
Allez!ランスのライオン軍団 #12
大好評のスタッド・ランス取材レポートが連載化! 伊東純也、中村敬斗、関根大輝の奮闘ぶり、欧州参戦を目指す若き獅子たちの最新動向を、現地フランスから小川由紀子が裏話も満載でお届けする。
第12回は、ついにトンネルの出口と「最適なフォーミュラ」を見つけ出した4月11日の第29節、20日の第30節をランス3兄弟の談話とともに振り返りたい。リーグ1は残り4試合、迎える第31節は27日、敵地でモンペリエ戦だ(日本時間24時15分キックオフ)。
「2桁いきたいなってずっと思ってて…」中村敬斗が日本人新記録!
第29節のRCランス戦(○0-2)、そして第30節のトゥールーズ戦(○1-0)に2連勝したスタッド・ランスは、一気に勝ち点6を積み上げて入れ替えプレーオフ圏内から脱出。13位までジャンプアップした。
第21節のリヨン戦から始まった、サンバ・ディアワラ監督による新体制になって初めての連勝。それだけでなく、両戦とも相手を0点に抑えての完封勝利と、目に見えてパフォーマンスが向上している。
RCランス戦は、中村敬斗が2得点を挙げる大活躍だった。
まずは33分、セルヒオ・アキエメのクロスを右足ワンタッチでゴールに流し込んで先制点をゲット。その後1点リードのまま試合は続いたが、RCランスの激しい攻め込みに、スタッド・ランスはひたすら耐えて守る展開に。どうかその集中力が最後の笛が鳴るまで持ってくれ、と祈りたくなったフルタイム間際の88分、中央を突破した途中出場のノア・サンギの動き出しを見て左サイドを爆走した中村が、ゴール右隅の空いたスペースを突く見事なシュートで勝負を決め切る追加点をマークした。
シュートを蹴った瞬間、右足がつった様子で顔をしかめた中村だったが、その後すぐに交代してベンチで試合終了のホイッスルを聞くと、充実感あふれる笑みが満面にこぼれた。
「めっちゃ嬉しかったです!(1試合2得点は)初めてだったし、リーグ1で。(右足は)走りながらつってて……」
すでに走っている最中に足はつっていたんだそうだ。それでも猛ダッシュでボールに食らいついて、つったままの足で蹴ってのあの精度の高いシュート。あっぱれである。
ねぎらいの気持ちも込めて、ディアワラ監督はすぐに中村を下げたが、
「すぐに治るんでプレーしようと思えばできたんですけど、無理せずにって感じです!」
崖っぷちに追い込まれた状態でプレーし続ける中で、精神的、肉体的なタフさも、ひとまわり大きくなった感じだ。
これまで「今季の目標を?」と聞かれても、「変に意識したくないから」と具体的な数字は口にしてこなかった中村。それでも「2桁」は思い描いていた領域だったはず。
「いやあ、(その思いは)ありましたね。 2桁いきたいなってずっと思ってて、それを達成して11点っていう……。リーグ1で日本人の記録も作れたし」
昨シーズン、モナコの南野拓実がマークした9得点がこれまでのリーグ1日本人選手最多得点。この日の2発で11得点に到達し、歴代記録を更新した。
ちなみにその南野は、この試合の翌日に行われた2位を争うマルセイユとのビッグマッチ(○3-0)で先制点を決めてみせた。
当日の朝、スタッド・ランス戦のハイライトを見て、
「敬斗、しっかり良いシュートしてるな……」
と刺激を受けた、とマルセイユ戦の後に話していた。
「敬斗が調子いいのは自分にとってもすごくいい刺激になるし、フランスの日本人選手たちはけっこうみんな仲がいいんで、お互いに連絡を取り合ったりしています」
日本人同士が異国のリーグでともに刺激し合っているというのは、なんともポジティブな環境だ。
このRCランス戦では、GKイェバン・ディウフもなんと14セーブという獅子奮迅の大活躍で、マン・オブ・ザ・マッチに選ばれた。いかにスタッド・ランスが猛攻を浴びていたかという感じだが、頼れる守護神の存在は本当に貴重だ……。
Yehvann Diouf with 14 saves in one match
pic.twitter.com/RobFhRJtKF
— Ligue 1 English (@Ligue1_ENG) April 14, 2025
伊東はデュエル&ドリブル、関根はパス、中村はインテンシティ・ランで連勝牽引
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Profile
小川 由紀子
ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。