REGULAR

「死のパターン」をめぐる攻防と「待ち」の効果。CLマンチェスター・シティ対レアル・マドリー第1レグ分析

2025.02.14

サッカーを笑え #35

CL決勝トーナメントプレーオフ第1レグ、マンチェスター・シティ対レアル・マドリーは、2-3でレアル・マドリーが勝利した。2-1とリードされてからの同点(86分)、逆転(92分)ゴールがいずれもシティのミスからだったことで単独のプレーが勝敗を分けたイメージが強いが、トータルの内容でもレアル・マドリーが上回っていた。

前から行けばやられる、なぜなら…

 レアル・マドリーが敵地エティハド・スタジアムで放ったシュート本数20というのは最多記録、グアルディオラのシティ側から見ればワースト記録だそうだ。CL対決で昨季は8本、一昨季は7本、その前は11本だった。ボール支配率も昨季は64%対36%、一昨季は59%対41%、その前は59%対41%だったが、今回は54%対46%と最も拮抗していた。

 シティがプレミアで5位、レアル・マドリーがリーガで首位とあって、グアルディオラのシティとの対戦でレアル・マドリー有利は初めて、と言われていたが、その予想通りの結果となったわけだ。

第1レグのハイライト動画。第2レグは2月19日、サンティアゴ・ベルナベウで行われる。21-22と23-24の覇者レアル・マドリーと、22-23の覇者マンチェスター・シティの激突は4季連続で、21-22の準決勝は2戦合計6-5でマドリー、22-23の準決勝は5-1でシティ、23-24の準々決勝は4-4/PK戦3-4でマドリーが勝利した

 終わってみれば、やはり今回のシティは今のレアル・マドリーにとって非常に都合の良いチームだった。「待っていれば勝手にこけてくれるチーム」だったからだ。

 ポゼッションチーム、バルセロナに対して前から行ったレアル・マドリーは、リーガのクラシコで0-4スペイン・スーパーカップのクラシコで2-5と大敗している。守備時の2トップ、ビニシウスとムバッペに前から行け、というのは、両人の特徴、戦術的規律、集中力からしても無理で、後ろのメンバーにも連動して前からプレスをはめていけ、というのも無理なのだ。

 なぜなら、単純な話、ビニシウスとムバッペは2人で、相手の3人(CB2人ルーベン・ディアスとアケ+セントラルMF1人ストーンズ)を抑える動きができないから。

 こういう形(●=ボール)

  R.ディアス●     アケ
     ビニシウス
            ムバッペ

       ストーンズ

またはこういう形

  R.ディアス      アケ●
            ムバッペ
     ビニシウス

       ストーンズ

にしてくれればいいのだが、すぐにこうなってしまう。

  R.ディアス●     アケ
  ビニシウス     ムバッペ

       ストーンズ

 で、GKエデルソンにバックパスをされたり、両SBアカンジ、グバルディオルを経由されたりして、こういう形になる。

  R.ディアス      アケ
  ビニシウス     ムバッペ

       ストーンズ●

 これはクラシコでも見た「レアル・マドリーの死のパターン」で、シティにとっては全方向の万全の攻撃態勢となる。

……

残り:2,783文字/全文:4,070文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

RANKING