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苦悩を糧にした「融合と爆発」のシーズンへのチャレンジ。柏レイソル・小見洋太が漂わせるブレイクの予感

2026.02.16

太陽黄焔章 第33回

ブレイクの予感が漂っている、と言っていいだろう。明治安田J1百年構想リーグ開幕戦。ちばぎんカップに続き、柏レイソルの左ウイングバックとしてスタメン起用された小見洋太は、川崎フロンターレ相手に一定以上のパフォーマンスを披露。新ポジションへのトライにも、ポジティブに向き合っているようだ。昨季途中で加入したタイミングではなかなかフィットしきれなかったが、今季に入って背番号15に訪れつつある変化を、鈴木潤が解き明かす。

シーズン途中の移籍でぬぐえなかった“よそ者感”

 2025年6月。特別移籍期間中にアルビレックス新潟から柏レイソルへとやってきた小見洋太に待ち受けていたのは苦悩の日々だった。

 柏での公式戦出場は9試合。無得点に終わり、アシストもYBCルヴァンカップ準決勝第2戦横浜F・マリノス戦の1つのみだった。

 「難しかったです。結局、最後まで“よそ者感”というのが自分の中にはあって、サッカーにおいて馴染みきれなかったなというのを感じていました」

 今年1月のキャンプ中に小見が発した言葉には、彼の半年間の苦悩が凝縮されていた。

小見洋太(写真1枚目)

 シーズン途中の移籍は、どの選手にとっても容易ではない。しかも柏は、リカルド・ロドリゲス監督の手によって高度な戦術が構築された、Jリーグ屈指のクオリティーを持つチームである。新潟で、すでにボール保持のスタイルには慣れ親しんでいたとはいえ、難易度の高い戦術とその緻密さについて、小見は「衝撃的でした」と本音を吐露した。

 「もう今までないほどに細かい戦術が形としてあったので、そこは僕の知らないサッカーで衝撃的でしたね。一つひとつのポジショニングや、動き出した後のポジショニングにチームの方向性があるので、去年来たときは頭の中で整理ができずにすごく難しく感じました」

「戦術、戦術になりすぎて、良さが消えていってしまったのかなと思います」

 この緻密な戦術を持つチームにフィットするため、小見は「まず戦術を理解しなければ」という焦りにも似た感情に縛られた。しかしその意識が裏目に出てしまう。

 「戦術、戦術になりすぎて、自分の特長を出しきれず、良さが消えていってしまったのかなと思います。レイソルの戦術は、一箇所の綻びが出てしまうと、それによってチームのすべてが崩れていってしまう。そこにうまく馴染むのは、ちょっと自分にはハードルが高かったですね」

 同じ6月の特別移籍期間で加わった瀬川祐輔、馬場晴也は加入直後からコンスタントに出場機会を得ており、7月にモンテディオ山形から加入の小西雄大も早々にフィットした。そして8月に徳島ヴォルティスから完全移籍加入の永井堅梧も、合流直後から常時20名のメンバー入りを果たしている。自分を除いた途中加入の新戦力が皆、一定以上の存在感を示していたことも小見の焦りに拍車をかけたのだろう。

 自分の武器であるはずのドリブルという個の力が、戦術を過度に意識することで消え失せていく。それが昨季、小見が抱えていた最大の葛藤だった。

精神的な余裕がもたらしたプレーのキレ

 転機となったのは、今年1月のキャンプである。

……

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Profile

鈴木 潤

2002年のフリーライター転身後、03年から柏レイソルと国内育成年代の取材を開始。サッカー専門誌を中心に寄稿する傍ら、現在は柏レイソルのオフィシャル刊行物の執筆も手がける。14年には自身の責任編集によるウェブマガジン『柏フットボールジャーナル』を立ち上げ、日々の取材で得た情報を発信中。酒井宏樹選手の著書『リセットする力』(KADOKAWA)編集協力。

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