SPECIAL

RBライプツィヒの取る幅は最小限。ナーゲルスマンが「7レーン」で落とし込む原則

2021.03.10

現地時間3月10日、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)ラウンド16突破を懸けて、再びリバプールと相まみえるRBライプツィヒ。第1レグではイングランド王者相手に健闘しながらも、0-2で敗戦。若き戦術家ユリアン・ナーゲルスマンに、逆境を乗り越える手立てはあるのだろうか。注目の一戦の行方を占うべく、彼の原則を『フットボリスタ第83号』で読み解いたcologne_note氏に、RBライプツィヒの現状を分析してもらった。

 RBライプツィヒの監督として2シーズン目の後半戦に挑んでいるナーゲルスマン。前任者ラルフ・ラングニックの下ではプレッシングに重きを置いていたが、ボールを保持して試合を自らコントロールするチームへと変貌を遂げている。

 上図のデータを見てもわかるように、ナーゲルスマンが就任した19-20シーズンからRBライプツィヒの1試合の平均ボール保持率と平均パス本数は増加。

 一方、1試合あたりの平均シュート数(上図)を見てみると、19-20シーズンはラングニック時代の18-19シーズンと比べると1本以上シュート数が増えているが、今シーズンは1試合あたり約0.6本減っている。さらにボール保持時間1分あたりのシュート数は18-19、19-20シーズンの0.26と比較すると、0.23へわずかに悪化。ボール保持を昨シーズンほど効率的にシュートへ結びつけられていない。

ベルナー移籍で攻撃のテンポが低下

 その理由として考えられるのは、昨夏のティモ・ベルナーの移籍だろう。昨シーズン、ブンデスリーガでゴール期待値22.3に対して28ゴールを挙げた彼は、その決定力だけでなく、チャンスを作り出す過程でもチームに大きな貢献を果たしていた。

 「我われはボール保持を、体力の回復とボールを渡さないことだけでなく、ゲーゲンプレスの準備やプレーを加速させるものだと理解しなければならない」

 「テンポの変化」を求めるナーゲルスマンのチームにおいて、彼は天性のスピードで攻撃に緩急を与えられた貴重な存在。特に味方の縦パスに連動して裏に抜けるスプリントは、RBライプツィヒが得意とする形と相性が抜群だった。

 それは、後方や中盤の選手が入れた縦パスを前線の選手が「敵陣ゴール方向を向いている選手」へ落とし、他の選手が裏へと抜け出すプレー。最初の当てるパスが加速のスイッチとなり、その落としを受ける“3人目”の選手と裏へ抜ける“4人目”の選手が連動する。2人目はマークできても、上下に動くボールを追いながら3人目、さらには4人目を捕まえるのは難しく、相手の守備を混乱させて一気にゴールへ向かうことができる。

CLグループステージ第1節、バシャクシェヒル戦での先制点(16分)

 今シーズンのCLグループステージ第1節、バシャクシェヒル戦(○2-0)の先制点が最も良い例だ。右CBビリ・オルバンが縦パスを入れるとCFユスフ・ポウルセンがポストプレー。落としから守備的MFケビン・カンプルがダイレクトで浮き球を出すと、左WBアンヘリーノがDFラインの裏へ抜け出してゴールを決めた。

 昨シーズンは同様の形からベルナーが抜け出してチャンスとゴールを量産していたが、今シーズンは絶妙なタイミングで攻撃参加するアンヘリーノが4人目役を主に担っている。しかし彼はあくまでSBやWBの選手。プレーエリアも左サイドに限定され、90分通して相手の脅威になることは難しい。

 ベルナーの穴埋めを期待されていた昨夏加入のアレクサンダー・セルロートやファン・ヒチャンは、ナーゲルスマン自身も認めているとおり、前半戦ではチームへの適応に苦戦。特に後者は開幕直後こそ持ち前の俊敏性を生かして、ブンデスリーガでも通用するポテンシャルを見せかけていたが、ケガや陽性反応もあって本領を発揮できていない。

 9月に膝の手術を受けて長期離脱中のコンラート・ライマー不在の影響も計り知れない。昨シーズンは主に守備的MFとして起用されたライマーは、中盤の3列目から果敢な飛び出しで攻撃にダイナミズムを与えていた。今シーズンは彼の代役として、本来なら2列目から追撃するはずのマルセル・ザビツァーが1列下がってプレーすることが多く、裏へのランニングが減ってしまった。代わりに前線でプレーしているダニ・オルモ、クリストファー・エンクンク、エミル・フォシュベリは足下でボールを受けた時に真価を発揮できるような選手たち。4人目の動きは得意としていない。

 実際に、昨シーズンはリーグ戦での全81ゴールのうちの約10%にあたる8ゴールが自陣でボールを奪ってからのカウンターから決まっているが、今シーズンは46ゴールのうちブンデスリーガ第10節バイエルン戦(△3-3)の1点目のみ。ナーゲルスマンが保とうとしていた「レッドブルのDNA」は、攻撃において少し色褪せてしまっている。

格上相手にも猛威を振るう「斜めのパス」

……

残り:4,433文字/全文:6,619文字
この記事は会員のみお読みいただけます

会員登録はこちら

プレミア会員 3つの特典

雑誌最新号が届く

会員限定記事が読める

会員限定動画が観られる

「footballista」最新号

フットボリスタ 2021年9月号 Issue086

[特集]「カルチョ新時代のはじまり」EURO2020優勝記念!復活のアズーリ、変革期のイタリアサッカーを大特集! ■イタリア代表、モダンサッカー改革の全貌 ■セリエA、監督大移動の21-22シーズン展望

10日間無料キャンペーン実施中

TAG

RBライプツィヒユリアン・ナーゲルスマン戦術

Profile

cologne_note

ドイツ在住。日本の大学を卒業後に渡独。ケルン体育大学でスポーツ科学を学び、大学院ではゲーム分析を専攻。ケルン市内のクラブでこれまでU-10 からU-14 の年代を指導者として担当。ドイツサッカー連盟指導者B 級ライセンス保有。Twitter アカウント:@cologne_note