ベガルタ仙台のバイオリズムを整える存在。当たり前を継続し、“誰も心配にさせない”菅田真啓の凄み

ベガルタ・ピッチサイドリポート第23回
ベガルタ仙台在籍も3シーズン目。最終ラインにそびえ立つ頼れるアニキ。チームに“当たり前”をもたらしてくれる菅田真啓の存在感は、いつだって絶大だ。とりわけ今季は盟友の小出悠太がヴァンフォーレ甲府へと移籍し、自身も副キャプテンに就任。今まで以上に強い責任感を抱いて向かう新シーズンへの想いへ、村林いづみが迫る。
誰もがついつい頼ってしまう?“そこにいて当たり前の菅田真啓”
先月Jリーグが開幕し、新しいシーズンが進んでいる。オフには寂しい別れも経験したが、新たな仲間がベガルタゴールドのユニフォームを着て躍動している。一つのゴールに胸を熱くし、結果に一喜一憂する“最高の週末”が帰ってきたと、春と冬を行ったり来たりする3月の仙台で感じている。今年のチームは今年だけ。どんな選手もここにいてくれることは決して当たり前ではない。
そんな当たり前のことなど何一つない世界で、「ベガルタ仙台にとっての当たり前」を作り続ける選手がいる。昨季はチームで唯一全試合に先発出場し、守備のリーダーとして、代えの利かない選手として、プレーオフ決勝まで戦い続けた菅田真啓選手だ。空中戦で圧倒的な強さを誇り、ゴール前では絶対に決めさせない迫力を見せる。「DFラインにはマサくん(菅田の愛称)がいてくれる」と仲間も全幅の信頼を寄せる。その頼もしさの一方で、取材中にチームメートにいじられ、くしゃくしゃっと柔らかい笑顔を見せたり、話してみると少々天然っぽいところもあったり……。そんな彼について、昨シーズン終盤に森山佳郎監督はこんな風に話してくれた。
「シーズンが進んでいくと、村さん(村岡誠フィジカルコーチ)やトレーナーから、選手について数値上で勤続疲労があるという報告があがった時もありました。しかし菅田だけは、なぜかずっと試合に出ているのにあまり気にならない感じ。だから僕が『マサは今日もフルメニューでやらせていいよね』って話したら、村さんが『ちょっと一回休ませてください』って。『あ、そうだっけ?』みたいな……。菅田はやっているのが当たり前というか、疲れも見せず、どうってことない顔をする。本当に頼れるたくましい戦える男です」
ここまで一気に話したゴリさんだが、話しながら再確認した菅田選手の存在の大きさに、その後も言葉が止まらなくなった。「とにかくマサは、いてくれないと困る。いてくれないと困るんだけど、みんな、マサがいるのが当たり前と思ってしまっている。やっぱり“心配させないっていう凄み”っていうかね。普通、どの選手も試合に出続けているとパフォーマンスが落ちてしまうんだけど、菅田の場合は変わらず。ずっとそれが当たり前のようにやっていて、僕らも頼りきっているという状態。それが彼のたくましさ、素晴らしさだな、と感じています」。

今シーズンも仙台のDFラインは彼を中心に回っていくと予想されるし、それが開幕から安定した守備組織の形成に大きく影響している。とにかくタフ、頼れる男・菅田真啓に新シーズンに感じていることを聞いた。
J1昇格プレーオフで敗れた悔しさ。目に焼き付けた光景を忘れることはない
――新しいシーズンが始まりました。今年はCBの“相方”が変わりました。開幕から続く井上詩音選手とのコンビネーションはいかがですか?
「試合でもいつも良い声をかけながらやっていたので、問題なくやれたと思います。CBはキャンプでいろいろな組み合わせでやっていましたが、最後の方は詩音と固めてやっていたので、そこはうまくできた部分もあります。でもまだまだ改善しないといけないところもあるので、そこはしっかり練習から擦り合わせていけばいいかなと思います」
――開幕戦の最後には、サガン鳥栖の猛攻に対して、後ろを5枚にして守りきっていました。そういう形も今季は取り入れていきそうですね。
「そうですね。最後、相手がパワープレーできたら、マテ(マテウス・モラエス選手)も入れて、後ろもしっかり固めることができる。無失点で試合を終えるという形が見えて良かったです。今後こういう難しい局面も出てくるだろうし、後ろが失点0で終われたということはプラスに捉えています」

――菅田選手は今年で仙台3年目。どんな思いを持ってスタートしたシーズンでしょうか?
「何と言っても去年の悔しさは忘れない。同じ目に遭いたくないので、今年こそは自動昇格を目指してやらないといけないと自分の中で決めています。もっともっとやらないといけないし、チームをしっかり後ろから引っ張っていければいいですね」
――J1昇格プレーオフ決勝の岡山で、相手の喜ぶ姿を、目をそらさずに見続けました。あの悔しさはどのように心に刻んでいますか?
「あの光景は忘れられないです。自分の中で、それを『見ろ』と言ってくれたやっさん(遠藤康さん)の言葉が響いています。あんな思いはもう味わいたくないと常に思っています。だからこそ、全員で覚悟を持ってやることが大事ですね」

新しい仲間たちと進む2025年。攻撃でも存在感を示すCB
――今季は11人の新加入選手を迎えました。フレッシュな選手も多くて、年齢的にも若返った印象がありますが、どんなチームになっていきそうですか?……



Profile
村林 いづみ
フリーアナウンサー、ライター。2007年よりスカパー!やDAZNでベガルタ仙台を中心に試合中継のピッチリポーターを務める。ベガルタ仙台の節目にはだいたいピッチサイドで涙ぐみ、祝杯と勝利のヒーローインタビューを何よりも楽しみに生きる。かつてスカパー!で好評を博した「ベガッ太さんとの夫婦漫才」をどこかで復活させたいと画策している。