「死のパターン」をめぐる攻防と「待ち」の効果。CLマンチェスター・シティ対レアル・マドリー第1レグ分析
サッカーを笑え #35
CL決勝トーナメントプレーオフ第1レグ、マンチェスター・シティ対レアル・マドリーは、2-3でレアル・マドリーが勝利した。2-1とリードされてからの同点(86分)、逆転(92分)ゴールがいずれもシティのミスからだったことで単独のプレーが勝敗を分けたイメージが強いが、トータルの内容でもレアル・マドリーが上回っていた。
前から行けばやられる、なぜなら…
レアル・マドリーが敵地エティハド・スタジアムで放ったシュート本数20というのは最多記録、グアルディオラのシティ側から見ればワースト記録だそうだ。CL対決で昨季は8本、一昨季は7本、その前は11本だった。ボール支配率も昨季は64%対36%、一昨季は59%対41%、その前は59%対41%だったが、今回は54%対46%と最も拮抗していた。
シティがプレミアで5位、レアル・マドリーがリーガで首位とあって、グアルディオラのシティとの対戦でレアル・マドリー有利は初めて、と言われていたが、その予想通りの結果となったわけだ。
終わってみれば、やはり今回のシティは今のレアル・マドリーにとって非常に都合の良いチームだった。「待っていれば勝手にこけてくれるチーム」だったからだ。
ポゼッションチーム、バルセロナに対して前から行ったレアル・マドリーは、リーガのクラシコで0-4、スペイン・スーパーカップのクラシコで2-5と大敗している。守備時の2トップ、ビニシウスとムバッペに前から行け、というのは、両人の特徴、戦術的規律、集中力からしても無理で、後ろのメンバーにも連動して前からプレスをはめていけ、というのも無理なのだ。
なぜなら、単純な話、ビニシウスとムバッペは2人で、相手の3人(CB2人ルーベン・ディアスとアケ+セントラルMF1人ストーンズ)を抑える動きができないから。
こういう形(●=ボール)
R.ディアス● アケ
ビニシウス
ムバッペ
ストーンズ
またはこういう形
R.ディアス アケ●
ムバッペ
ビニシウス
ストーンズ
にしてくれればいいのだが、すぐにこうなってしまう。
R.ディアス● アケ
ビニシウス ムバッペ
ストーンズ
で、GKエデルソンにバックパスをされたり、両SBアカンジ、グバルディオルを経由されたりして、こういう形になる。
R.ディアス アケ
ビニシウス ムバッペ
ストーンズ●
これはクラシコでも見た「レアル・マドリーの死のパターン」で、シティにとっては全方向の万全の攻撃態勢となる。
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Profile
木村 浩嗣
編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。
