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対策されたバルセロナ。リーガではどんな弱小も繰り出す「ボール出し阻止」「ハイライン攻略」法とは?

2024.12.13

サッカーを笑え #31

ハンジ・フリック新体制でリーガ開幕12戦11勝と飛び出したバルセロナが、11月に入って失速。その後5試合で勝ち点5にとどまり、首位陥落の危機に瀕している(通算12勝2分3敗・50得点19失点)。何が起きたのか?

ドルトムントの非対策

 バルセロナの勢いが止まった、国内では。

 ここ5試合1勝2分2敗でバーチャルには首位を守っているものの、1試合少ない2位レアル・マドリーとは2ポイント差、アトレティコ・マドリーとは3ポイント差。一方、国外では止まっていない。昨夜(現地12月11日)もドルトムントに勝って5連勝だ。

 リーガでは対策されているのに、CLでは対策されていない。これは結構、衝撃だった。ドルトムントのシャヒン監督の手腕を疑うほどに。

 バルセロナ対策とは何かを紹介する前に、ドルトムントの“非対策”を記しておくことで序に代えたい。

 まず、ボール出しを阻止する意識が低過ぎた。

 マンツーマンで形だけははめに行っていたが、少し左右に振られたり一度ボールを出されると、もうマンツーマンを忘れてしまう。両SBのマーク担当のデュランビルとギッテンスのことだ。アタッカーで守備が苦手なのだろうけど、マンツーマンはやるかやらないか。甘いマンツーマンならやらない方がいい。こういう甘い守備のアタッカーは、リーガではバルセロナ戦で先発から外されるだろう。

 次に、ライン間のダニ・オルモをフリーにするな。

 攻撃時[4-3-3]のバルセロナのMFは3人、守備時[4-4-2]のドルトムントは2人。システム図通りにMFが足りなくなるのなら、マンツーマンなどやるべきではない。ドルトムント側から見て1列目が4対4の数的同数、2列目が2対3の数的不利、3列目が4対3の数的有利。2列目でボールを持ったオルモに前を向かれたら、3列目の数的有利なんて何の役にも立たない。3列目から誰かが剥がれてオルモをマークすべきだった。ボールサイドに寄せて逆サイドの誰かをフリーにしてオルモのマーク担当にしようとしたのだろうが、まったく機能していなかった。

 最後に、裏抜けが個人技任せだった。

 ドルトムントのオフサイドが6つに収まったのは、ハイライン対策がなされていたからではなく、たまたま。バルセロナのハイラインは単に放り込むだけだとオフサイドになるか、カットされるかだが、これを破るための工夫はもっぱらCFの頭を狙うとかドリブルとかスルーパスとかの単純なプレーに頼っていた。まあこれはドルトムントに優れた個がいるからなのだろう。リーガであれば、後述のような“集団技”を繰り出してくるところだ。

バルセロナが2-3で競り勝ったCLリーグフェーズ第6節(全8節)のハイライト動画。第2節からの連勝で勝ち点15(5勝1敗・21得点7失点)とし、6戦全勝のリバプールに次ぐ36チーム中2位に浮上した

ハイライン&ハイプレスにはハイライン&ハイプレスで

 では、ここからはリーガ勢のバルセロナ対策を詳細に見ていく。勝利したソシエダ(1-0)とラス・パルマス(1-2)、引き分けたセルタ(2-2)とベティス(2-2)はこうやってフリックのチームを止めた。

 最も重要なのは、ボール出しをさせないことだ。ボール出しをされると、自陣に下げられて波状攻撃を受けるし、自陣深くからでは裏を突く有効な攻撃もできない。

 ボール出し阻止の方法はマンツーマンしかない。バルセロナの最終ライン4人に対して4人でマークし、2列目と3列目のそれぞれ3人に対しても3人ずつでマークする。一発で前を向いたり、抜いたりできるテクニック兼スピードがあるヤマル、ラフィーニャ、オルモを1対1にするのはリスクが大きいが、このリスクを負うことが最終的にはもっと巨大なリスク=自陣で波状攻撃を受ける、を避けることになるという結論に、8月、9月、10月と散々やられた末にやっと到達することができた。……

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Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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