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「独禁法で勝てる」が誤算。ESL構想失敗の本質を考える

2021.09.14

今からでも知っておくべきESL構想の論点#3

当初発表された枠組みでの実現はなくなったが、残留したレアル・マドリー、バルセロナ、ユベントスの3クラブによる次なる一手の可能性が報じられるなどいまだに“絶滅”はしていない欧州スーパーリーグ(ESL)構想。それ自体の是非はともかく、この構想が持ち上がるに至った背景に欧州サッカー界が直面するビジネス的な課題があることは知っておくべきであろう。そのいくつかの論点にスポットライトを当てる。

論点の3つ目は「法務」。欧州スーパーリーグ(ESL)構想の発表を受けて、FIFAやUEFAが「ESL参加クラブに所属する選手のW杯やEUROなどの参加資格剥奪」を宣告するなど、ESLの是非を語るには法務面の知識も必要だ。そこで山崎卓也弁護士に法務面から今回の騒動のポイントを解説してもらおう。

フットボリスタ第85号』より掲載

 わずか数十時間の「騒動」に終わった欧州スーパーリーグ。これは、世界最大の収入規模を誇る「UEFAチャンピオンズリーグ」のライバルリーグとしての立ち上げであったが、このように既存の大きなリーグに対してライバルリーグが立ち上げられる事例自体は、歴史上決して珍しいことではない。例えば、米国でも過去にNFLに対してAFLやUSFL、NBAに対してABAといったライバルリーグが立ち上げられており、実際にUSFLはそれを妨害しようとしていたNFLに対して訴訟を起こして勝ったりもしている。つまり新リーグを立ち上げること自体は、法律上悪いわけではないどころか、それを妨害することの方が法律違反とされてきた歴史もあるのだ。

 そうした紛争で重要な役割を果たしてきたのが「独占禁止法」であり、今回のESL騒動でも、まさにこの独禁法こそがESLの判断の「失敗」に大きな影響を与えたものと言える。

新リーグ設立は「独禁法」で守られる?

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ESLビジネス

Profile

山崎 卓也

1997年の弁護士登録後、2001年にField-R法律事務所を設立し、スポーツ、エンターテインメント業界に関する法務を主な取扱分野として活動。現在、ロンドンを本拠とし、スポーツ仲裁裁判所(CAS)仲裁人 、国際プロサッカー選手会( FIFPRO)アジア支部代表、世界選手会(World Players)理事、日本スポーツ法学会理事、スポーツビジネスアカデミー(SBA)理事、英国スポーツ法サイト『LawInSport』編集委員、フランスのサッカー法サイト『Football Legal』学術委員などを務める。主な著書に『Sports Law in Japan』(Kluwer Law International)など。