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ファン、会長、監督、選手、代理人…誰もが狂騒する舞台『カルチョメルカート劇場』へようこそ!

2021.06.07

6月4日に発売された『カルチョメルカート劇場』 は、欧州ナンバーワンの移籍専門記者ジャンルカ・ディ・マルツィオが、移籍市場――“カルチョメルカート”の裏側で会長、監督、選手、そして代理人が繰り広げる、壮絶な人間ドラマを解き明かしたイタリア全土で話題沸騰のベストセラーだ。その日本上陸を記念して、翻訳を担当した片野道郎氏による「訳者まえがき」を無料公開する。

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 カルチョメルカート、すなわち移籍マーケットはサッカーの世界において最も夢にあふれた場所のひとつだ。

 愛するチームの陣容を子細に検討し、どのポジションにどんな選手を獲得すればもっと強くなるか、目標とする順位やタイトルに手が届くかを考えるのは、あらゆるサッカーファンにとって無上の楽しみである。前年の成績がどんなに悪くとも、あるいは今進んでいるシーズンがどれほど目を覆うようなものであっても、次のシーズンに向けた補強の計画を頭に描いている間は、心がわくわくして幸せな気分になれる。ひとりのファンですらそうなのだから、実際の主役たち、すなわち補強の権限を持っているディレクター、そしてクラブの持ち主であるオーナーが、どれほどの情熱を傾け、どれだけの興奮とスリルを味わいながら移籍マーケットという舞台を「生きて」いるかは想像にかたくない。それは、マーケットにおける一番の当事者である選手、そしてその利益を代表して交渉に関わるエージェント(代理人、仲介人)も同じだろう。

 本書『カルチョメルカート劇場』は、そんな移籍マーケットの主役たちが過去40年にわたって演じてきたドラマの数々を、これでもかというほどてんこ盛りに詰め込んだ一大バラエティショー、とでも言うべき一冊である。著者のジャンルカ・ディ・マルツィオは、イタリアはもちろんヨーロッパサッカー全体の移籍マーケット情報を専門に追い、報じる移籍専門記者の先駆けであり、現在も第一人者と言うべき存在。セリエAで監督やスポーツディレクターを務めた父ジャンニの下で「カルチョメルカートを呼吸しながら」育ったという生い立ちの持ち主だ。ここから始まるのは、そんな彼だからこそ知り得た、これまでには聞いたこともないような裏話の数々だ。

自身の公式Twitterで『カルチョメルカート劇場』発売を喜ぶディ・マルツィオ氏

 五つ星ホテルや超高級リゾート、プライベートジェットや豪華クルーザーを舞台に、仕立てのいいスーツを颯爽と着こなしたディレクターやエージェントが、数十億円という大金を当たり前のように動かす――かと思えば、あまりにも軽率に重要な決断が下され、そうかと思えば5分後にはなかったことになり、握手や口約束が契約書以上の重みを持ったかと思えば、契約を交わしてもいつのまにか反故になっているという、大ざっぱでちゃらんぽらんでいんちきな駆け引きが繰り返される。『カルチョメルカート劇場』がそんな悲喜こもごもの愛すべき人間ドラマに彩られているのは、主役である彼らもまた、来シーズンのチームを頭に描くという夢の世界に生きているからなのかもしれない。心ゆくまで堪能していただきたい。


Photo: Getty Images

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カルチョメルカート劇場

Profile

片野 道郎

1962年仙台市生まれ。95年から北イタリア・アレッサンドリア在住。ジャーナリスト・翻訳家として、ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を広げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えている。主な著書に『チャンピオンズリーグ・クロニクル』、『それでも世界はサッカーとともに回り続ける』『モウリーニョの流儀』。共著に『モダンサッカーの教科書』などがある。