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ESLは頓挫したが…実は東欧でも議論されている統一リーグ構想の現状

2022.03.06

フットボリスタ第85号』より掲載

 ESL発足宣言により欧州サッカー界に激震が走っていた頃、ロシアやウクライナのメディアではかつて計画が進んでいたNIS(バルト三国を除く旧ソ連諸国)による独自リーグ構想に再び脚光が当てられていた。特にロシアでは政府の「ユーラシア経済連合」の動きをなぞるように、周辺国を取り込んだ「東欧版チャンピオンズリーグ」とも言えそうな統一リーグの実現可能性を探る議論が現在も潰えてはいない。

 ことの発端は2007年、UEFAのミシェル・プラティニ会長(当時)からの何気ない提案だった。その後しばらくして2012年には、CSKAモスクワやロシア代表を率いた名将ワレリー・ガザエフ氏が委員長となり「統一リーグ組織委員会」が発足。

 同年11月のディナモ・モスクワ対ゼニト戦でサポーターの投げた発煙筒がディナモのGKに直撃しゼニトが勝ち点剥奪の処分を受け、それに憤慨したゼニトの大株主であるガスプロムのアレクセイ・ミレル会長が新リーグの創設を支持したことが契機となった。競技レベルの向上と収益増が期待できるとしてロシアとウクライナの強豪クラブの会長たちがこれに続いて巨額を投じ、まずはこの両国間で2015年の開幕を目指していた。

 しかし、2014年に発生したウクライナ問題によりロシアとの関係が悪化。ガザエフ委員長は政治的要因により統一リーグ構想が事実上消滅したことを認めた。

 もっとも、ウクライナ代表の主将だったアナトリー・ティモシュクが「欧州カップ戦出場権についてUEFAと議論がまとまっていないし、選手やサポーターの移動距離が延びるのは大きな負担。プラスよりもマイナス面の方が多い」と疑問を呈していたようにそれ以前から反対の声は多く、いずれにしても計画が頓挫していた可能性は高い。

 過去2シーズン欧州カップ戦で惨敗が続くロシアでは、強化策の一つとしてウクライナを除いたCIS(ソ連を構成していた9カ国の共同体)による統一リーグの創設が専門家などから提案されている。国内リーグは経済の停滞により上位と下位のクラブ間格差が拡大。近年豊富な資金力で成長してきたカザフスタンやアゼルバイジャン、欧州である程度実績のあるベラルーシのトップクラブが参戦すればより激しい切磋琢磨が期待できるだろうという算段だ。中東に近い砂漠色のバクーから極寒のヌルスルタン、白夜のサンクトペテルブルグなどユーラシア大陸を縦横に移動するリーグはまさに「Back in the USSR」といった趣だが、現代サッカーにとってはあまりに広大。

 しかし、仮に欧州サッカー界の枠組みが解体するようなことがあれば、ロシアの主導により世界で最も過酷なリーグが誕生する可能性があるかもしれない。

Photo: Getty Images

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ESLビジネス

Profile

篠崎 直也

1976年、新潟県生まれ。大阪大学大学院でロシア芸術論を専攻し、現在は大阪大学、同志社大学で教鞭を執る。4年過ごした第2の故郷サンクトペテルブルクでゼニトの優勝を目にし辺境のサッカーの虜に。以後ロシア、ウクライナを中心に執筆・翻訳を手がけている。