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3強の牙城崩しへ、そして逆転優勝の可能性はあるか。セビージャに浸透した強者のフットボールを分析する

2022.02.20

ラ・リーガで過去9シーズンにわたり続いてきたレアル・マドリー、バルセロナ、アトレティコ・マドリーによるトップ3独占が今シーズン、ついに崩れるかもしれない。その急先鋒となっているのがセビージャだ。首位レアル・マドリーにとって目下、優勝争いの最大のライバルとなっているアンダルシアの強豪は、ジューレン・ロペテギ監督の下でどんなサッカーを展開しているのか。東大ア式蹴球部でテクニカルスタッフを務めるきのけい氏に分析してもらった。

 日本では近年レアル・マドリーバルセロナアトレティコ・マドリーをスペイン3強と呼ぶことが多いが、その3クラブに次ぐ立ち位置を確固たるものとしているのがジューレン・ロペテギ監督率いるセビージャだ。ロペテギが就任した2019-20に3シーズンぶりにラ・リーガで4位となると(UEFAヨーロッパリーグでは優勝)、翌シーズンも4位、そして今シーズンはバルセロナ、アトレティコ・マドリーの低迷もあり第24節終了時点で勝ち点50の2位と、勝ち点4差で首位レアル・マドリーを追う好位置につけている。何人か主力選手の入れ替わりはありながらも、3季目となりすでにチームに浸透し切っているロペテギの戦術を掘り下げていく。

クリーンかつクローズドな前進

 まずはボール保持の局面について。現代サッカーにおけるトレンドとして前からボールを奪いに行く「ハイプレス」を行うチームが増えているが、セビージャはいわゆるゾーン1でハイプレスを剥がす「プレス回避」と、ゾーン2でボールを前進させる「ビルドアップ」(この記事ではそのように分類することとする)で選手の立ち位置やボールの動かし方が異なるので、分けて説明していこうと思う。

 セビージャの「プレス回避」は非常に多彩だ。フォーメーション表記をするならば[4-3-3]。ゴールキックの際あるいはGK、CBが自陣深い位置でボールを持ち、それに対し相手のプレスのスイッチが入った際、両CBはGKと同じ高さかつペナルティエリアの横幅よりやや狭めにポジションを取り、タッチラインから数m内側の両SB、中央のアンカーが同じくらいの高さを取る。インサイドハーフ(IH)の2人はハーフレーンに立ち、ウイング(WG)はタッチラインを踏んで幅と深みをとる。

 もちろん、GKやCBから直接アンカーにパスを入れて前を向くことができればプレス回避としては成功に大きく近づくわけだが、多くのチームはハイプレス時に相手の配置にマンツーマン気味で噛み合わせることによってボールホルダーへの距離を短くし、パスが出るや否やスプリントしてプレッシャーをかけてくる。アンカーとCBに配置を噛み合わせるハイプレスはもはや世界ではスタンダードと言って良いだろう。その中で、セビージャが工夫しているのが「中央の流動性によるSBの選択肢の確保」である。

 SBは対面の相手選手(主にSHかIH)がどこまで前に出てくるかをよく観察。CBから低めの位置に落ちてボールを受けた時、相手が中央へのパスコースを切りながらアタックしてくるなら、外に生まれる背後のスペースにIHがレーンをまたいで移動しボールを引き取る。あるいは深さを取っていたWGがタイミング良く落ちてきてパスを受け、内側を駆け抜けるSBがワンツーのリターンをもらってプレッシャーラインを突破する。

セビージャの「プレス回避」の図解①

 そうしたプレーを見せていれば、相手は縦を警戒し始める。ここでよく見られるセビージャ特有の形が、アンカーとIHの縦方向のポジションチェンジだ。アンカーの絶対的主力であるフェルナンドは、ハイプレスにおいて相手がマンツーマン気味に「人」を捕まえに来ることを逆手に取り、するすると自分のマーカーを引き連れて高い位置に進出していく。それに合わせてIHを務めるイバン・ラキティッチやジョアン・ジョルダンがアンカーポジションまで落ちてくることによってフリーとなり、SBからクリーンにボールを受けることができる。あるいはSBが縦を見せながら内側にドリブルで運び、相手の圧縮した守備組織の逆サイドでフリーとなっているCB(やSB)まで飛ばす。相手の横スライドが間に合う前にCBが運ぶドリブルをしてしまえば、プレス回避は成功である。

セビージャの「プレス回避」の図解②

 このように、中央の選手たちがレーンや高さを変えることによってSBに複数の選択肢を与える。非常によく訓練されていることがうかがえ、プレス回避はセビージャの強みの1つと言って良いだろう。もちろん、サイドで判断を間違えない主将ヘスス・ナバス(あるいは新加入のゴンサロ・モンティエル)とカルロス・アクーニャの質の高さは見逃せない。

 また、この流動性にさらなるアクセントを加えているのが昨シーズンの冬にアタランタから加入したアレハンドロ・ゴメスだ。主にスタートポジションは左WGだが、彼が起用される際は大きな自由が与えられ、実質的に4人目の中盤として機能。第2のアンカーとしてフェルナンドの脇まで落ちてきてフリーでボールを受けチームを落ち着かせたり(「ラ・パウザ」=小休止)、トップ下の位置に入り新加入のCFラファ・ミルや中央に入ってくる逆サイドのWGルーカス・オカンポスへのロングフィードのセカンドボールを収めたりといったプレーを見せる。191cmの高さを誇るCFラファ・ミルを獲得し、プレス回避の最終手段としてロングボールという選択肢も用意している点はさすがである。

バルセロナへ移籍したルーク・デ・ヨンクに代わるターゲットマンとして加入し、チームに選択肢を提供しているラファ・ミル

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ジューレン・ロペテギセビージャリーガエスパニョーラ

Profile

きのけい

本名は木下慶悟。2000年生まれ、埼玉県さいたま市出身。東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻所属。3シーズンア式蹴球部(サッカー部)のテクニカルスタッフを務め、2023シーズンにエリース東京FCのテクニカルコーチに就任。大学院でのサッカーをテーマにした研究活動やコーチ業の傍ら、趣味でレアル・マドリーの分析を発信している。プレーヤー時代のポジションはCBで、好きな選手はセルヒオ・ラモス。Twitter: @keigo_ashiki

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