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重版記念!『ナーゲルスマン流52の原則』本文特別公開「原則4:シュタイル・クラッチュで奇襲する」

2022.09.30

史上最年少28歳でのブンデスリーガ監督デビューから6年、当代屈指の名将の一人に数えられるところまで上り詰めた指揮官ユリアン・ナーゲルスマンの「“6番”の場所で横パスしてはいけない 」「ドリブル後のパスは、ドリブルで移動した距離より長くする」といったピッチ内でのプレー原則はもちろん、組織マネジメントの方法論や価値観に至るまで彼が実践している52の“原則”に迫った『ナーゲルスマン流52の原則』がこのたび重版! 出来を記念して、書籍内から原則の1つ『シュタイル・クラッチュで奇襲する』を紹介する。

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 ドイツ語にこんな格言がある。

 「例外のない規則はない」(Keine Regel ohne Ausnahmen)

 どんなに考えられた規則でも、必ず当てはまらない例外があるという意味だ。これはナーゲルスマンの原則についても同じである。

 「2タッチ」のプレーを推奨しながらも、ナーゲルスマンは攻撃をより予想できないものにするために、ダイレクトプレーもしっかり原則に盛り込んでいる。

 それが 「Steil-Klatsch」(シュタイル・クラッチュ)だ。直訳すると 「Steil」は 「急な」、 「Klatsch」は擬音語で 「パチン」という意味。

 ドイツサッカー界では、前線にいる選手が自分のところに来た縦パスを、後方にワンタッチで戻すポストプレーのことを 「シュタイル・クラッチュ」と呼ぶ。英語で言えば 「レイオフ」だ。

 いわゆるポストプレーなので、このワードだけ見たら特に目新しさはないように思われる。

 だが、他のプレーと同じように、ナーゲルスマンは従来の戦術を再解釈し、再構築するエキスパートだ。 「シュタイル・クラッチュ」をアレンジし、奇襲的に使えるようにしている。

 ナーゲルスマンは2016年7月の『キッカー』誌でこう語った。……

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Profile

木崎 伸也

1975年1月3日、東京都出身。 02年W杯後、オランダ・ドイツで活動し、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材した。現在は帰国し、Numberのほか、雑誌・新聞等に数多く寄稿している。

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