REGULAR

“日本人最大級”の不遇も「これからの時間で活かせる」。藤本寛也がバルセロナ戦後に語ったバーミンガム2年目の決意

2026.08.08

Good Times Bad Times 〜フットボール春秋〜 #31

プレミアリーグから下部の下部まで、老いも若きも、人間も犬もひっくるめて。フットボールが身近な「母国」イングランドらしい風景を、在住も25年を超えた西ロンドンから山中忍が綴る。

footballista誌から続くWEB月刊連載の第31回(通算265回)は、我慢のイングランド挑戦1年目を終えて気分一新、プレシーズンで「チーム内ベスト」の活躍を見せるバーミンガムの日本人チャンスメイカーを、731日のバルセロナ戦で取材した。

昨季はリーグ戦45分…今夏は全5試合で計4時間以上プレー!

 「プレシーズンのチーム内ベストプレーヤー」――微妙な褒め言葉ではある。シーズン本番は、9カ月間の長丁場。仕上がりの早さは歓迎できるが、その状態を維持してくれないことには意味がない。

 プレシーズン中の選手の調子に「偽物」という言葉を使ったのは、11年前、チェルシーで2度目の監督時代を過ごしていたジョゼ・モウリーニョ(現レアル・マドリー)だった。調整を目的とした親善試合での出来・不出来に、本格的な重要性はないという意味の表現だ。続くマンチェスター・ユナイテッドで抱えたアンドレアス・ペレイラ(現パルメイラス/ブラジル1部)などは、ファンの間で「プレシーズン限定の(アンドレア・)ピルロ」と呼ばれた。その別名には、真剣勝負が始まれば、中盤深部での影響力がイタリア人の名手に遠く及ばないという皮肉が込められていた。

 とはいえ、これがバーミンガム・シティ(2部)の藤本寛也に関する一言となると、純粋な評価として前向きに理解したくなる。27歳のMFにとって、移籍2年目の2026-27シーズンは、あらためてプレミアリーグ昇格に挑むチームでの存在意義を懸けたシーズン。昨季は、イングランドでプレーする2桁台の日本人選手の中で最大級と言える、「不遇」に耐えなければならなかったのだ。

 その藤本が、今夏のプレシーズンは、中盤レギュラーの岩田智輝と同じ全5試合での計4時間以上を、トップ下としてピッチで過ごした。「ベストプレーヤー」評は、10代半ばと思しき少年ファンによるもの。7月31日、バルセロナとのホームゲームに向かう途中の乗換駅で、バーミンガムファンの親子3人連れと立ち話をした際の藤本評だった。

 少年が身にまとうユニフォームは、背中に「STANSFIELD 28」とあった。3年前、20歳でフルアムからレンタルで加入した当時からの人気FW、ジェイ・スタンスフィールドに憧れる少年が、藤本の存在を認識しているというだけでも、日本人としては嬉しいことだ。過去1年で忘れられてしまっていても不思議ではなかったのだから。

 昨季は、古橋亨梧(今夏にLAギャラクシー移籍)も苦しんだ。鳴り物入りでの加入に得点というインパクトが伴わず、CFとしての序列が下がっていった。その点、藤本の場合は出場機会そのものに恵まれなかった。

 昨季チャンピオンシップでの出場時間は、出場した5試合を足しても45分のみ。前所属先のジル・ビセンテ(ポルトガル1部)で負った、膝のケガを抱えての移籍ではあったものの、そこまでリーグ戦での出場が制限されるような類ではなかった。やはりサブとして出場したFAカップ戦2試合で及第点のプレーを見せても、リーグ戦での出場機会増には繋がらず。リーグカップ戦では、1軍戦で唯一の先発機会が回ってきたが、後半のピッチには立つことなく、チームも敗退となった。

ピッチの外で考えた「自分には何ができて、何が必要だったか」

……

残り:2,468文字/全文:3,945文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

Profile

山中 忍

1966年生まれ。青山学院大学卒。90年代からの西ロンドンが人生で最も長い定住の地。地元クラブのチェルシーをはじめ、イングランドのサッカー界を舞台に執筆・翻訳・通訳に勤しむ。著書に『勝ち続ける男 モウリーニョ』、訳書に『夢と失望のスリー・ライオンズ』『ペップ・シティ』『バルサ・コンプレックス』など。英国「スポーツ記者協会」及び「フットボールライター協会」会員。

RANKING