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スタメン平均21.3歳のチェルシー兄弟クラブがフランスで躍進!欧州そして「新次元」へ、今“クリック”の時

2025.04.20

おいしいフランスフット #15

1992年に渡欧し、パリを拠点にして25年余り。現地で取材を続けてきた小川由紀子が、多民族・多文化が融合するフランスらしい、その味わい豊かなサッカーの風景を綴る。

footballista誌から続くWEB月刊連載の第15回(通算173回)は、チェルシーを保有するコンソーシアムによる買収から2シーズン目で、早くも欧州カップ戦争いに参戦し、変貌の予感と異質の存在感を漂わせる注目クラブ、ストラスブールについて。Transfermarkt』(420日時点)によれば、今季の在籍選手平均年齢は22.7歳、先発イレブンだと21.3歳! もちろんリーグ1最年少だ。

新オーナー効果?12月から1151CL視野に

 パリ・サンジェルマンが6試合を残して早々に優勝を決定。タイトルレースが終わってしまった(“レース”はもとよりなかったが……)リーグ1において、このシーズン終盤戦の注目トピックスとなっているのが、ストラスブールだ。

 ストラスブールといえば、4月6日に行われたスタッド・ランスとの第28節での、伊東純也を巻き込んだ誤審騒動が記憶に新しい。この試合に0-1で勝利したことで、彼らは一時、来季CLに予選から出場できる4位にまで浮上した。

 次のニース戦では終了間際に痛恨の同点弾を許して6位に後退したのだが(2-2)、19日の第30節も敵地で強豪モナコと引き分けて(0-0)、現在10試合無敗を継続(7勝3分)。昨年12月からここまで17試合でわずか1敗のみと尻上がりに調子を上げ、2019-20シーズン(2018-19のリーグカップ優勝でEL予選に参戦)以来、6年ぶりの欧州カップ戦出場が現実味を帯びている。

 彼らの躍進が話題となっている理由の一つは、昨季から新オーナーが参入したこと。そこで新たな体制がどう効果を上げるのかが、注目されているのだ。

 というのも、彼らの新オーナーとなったのは、チェルシーのオーナーグループである『BlueCo』。

 サッカー界で近年拡大している世界規模のグループ化事業において、フランスでは例えば、リーグ2(2部)のトロワがシティ・フットボール・グループ、来季の1部昇格を睨むパリFCがレッドブル・グループ、リーグ1のニースはマンチェスター・ユナイテッドと同じINEOSの傘下と、すでにいくつかのクラブがグループ事業に属している。

 そしてストラスブールも、2023年6月に『BlueCo』の傘下に入ったのだが、2020年の参入から現在も2部にとどまっているトロワや、まだ日が浅いパリFCなどに比べて、ストラスブールではより顕著に、新体制の影響が表れている。

新経営陣の代表格トッド・ベーリー。51歳のアメリカ人実業家はロサンゼルス・ドジャースの共同オーナーとしても知られている

一時は5部転落も…6年で1部に帰ってきた独仏国境の名門

 ここで軽くストラスブールというクラブの足跡を振り返っておくと……

 別名称だったクラブを母体に『ラシン・クラブ・ドゥ・ストラスブール』としてフランスリーグに初参戦したのは1919年。地元の人たちは「ラシン」と呼んでいる。

 過去には元日本代表監督のイビチャ・オシム氏やJリーグでも活躍したイワン・ハシェック氏が在籍し、ご当地ストラスブール出身のアーセン・ベンゲル氏もこのクラブでプロデビューしたのち、ユース部門のコーチとなって名将のキャリアをスタートさせた。

 最近では、GK川島永嗣(現ジュビロ磐田)やMF鈴木唯人(現ブレンビーIF)が所属していたことで、日本のサッカーファンにも馴染みがあるかもしれない。

ファンのサインに応じるストラスブール時代の川島。現在42歳のGKは2018年より5季在籍し、2020-21にはシーズン途中から正GKを務めた(Photo: Yukiko Ogawa)
鈴木は21歳だった2023年1月に清水エスパルスから期限付き移籍で加入し、半年間で3試合1得点(Photo: Yukiko Ogawa)

 トップリーグの常連で、1978-79シーズンには優勝。フランスカップを3回、リーグカップ(2019-20を最後に廃止)を4回制覇し、CLの前身、ヨーロピアンカップで準々決勝に進出(1979-80)したこともある名門だったのだが、2007-08シーズンのリーグ1を19位(当時20チーム制)で終えてリーグ2に転落したのを機に運営状況が悪化。会長もコロコロと代わって深刻な財政難に陥ると、2011-12シーズンにはペナルティとしてアマチュアの5部リーグに降格となり、一時は表舞台から消えていた。

 そんな中、名門復活に立ち上がったのが、クラブOBで現在も会長を務める元フランス代表MFマーク・ケラー氏だ。……

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Profile

小川 由紀子

ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。

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