SPECIAL

セルヒオ・アグエロ引退によせて。誰もが愛した、誰よりも「天真爛漫」なスター

2021.12.20

12月15日、不整脈で療養中のセルヒオ・アグエロが33歳の若さで現役生活に別れを告げた。インデペンディエンテ(2003-06)、アトレティコ・マドリー(2006-11)、マンチェスター・シティ(2011-21)、バルセロナ(2021)で公式戦685試合385得点、アルゼンチン代表(2006-21)で101試合42得点を記録した稀代のストライカーは、どんな「人」だったのか。他の「貧民街出身」選手ともまた違う、その誰からも愛された人柄や魅力について、デビュー当時から彼を知るChizuru de Garciaさんに綴ってもらった。

 天真爛漫(てんしんらんまん):飾らず自然のままの姿が溢れ出ているさま。生まれつきの素直な心そのままで、明るく純真で無邪気なさま。――三省堂 新明解四字熟語辞典

 セルヒオ・アグエロがどんな人なのかを語るのに、この「天真爛漫」という熟語ほど最適なものはない。飾り気がなく、子どものように無垢で純朴。それがアグエロの素顔であり、彼の魅力でもある。

 以前、アトレティコ・マドリーでプレーしていた頃のアグエロに密着取材をしたテレビカメラマンが、彼について「初対面の人ともすぐに打ち解けて、自分が気を遣うことも、相手に気を遣わせることもしないタイプ」と話していたことがあった。1週間ほどの間、朝から晩まで至近距離でカメラを回し続けてもまったく気にせず、終始、自然体のまま明るく振る舞い、しかも「とても人懐こくて、私がバリローチェの話をしてあげたらまるで小さな子どものように身を乗り出してきて、興奮した様子で聞き入っていた」というのだ。バリローチェは「南米のスイス」と呼ばれるパタゴニア地方の風光明媚な街で、アルゼンチンでは高校生の卒業旅行の行き先として人気の観光地だが、卒業旅行に行けなかったアグエロにとっては「一番行きたい憧れの場所」だったらしい。

 私はその話を聞いて驚いた。それまで自分が取材したことのある「貧民街出身の選手」たちはみな、極度に人見知りをする傾向にあったからだ。ファン・ロマン・リケルメも、カルロス・テベスも、デビューして間もない頃はメディアからカメラを向けられることを嫌い、見知らぬ人には絶対に心を開こうとしなかった。あのディエゴ・マラドーナでさえ幼少期は内向的で、今でも幼馴染たちが「当時のディエゴは殻の中に閉じこもっていた」と回想するほどだ。

2歳〜12歳、逸話だらけのクン少年

……

残り:2,661文字/全文:4,038文字
この記事は会員のみお読みいただけます

会員登録はこちら

プレミア会員 3つの特典

雑誌最新号が届く

会員限定記事が読める

会員限定動画が観られる

「footballista」最新号

フットボリスタ 2022年1月号 Issue088

08-09ペップバルサから2021川崎Fまで。革新チームで振り返る15年の戦術進化 [特集]2006-2021サッカー戦術ヒストリア フットボリスタ創刊15周年記念号

10日間無料キャンペーン実施中

TAG

アトレティコ・マドリーアルゼンチン代表セルヒオ・アグエロバルセロナマンチェスター・シティ

Profile

Chizuru de Garcia

89年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。