」との見出し。今回ばかりは、大衆紙のやり過ぎとも言えない。リズ・トラス英国外相も、「プーチンとの密接な関係」と「侵略行為への加担」を指摘し、「手にはウクライナの人々の血が染み付いている」と非難して処分の背景を語っている。

3月11日付『デイリー・ミラー』紙の第1面

 その数日前には、ユダヤ系の血が流れる者としてピースメイカー役を買って出たとの説も流れた。チェルシーファンの1人としては真実だと思いたい気持ちもあったが、結局はオーナー陣営からクラブ経由で発せられた「たわ言」だった。「100%の確信」を持って制裁を下した政府によれば、当人がウクライナに対して実際に取った行動は、3割弱の株式を保有する鉄鋼製造会社を通じてロシア軍戦車の生産に使われる素材を提供しただけになる。

 そのオリガルヒの“所有物”として制約を受けるクラブのダメージは大きい。117歳の誕生日に、強烈な一撃を頂戴することになってしまった。プレミアリーグをはじめとする国内外競技大会への影響を考慮し、チームとしての活動継続は今季の日程がすべて終了した後の5月31日まで許されているが、クラブとしては半身不随のような状態だ。

 当然、オーナーが持つ経営母体からの資金注入はあり得ない。その親会社が新たな収益を得る経路を絶つための資産凍結後は、観戦チケットとグッズの販売も禁止。すでに代金が支払われているシーズンチケットの所有者が2万8000人のスタンフォードブリッジでは、今季の残るリーグ戦で1試合約1万3000枚の観戦チケットを売りさばくことが許されない損失が、約250万ポンド(約3億7500万円)に上る計算となる。

次回のホーム戦チケットは「販売なし」に……

 加えて、メディアで「戦争屋の一味」とも呼ばれるようになったロシア人オーナーのクラブからは、国際ブランドがモスクワ市内の店舗を閉めるのと同様に、国際色豊かなスポンサーが手を引きたがっても無理はない。クラブの公式サイトにリストアップされていたスポンサー企業は16社。本稿執筆時点では、香港に本社を持つテレコム会社の『3(スリー)』と韓国の自動車メーカー『ヒョンデ』が、すでに当面のスポンサー契約停止を決めている。

 その一方で、チームとしての活動に必要な支出は続く。中でも最大の出費となる選手給与は、監査報告がなされている一昨季の時点でクラブ収益の70%相当。プレミア20チームの平均値よりは3%少ないが、推定年俸を基に計算すれば、週に約600万ポンド(約9億円)という規模だ。フットボールファイナンスの専門家たちは、オーナー資産凍結後の経営は「2、3カ月が限界」と見ている。経営破綻となればリーグからは通常の9ポイント剥奪処分が下され、マンチェスター・シティとリバプールに続く3位争いをリードしているチェルシーには降格の心配こそないものの、来季CL出場を意味するトップ4からの転落は免れ難い。

英国政府の「保護」とクラブ“競売”の行方

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ウクライナ侵攻チェルシービジネスロマン・アブラモビッチ

Profile

山中 忍

1966年生まれ。青山学院大学卒。在住も20年を超えた西ロンドンが第二の故郷。地元クラブのチェルシーをはじめ、イングランドのサッカー界を舞台に執筆・翻訳・通訳に勤しむ。著書に『勝ち続ける男 モウリーニョ』、訳書に『夢と失望のスリー・ライオンズ』『ペップ・シティ』など。英国「スポーツ記者協会」及び「フットボールライター協会」会員。